イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

コロシテヤル

2009-04-24 17:39:44 | 夜ドラマ

いやいや、俳優業と並行して歌手・ミュージシャンとしても活動されていることは聞き知っていたけれど、ああいう曲調の楽曲を、ああいう発声・節回しで歌うタイプの歌い手さんだったとは想像しませんでした、藤木直人さん。

『夜光の階段』EDテーマ曲『Crime of love』、一瞬Kinki Kidsが誰かのカバーで歌っているのかと思いましたよ。昭和男子アイドル風。

劇中でもザ・ピーナッツの『恋のフーガ』が藤木さん扮する佐山道夫の愛唱ソングとして繰り返し使われていた(NHK朝ドラ『だんだん』でも使われていた)し、松本清張原作が湛える“(がつがつした)昭和の匂い”をどうにか盛り込もうという工夫の一環なのかもしれません。

それにしても藤木さんが歌を歌った場合、もう少し“いかにも高学歴トレンディ役者さんの余技”らしい、澄ました感じの歌唱で楽曲だとばかり思っていたので意外でしたね。♪せっつなでも いつわりでぃも くぁむぁぅわないくゎら~ 昭和50年代後半のカラオケで育った月河もちょっと歌ってみたくなる感じですCrime of love

夜の時間帯のドラマ、特に連続モノを、初回だけとりあえず録画視聴してみようかと思う動機に、やはり“原作情報”は大きいですね。『夜光の階段』は松本清張作品の中でも『黒革の手帖』の弟篇と言ってもいい作品で、単発のTVドラマとしては過去3回、いずれも再放送だったはずですが視聴した記憶があります。

最も新しいのは1995年本放送で、佐山道夫役は東山紀之さん。彼に接近し独占しようとして自滅する女性雑誌記者は黒木瞳さん、奇しくもその上司格の編集者で、佐山にまるめ込まれて男まさりから“女”になり結局湖上で消される役は、今作佐山のパトロン夫人役で出ておられる室井滋さんが演じていました。

10年遡って86年には、佐山は辰巳琢郎さんです。記者は坂口良子さん、男まさり編集者は加賀まりこさん。どちらかというと佐山より、九州での女性殺人事件から追い続けていた執念の検事役・古谷一行さんが主役の色合いだった。

さらに遡って83年。佐山は風間杜夫さん。好みの問題ですが、月河は風間さん版佐山がいちばん嵌まり役だったように思います。パトロン夫人役が岡田茉莉子さんだったことは鮮明なのですが、記者役は中野良子さんだったような気がするほか、女優陣の記憶があまりない。風間さん当時33歳、何より“地方出身で郷里を捨てて来た男の、陽の当たる場所への執着”がとてもうまく演技で表現されていたと思う。風間さん自身は確か東京生まれ東京育ちのはずですが、“必死さ”を役柄の属性に変換するにおいて、当時から実に手練れだった。

86年の辰巳さんも悪くはなかったのですが、残念ながら、手指のアーティスト“美容師”にあまり見えなかったうらみがある。やはり京大出身の辰巳さんですから、男の色気で女を騙して出世するにしても、もう少しホワイトカラーな、デスクワークなジャンルを選びそうなイメージがあるじゃないですか。最後に湖底に突き落とされながら佐山の衣服を掴んで離さず道連れにした加賀まりこさんがよかったですね。

東山さん版もやはり女優陣、特に佐山の秘密を知った黒木さんの「ミチオくん~、もうワタシから逃げられないわよ」という独り言とか、ガテン系ファッションで煙草プカプカ男言葉の編集者から、ドレス姿に変身する室井さんらのほうが観もので、東山さんの印象は失礼ながらあまり残らない仕上がり。“ヘアアーティストらしく見えた”という点では歴代1位をさしあげてもいいでしょう。

さて今作の佐山役・藤木直人さんはどうでしょうか。佐山の、女性が思わずクギ付けになる美貌の持ち主で、かつ“何を考えているのか、どんな過去を隠しているのかわからない”という仮面性は、藤木さんによく合っていると思いますが、如何せん現在36歳、歴代佐山俳優中最年長(辰巳さん放送当時27歳、東山さん同28歳)であるばかりでなく、早大理工学部卒、持ち味的にちょっと落ち着き過ぎ、行儀が良さそ過ぎ、知的分別がありそげ過ぎて、“青い危険さ”がやや不足かもしれない。同性が羨む金満有閑夫人や、花形職業のキャリアウーマンが、顔は綺麗だけれども何ゆえこんないかがわしさまる見えの男に…という“いかがわしさ”、フェロモン魅力と表裏の“どこの馬の骨とも知れなさ”が物足りない。

コンテストへのインスピレーションを求めた帰郷時、タクシー運転手に「うるさい!」とキレる場面、グランプリならずの場面での「ブタ野郎!」吐き捨て退場などは、“甘やかな笑顔に押し隠した攻撃性、残忍さがはしなくも覗いた”というところなのでしょうが、いかにも取ってつけたようでした。

もともとこの原作は、佐山という男のゆがんだ上昇志向と、財力や社会的地位のある都会の女たちの“女をたらし込んで食いものにするろくでもない男と、うすうす承知、でも私だけは特別であってほしい”という、これまたイビツで、むなしくも生臭い独占欲とがストーリーの両輪となる、実に清張さん作らしい、食えないお話ではあり、その意味ではインテリ花形職業気取りで、女性から見て絵に描いたようにイヤな女を演じている木村佳乃さん、食えなさを滑稽味のミックスで見せている室井さんら女優陣のほうに、より注目すべきかもしれません。

藤木さんの俳優としてのピークかつ代表作は2000年のNHK『喪服のランデヴー』といまだに月河は思っています。凍結したような表情が、僅かに融解するいくつかの瞬間が実によかった。ウィリアム・アイリッシュのこの原作は日本で、野沢尚さん脚本で、藤木さん主演でドラマ化されるために書かれたのではないかとさえ思えました。当時27歳、できればあの頃の佇まいで佐山役を演ってほしかったですね。

“年上女性キラー役が似合う若手俳優”をイメージするってえと、月河の脳内パドックにはほとんど特撮組しかいないのですが、ずばり『炎神戦隊ゴーオンジャー』OBから片岡信和さん23歳を強く推したい。どんなもんでしょう。佐山のような役を、いまいちばん演ってほしい、演るところを見たいと思えるのがこの人。

同じ『ゴーオン』チームから、徳山秀典さん27歳なら演技力・キャリア場慣れともにもっと安泰でしょうが、どうもこの人が演ると第一印象が“やさぐれ”になりそうなんだな。

…てな想像をたくましくしていると、噂をすれば影とやら。佐山が勤務する美容室“ムラセ”で、オーナー村瀬(渡辺いっけいさん)の不興を買い叱りつけられているのを遠巻きに見守る美容師同僚役で、『ゴーオン』OB海老澤健次さんの顔が見えましたよ。アーティスト帽子かぶっているので初見ではわかりませんでした。うーむもっと見たかった。今後佐山が独立したら、出番なくなってしまうのかしら。事が大きくなってからの聴き込み受けるぐらいの出番でもいいから、再登場、再々登場熱望。

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2 コメント

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KinKiはあんなに下手じゃありません…。歌。 (author)
2009-04-28 00:27:13
KinKiはあんなに下手じゃありません…。歌。
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>>author様 (月河たびと)
2009-04-28 20:31:39
>>author様

 わはは、“歌唱力”近似レベルとしてKinKiを引き合いに出したわけじゃないですからご安心を。
 KinKi Kidsと言えばアイドルといえども歌手メインでずっと活動されていますもんね。歌唱がと言うより耳への触感、曲調の喚起する情緒が、なんとなく山下達郎さん作曲の『硝子の少年』を思い出させたので固有名詞を出させていただきました。
 俳優としての藤木さんのファンからすれば、歌手パートでの“危なっかしさ”“非・磐石感”も魅力のひとつかもしれませんし。昔は映画やドラマの主演俳優さんは、誰が聴いてもソロを取るほどの歌唱力ではなくても、当該作の主題歌、挿入歌を普通に歌っていて、観客も普通に聴いていたものです。
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