一昨日だったかな?朝の報道情報番組『スーパーモーニング』を久しぶりに8:00台、ゆっくり見ていたら、先月後半、ネットのヒマニュースコーナーでよく目にしていた“中国のイケメンすぎるホームレス”の顛末。
バカだねーアレ。5年ぐらい前に話題になった“イギリスの記憶喪失ピアノマン”よりおバカ。中国が好景気で経済成長中で、観光客入り込み数も増えているんだろうし、とにかくどこへ行っても観光客ってのはムダにテンションが高いので、地元では年中そこらにころがってるような物でももの珍しがってシャッター切るのはつねにあることです。
しかしだね。撮って持って帰って身内に「こんなんあったんだよー」「おもしろーい、ボクもワタシも行って見たいなー」と盛り上がってる分にゃ何の迷惑も悪影響もありませんが、いまや何でもかんでもネットに乗っけられて、あれよあれよという間に世界中津々浦々に広まっちゃうんですな。しかも、日本人の、年齢行ってるめのおばちゃんたちだけじゃなく、世界中あらゆる国のあらゆる年代の人々が、“アジア顔のイケメン”にこんなに食いつくとは思わなかった。
この写真が広まったおかげでムダに注目集めちゃって、明らかにならなくてもいい女装趣味まで明らかになっちゃったこの人、結局本名も係累も経歴も公表されて、家出以降10年以上にわたり絶縁状態だった親兄弟や妻子とも、望んだか望まないかわからん再会を果たしたとのことですが、そのためにボサボサ髪切って髭も剃ると、普通の色黒の中国人労務者顔になっちゃったという。
スチールにおける“奇跡の一枚”のパワーまざまざという感じです。恐らくどこかで拾ってきたのであろうサイズまちまちなジップアップコート3枚重ねで、ベルト代わりに紐で縛ってズボン穿いて、咥え煙草で斜め前をニヒルに睨む問題写真には「どストライクかも♪」と楽しそうだった赤江珠緒アナが、髭剃り後のこざっぱり写真には固まってたのには笑いました。トレードマーク(?)の咥え煙草も、要するに前顎が売り出し当初のタモリさんみたいに空きっ歯なので、“風よけ”のために常時はさんでいたと思しい。どこがニヒルだよと。
ぼさっとして嵩高(かさだか)な、特にフェイスラインにかかる髪型や、髭、帽子、マフラーやスカーフなど“顔周りの付属物”は、しばしば“雰囲気イケメン”を誕生させることがあります。男性は、一部の人を除きまず化粧ということをしないし、結い上げたり下ろしたり巻いたり巻かなかったり染めたり染めなかったりという髪の小細工も、昔に比べれば選択肢が増えたとは言え女性に比べると振幅は狭いので、逆に余計に“雰囲気左右率”が高いと思う。
丸刈り角刈りだった高校生坊主が、就職進学とともに長髪になると、中身が急に賢くなったわけでもないのに大人っぽく見えることはよくあるし、思い切り極端な例を挙げさせてもらうと、木村拓哉さんや福山雅治さんが、フェイスライン・おでこまる出しの丸刈りでデビューしていたらこんにちの人気はありますまい。月河にはもはや顔と名前一致させるすら難しいけど、嵐だのKAT‐TUNだの関ジャニだのの中でも、控えめに言っても半数は「髪型がコレじゃなかったらアイドル厳しいだろうな」と思う顔がある。
今回のホームレスさんの場合、まさに“ホームレス”であるというそのこと、“正体不明”“天涯孤独そう”“不幸な過去を秘めて、そこから背を向けて生きてるに違いない”という催妄想性も、“雰囲気”醸成にあずかって力あったことでしょう。
紙媒体やTV でネット社会、ネット社会と言及される場合、ネットのメリットよりデメリット、感心しない傾向のほうにより視線が向けられることが多い気がしますが、犯罪につながる悪意や、滑稽かつ醜悪な好奇心、つつしみのないフェロモンだけではなく、“雰囲気”まで2乗3乗で増幅加速、拡散させてしまうものなんですね。
今般の騒動は、ネットで増幅された好奇心が、同じくネットで増幅された妄想幻想を、みずから引っ剥がして、“バカのカミングアウト”してしまったの巻、でした。
せめて本名や家族構成ぐらいは穏便に済ませられなかったものかしら。この辺りは人権意識の薄いあの国のお国柄か。
とりあえずどこでもかしこでもピッピピッピと携帯で写真撮るのはやめにしませんか。…ってそうなると“観光産業”ってものが成立しなくなるか。
ところで木村拓哉さんの名前引き合いに出したついでに思い出したのですが、先日から当地で、1998年の人気ドラマ『眠れる森』が日中、再放送されているんですよね。本放送中も何度かの再放送も一度も観たことがないので、第1“幕”を録画視聴してみました(真犯人はなぜか知っているんですけどね)。
キモいぞーキムタク。美人だぞー28歳中山ミポリン。まだるっこしいぞー脚本(野沢尚さん)。ここまで“思わせぶり”に徹したらいっそお見事ですな。「この男(=木村さん扮する直季)、何者で何が目的なのか、自分に何をしようとしているのか」を、中山美穂さんの実那子とともに視聴者もイライラハラハラ、小出しに覗き見て探って行ってほしいという狙いかな。
放送時25歳、アイドルとしてだけでなくすでにドラマで赫赫たる実績のある木村さんの、“悲鳴あげて逃げ出すことしかできないキモさに落ちるぎりぎり”演技に勇気を感じます。演出の見せ方も勇気がある。森の中のハンモックに向かって、花を持って走るOPからして“王子さまポジション”なのに、本編でこれだけキモくて病的だと、リアルタイム視聴者も“ひょっとして悪?サイコ?汚れ役?”と、ときどきわからなくなったのではないでしょうか。
“やってることストーカー同然で警察に訴えたっていいのに、なぜかそうせず後を尾けたり、対話しようとしてしまう”実那子の行動が「理性的とは言えないけど、わからなくもないか」と思えるすれすれのところで、木村さんの直季は成立している。当時飛ぶ鳥落とす勢いの人気者だった木村さんが演ってるから、こんだけ怖い思いさせられて警察沙汰にしない実那子のぬるさにも漠然とですが説得力が出るわけです(出るかな)。
ワイルドなんだけど、さばさばとはしていない。健康的でもないけど、陰湿でもない。紙一重の非常に薄いところでバランスをとっている、ダテにこんだけ長いこと第一線にいない木村さんの、力量のほどがわかる作品にはなっているようですが、しかしまだるっこしいなぁ、くねくねと。
そう言えばこの作品のちょうど1年後、同じ野沢尚さん脚本の『氷の世界』はレギュラー視聴していました。毎週毎週「コイツ結局、やってんのやってないの?」とジリジリしながら。ここまで持ってまわった、晦渋な展開の連続ドラマ、90年代だからどうにか成立しましたが、いまなら「面白い」「見逃せない」と思ってもらえるかどうか、微妙かもしれませんね。
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