ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』、何度も映像化されたファンの多い作品なので、うろ覚えで引用するのはためらわれますが、最後のチャーリイの手紙の結び近くに、
「ひとおわらわせておけばともだちおつくるのわかんたんです。」(=人を笑わせておけば、友達をつくるのは簡単です)
という一文があったと思います。
それに続いて
「ぼくわこれからいくところでともだちおたくさんつくりたいとおもいます。」ともあったような。
手術前以上に低下してしまった知能をもってもチャーリイ、周りが自分を笑っててくれるうちは善意に包まれ生きて行けると本能的に身体が覚え、察しているんだな…と、例の“世界一有名な追伸”の前に、読者全員「号泣する準備はできていた」となるべきところでしょうが、どんどん記憶があやふやになっていくので、そこらへんはもういいや。
『爆笑オンエアバトル』を見ていると、友達をつくるより、友達でも、友達になりたいでもない不特定多数を笑わせるほうがはるかに難しいと痛感する…ということを言いたかっただけなのでした。
10月19日(24:20~50)放送での1位はオジンオズボーン489kb。J‐POPネタは封印して、もうひとつの得意=変身ヒーローネタで来ましたが、ボケがあらかた客席じゃなく上手(かみて)かツッコミのほうを向いてて、漫才かコントかわけわからなくなってる。
2位イワイガワは、“若者の場所に若作りのオジサン”というパターンが決まりきってきた。「相田!みつを!にんげんだもの!」「温ったかくなる?」以外、今回もツッコミが機能しなかった。
一番の問題は3位ヴィンテージ437kb。5回目の挑戦での初オンエアですが、なぜいままで4回オフエアだったんだろうと思うに、この人たち、笑いが快適であるために必須な“軽み”がないんだ。
星条旗衣装のボケの“濃さ”が致命傷なのではない。ボケだけ異様ド派手衣装という共通点なら東京ダイナマイトも、ブロードキャストもいるのですが、彼らに比べてもこの人たちはどうにも“重い”。
「そういうミニコントに入る漫才うまくて面白い人いっぱいいるー」「キャン&キャンハマカーン三拍子、そういうネタガンうまー」「勝てる気がしねえー」「俺ぜってーやんねぇー」「掃除は掃除するオッサンに任せればいいの?だったらお笑いもダウンタウンに任せとけば良くね?」「やめちゃえよオマエ、やめてしまえば?」など、“軽み”“諧謔”に直結しそうなフレーズはふんだんに盛り込まれているのにそういう空気に弾まないのは、もうキャラと演じ方の問題としか言いようがない。
“軽み”と“濃さ”の関係で言えば、たとえばルー大柴さんなんかは濃いけど、軽いでしょう。ナインティナイン矢部は薄くて軽いけど、岡村は軽くて同時に結構濃い。
“重さ”が露出を続けて行って初めて得られる洗練によって解消できる問題かどうかは、この先オンエアを維持することでしか答えが出ないでしょう。その意味でこの人たちには連勝して次々にネタを見せてほしい。
いつもの紙コント・ウメ397kbは妥当か。400にいま一歩。この辺が似合いの芸風です。笑えるのは行って“帰って”のフル復路「往路のアレがこうなるか~」だけで、2~3枚返しての途中はあまり意味がわからない。
この人、むしろ友近あたりが髪型、黒のツナギ、声色などモノマネしてくれたほうが素直に爆笑できるんじゃないかな。
6位333kbのオードリーと4kb差の5位337kbでからくもオンエアのパップコーンは、アフロの人のヴィジュアルにネタが頼り過ぎだし、その場その場、ひと言ひと言で単発の笑いを取ってるだけで、せっかく5人の芝居コントなのに、ストーリー的な上昇曲線やピークがない。
今回はオンエア全組、オチ、下げがまったく弱かった。最近『オンバト』以外でプチブレイクした、特にピンの一発屋くんたちの影響か、ピンポイントのギャグや顔芸では笑い取れるんだけど、つかみ・盛り上がり・節目・ピーク→オチ、という流れのあるネタがみんな作れなくなっている。
なんとなく、いまの連続ドラマ界に似ていますね。刹那主義なんですよ。
こんなことを考えているうちに、菊花賞が終わってしまいました。東京優駿日本ダービーのあと、“同世代牡馬最強”なんて揶揄気味に言われていたアサクサキングスあっぱれ。やはり宝塚記念(15着)は出走自体が余分だったね。ウオッカの四位洋文騎手が乗ってくれて、彼も溜飲が下がるところがあったんでしょう。
父ホワイトマズル。まだまだ奥があります。特に選手権距離は強いはず。今年は出否がまだわかりませんが、いずれジャパンカップでも狙いましょう。
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