イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ボールペン今昔物語 ~Hybrid Bitter、渋・苦・華の日々~

2019-09-30 21:52:47 | グッズ

 話題の韓国タマネギ法相=曺國(チョ・グク)さんも、日本製品ボイコットキャンペーン中にもかかわらずご愛用?の報道で、期せずして注目の三菱uni油性ボールペン“ジェットストリーム”。

 前のエントリでも書いたように、月河もこのジェストとの偶然の出会いで、ちょっとオーバーに言えば“書き生活”が革命起こしたくらいに大変転を遂げたのですが、思い起こせば10数年前、同じくらいトリコになっていたボールペンがありました。

 軸がいまでも手元に数本残っています。ぺんてる Hybrid Bitter(ハイブリッド・ビター)。

 “ハイブリッド”という商品名は同社のゲルインキボールペンの定番品としていまも販売継続されていますが、月河が偏愛した“Bitter”は、インク色がビターバイオレット・ビターブラウン・ビターグリーンと3色展開でした。Bitter(苦い)というより実にシブい色合い。

 たぶん同じ系統ゲルインクの三菱uni-ball Signo(シグノ)にはまる少し前だったと思います。当時のダイアリーを保存してあれば(かつ、片づけ出せれば)わかるのですが、長めの原稿やレポート、多ページにわたる聴講メモ・会議メモにはバイオレット。一行ずつ分け散らし書く俳句にはグリーンがフェイヴァリットでした。

 “ビターバイオレット”はディープライプ(深熟)グレープ、“ビターグリーン”は焦がし抹茶」「オールド・ナイチンゲール(うぐいす)とでも呼びたい、ボールペンのインクにしておくのがもったいない様なデリケートな濃厚色で、真っ白な紙に書いても、淡グレーやアイボリーの紙に書いても、なんなら若干褐色入った再生紙に書いても字が映える。和紙の書簡箋は、毛筆かせめて筆ペンで書かないと格好がつかないものですが、このHybrid Bitterだけはボールペンにあるまじきスムーズさで和/洋のボーダーを越えました。

 たぶん、Hybrid=交雑種、というネーミング通り、油性と水性の長所を掛け合わせてどちらにも偏らないところがよかったんでしょうね。書き感触は、決してスムーズ一辺倒ではないんです。むしろ、引っかかりがある。原稿用紙や洋紙レターパッドのような平滑な紙面に書いていても、ペンの入りやターンするところで軽くズリッと摩擦を感じます。

 でも、この摩擦の感触が「書き辛い」にはまったくつながらない。むしろ、字に良き起伏、抑揚が生まれるんです。生きて、呼吸する字が書ける。残念ながら客観的にみて褒めてくれる人はいませんでしたが、Hybridで書くとちょっぴり美文字になるような気がしていました。当時書いたノートを読み返したら、文の格調もいまより若干高いかもしれません。“書いたものがどう見えるか”というイメージの格調が自分の中で高いと、気の持ちようですけど格調の高い言葉が浮かんでくる。

 仕事で作成する文書は当時はカシオのワープロがバリ現役でしたが、プライベートでは“手書き黄金時代”とも言える豊饒多産な時期でした。“現物”がいまスッと見つからないのでざっくりですが、2000年~2003年前半ぐらいまで。

 いま軸を持ってみると、現行のジェスト0.5で爆書きして疲れてくると「・・細軸過ぎる」と感じる自分がよくこれで快適に書いてたなあ・・と驚くくらい細軸です。軸先の滑り止めはラバーではなく細かいギザギザスティッチパターン。しかもしかも、ここがいちばん信じられないのですが、ノック式ヴァージョンが無くキャップ式のみだったのに、パーツ失くし魔・落とし魔の月河が、この時期一度も、一本もキャップを失くさなかったのです。

 ぺんてるの、Hybrid開発担当チームのスタッフが同社サイトのブログ(アーカイブがあります)で語っておられるように、このキャップの着脱の確かさ、緩まなさには猛烈に厳格なテストが繰り返され、オーバークォリティとまで言えるほどの心血が注がれた模様です。まぁ月河の先天性慢性キャップ紛失病の原因が「メーカーのキャップ着脱の設計が甘いからだ」なんて、それこそ盗人猛々しいことは申しませんが、キャップを外して→テールにカチッと嵌めて→書いて→テールからピッと外して→先端にカチッと嵌め直す、という一連のルーティーンを、感触と音で確認しながらやれたのは大きいと思います。

 振り返って思うに、この当時はまだ月河も若く、従って筆圧も元気でした。入り、止め、ターンの摩擦係数と、それで生まれる筆跡の起伏を楽しめる体力があった。

 すでにBitter色のインクのリフィルは販売していないので確かめるすべがありませんが、現行継続しているHybridの替芯0.5で当時と同じ快適さ、実態より美文字で書けているかのような、プラウドな良き錯覚を体感できるかは怪しいと思います。すでにジェストの超・低粘度油性インクの、書き手を疲れさせないことに特化した(と言っていいと思う)さらさら滑りに慣れたカラダになって久しいですからね。

 でもあのシブく苦いインク色はやはり懐かしい。もう一度あの色で書いてみたい、というより自分があの色で書いた字、書いた文を見てみたい。あの色で自分の筆跡が一行また一行と白い紙を埋めていくのを見ていたいと思うのです。旧版のHybridも、「黒い紙に書ける」「プリクラにも書ける」で1990年代に人気だったミルキー、パステル色インクは復刻されて店頭に並んでいますから、Bitterもいま一度見直されていいのではないでしょうか。

 いや見直されてほしい。見直すだけじゃなく、実復刻して実再発してほしい。切にお願いしたい。

 実現したらバイオレットとグリーンを箱買い・・・・したいところですが、ボールペンのリフィルにも賞味期限があるので、使い切る前に軸内ミイラ化させてはならない。末永く継続販売・リフィル供給してくれれば、買いだめする必要もないわけで、そこんところひとつ、くれぐれもよろしくお願いします。


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