イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

まんぷく再び ~塩対応~

2018-12-30 22:13:53 | 朝ドラマ

 『今年の漢字』私案=“時”で思い出しましたが、NHKテレビ小説『まんぷく』は先週であきらめました。溜まっていく一方の録画の始末が億劫でしょうがなくなったら、連続モノは、それこそ“潮時”です。

 結局は、ヒロイン=福ちゃんがいつまでたっても好きになれなかったことが決定打かな。

 あの、語尾が“キィーーン”となるような金属音の発声がどうにも、いろんなところを逆撫でするんです。毎朝聞く声で、しかもヒロインだから出ずっぱり。出ない日は無し。

 会話していて、当惑したり焦ったりしたら頻繁に手で髪をいじる癖も、不潔感ってほどではありませんが幼児的で頼りない。

 序盤は、女学校出たての新卒ホテルウーマンだし、物慣れない中にも一生懸命さを表現する演技だと思っていたのですが、結婚しても、二児の母になってもまだキィンキィン言っていて、しかも夫の萬平さんはじめご家族も、たちばな栄養食品スタッフも、そんな福ちゃんを“いつも前向きでポジティヴ思考でへこたれない”“いろいろできる女性”と全面是としている。なんか、息苦しいんですよ。「そうじゃないだろ、普通に危なっかしいだろこの人」と見ていて思っても、そこを突いてくれる人物がいないし、そういう前提で展開しないので、息が詰まる。

 なにやら、10年ぐらい前の“NHK朝ドラヒロインってこれこれこんなイメージだから苦手”時代に戻ったような気がします。今作はヒロインが、見た目の可愛さやういういしさよりなんたって実力派!な安藤サクラさんということで、こっちがハードル上げ過ぎたかもしれない。

 それから、もうひとりの主人公=夫の立花萬平さんも思いのほか魅力発揮が難しかった。やはり実話・実在人物ドラマ化の弊と言うべきか、実際の安藤百福さんは台湾生まれ台湾国籍の台湾人で、それゆえのいろいろな苦労もし、差別や挫折も経験しておられるのですが、日本経済新聞の『私の履歴書』でも意識的に伏せたりぼかしたりしていたところがあったくらいですから、NHKの、それも毎朝のドラマにリアルに描出するのは到底無理で、差し障りあるか、あるかもしれない要素はあらかたオミットして“天涯孤独の、浮世離れしたアイディアマン”一本やりで机上で造形したために、どこが凡人と比してすごいのか、秀逸なのかよくわからない、ただの世渡り下手で人を使えない理系オタクみたいになってしまったと思います。

 目のつけどころや着想力でアッといわせ「この人おもしろい!」と視聴者を惹きつけていくには、何度も延々投獄拘束され過ぎ。ここも、実際の百福さんに起きた事ですからドラマに入れないわけにはいかないけれども、国籍・出生という大原因を無いことにしたために、腑に落ちる感の少ない、無駄にストレスフルな話になってしまった。

 克子姉の夫で画家の忠彦さんが、出征前は専ら鳥の絵を描いていたのに、色覚を失って復員、画風が変わるとなぜか魚類、海の幸系専門になったり、戦時中憲兵から逃げ回って放浪していたかつての萬平の事業パートナー・加地谷が、更生して再会したときなぜかチンドン屋になっていたりと、シュールで「おい!」とテンション上がる展開も随所にあったのですがね。加地谷に関しては、スタッフが片岡愛之助さんのチンドンメイクを見たかったからとしか思えないんですけど。

 朝ドラでなく、三年ほど前に複数シリーズで放送された『経世済民の男』の様な仕様で、夜の深い時間の放送なら、かなりいけたかもしれません。個人的には、立花夫妻よりむしろ、「いまの世の中、いいも悪いもない。あるのは不公平だけや」と言い切った、天性の世渡りプロ=世良のスピンオフを見たいですね。

 長谷川博己さんは、次々回作の2020年大河ドラマ『麒麟がくる』明智光秀役で主演が決まっていますからそちらに期待しましょう。活躍中のアラフォー俳優さんの中では、明智光秀にいちばん似合いの人だと思うので。


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