「人類の歴史を作った17の大発見~先史時代の名もなき天才たち」 コーディー・キャシディー著、梶山あゆみ訳、河出書房新社、2021年11月。
とても興味深い先史時代の大発見を楽しく丁寧に解説してくれます。
その第1号は、なんと抱っこヒモ。発明者は300万年前に生まれた、まだホモ・サピエンスではないアウストラロピテクスのある女性。チンパンジーと現生人類の中間程度のヒト亜族ですが、これによって育児・赤ちゃん保護が革命的に容易になり、大きな頭の赤ちゃんを安心して生めるということで、このすぐ後の時代に「私たちの祖先の脳は短期間で爆発的におおきくなっている。」(34p) 現生人類誕生の大恩人になるわけです。周囲の皆がそれをまねした社会的学習の能力もヒト亜族の特徴だそうです。
次は、初めて火を起こした人、ホモ・ハビリス 190万年前。
4番目は初めて衣服を身に着けた人、ホモ・サピエンス 10万7000年前。衣服は決して人類に共通する普遍文化ではないそうで、火があれば暖かい衣服は要らない。だから衣服は初めから自己主張のファッションアイテムだった、と論じます。
第8には、初めてビールをつくった人、1万5000年ほどまえの、ヨルダンに住んでいたナトゥーフ人の女性。麦の栽培からビールが作られたのではなく、逆だと言います。当時の麦類は熟すと穂から脱落するので、拾い集めるのは大変で食料としては考えられない。しかし麦の粥を作って1日くらい放置するだけでビールができるそうで、いったんそれを飲めば、味をしめてわざわざ落ち穂を拾い集めるようになっただろう。そして「帰りに種子が道に落ちることがあったのではないか」「それが何世代にもわたってくり返されるうち、村落の近くにコムギ、オオムギ、ライムギがたくさん芽を出して畑になった。」つまりビール造りがきっかけで農耕が始まった、ということになるのだそうです。
いろいろ面白く、なるほどという話ばかり。図書館では珍しくほぼ最新刊でした。もう返却期限を過ぎてしまったので、明日には返さないといけません。