私はトランプ大統領はまるで皇帝のようだと書いてきましたが、ジョン・ダワー氏の著書「戦争の文化」Cultures of  War を読んで、アメリカは「帝王的大統領制」だとあるのに驚きました。(岩波書店 2021、 上、139p) ブッシュ大統領のイラク戦争などの施策を指しているのですが、これを太平洋戦争の日本天皇と較べると、ブッシュ政権のほうがはるかに独裁的で論理も手続きもいい加減だ、と断じています。

 

いまトランプ氏の強権的な姿勢がひどい。相互関税の発令では日本の自動車検査のボウリングボールの話や、コメの700%税率などでたらめな論理で攻めてきていますが、これは関税が大統領ひとりの一方的な決定で設定できるからだ、という見方があります。

カナダの51番州化、グリーンランドの購入などは相手があります。性別は男女だけだとか気にいらない判決を出した判事をクビにしたいとか、大学のユダヤ迫害? に対して助成金を停止するとか、準備制度理事会議長を辞めさせるとか、等は制度の壁があり、いかにトランプ皇帝でもすぐには実施できないことが多い。ただし関税はどんな税率であれ勝手に決めることが出来ます。それは国際的合意に反する、WTO協定違反の違法な行為です。世界に10%、鉄鋼・自動車25%、日本などに追加25%、中国には合わせて145%などという税率は、実際に施行されたのです (10時間後に90日猶予になりましたが)。宣戦布告に相当すると言えるかもしれません。

 

わが国が対米施策として多少の譲歩をすることは止むをえない面がありますが、それはまずWTO違反で提訴すること、場合によっては報復関税を掛けることも選択肢であること、日本が譲るなら日本だけでなく全世界に対する相互関税を撤廃しWTOで関税問題を協議すること、などを約束させるべきです。

またトランプの数々の妄言、意図的な誤報をキチンと訂正し謝罪させるべきです。そうでないとアメリカ国民に日本に対する誤解を植え付けてしまうことになる。これはたいへん大きな損害です。

 

トランプは世界の常識を変えようとしている、と持ち上げる識者もいるようだが、彼には信念などない。オモチャをいじるように、皇帝的な権力を振るうことに酔っているのです。恐ろしいことです。今は戦争嫌いを装っていますが、戦争の方が儲かる、ディールで優位になると思えば何を仕出かすかわかったものではありません。

むしろ大混乱に陥ってトランプをクビにすることが出来れば、その方が害が少ないかもしれません。

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