昨年の暮れに、『今年の漢字』についてここで書いてからもう一年経つんだなぁ、ということをまたここで書こうと思って、書かないうちにもう二週間以上経ってしまいました。
清水寺の御住職、貫主(かんしゅ)さんっていうんですか、恒例の12月12日=“漢字の日”にTV各局の生中継つきで揮毫された全国投票公認版のほうはめでたく(めでたくって)“災”に決定しました。
この、毎年12月12日ってところが微妙なんですよねぇ。
師走感、年の瀬感はじゅうぶん、月河も会社人間だった頃は順調なら幾許かボーナスなんちゅうものも出ていたし、「“要らねェこんなハシタガネ!”とかいっぺん言ってみたいねナハハ」等と同僚とバカ言いかわしつつ忘年会に繰り出したりなんかして、来し方この一年を振り返るには決して早すぎはしない期日だとは思うのですが、この後、約三週間で、本当に一年が終わるまでに決まっていろいろあるじゃないですか、世を騒がすニュースが。
今年なら、12月29日のいま募集したら“災”と同じくらい、“華”、“射”、“捕”、“違”、さもなきゃ“逃”ぐらいのとこが票を集めたのではないでしょうか。
オリンピックがあればオリンピックで浮かれ騒ぎ、台風が来たとなれば台風に慌て、地震が来たら地震で落ち込み、株が暴落したら暴落でざわつく。
結局一年三百六十五日、いまさっき起きた事に右往左往しては、また次に起きた事で七転八倒する繰り返しが一日も半日もおさまらないので、「一年を漢字一文字でまとめる」なんて到底無理なのです。
月河は個人的に、“時”を推します。
「時間がない」「急がないと時間切れだ」の“時”、「時代遅れ」の“時”、「時流に乗ったもん勝ち」の“時”、「いい加減、潮時だぞ」の“時”、「時間が解決してくれるさ」の“時”。
主役は人間ではなく“時”だな、“時”がすべてを突き動かし、押し流していく力には抗えないなということを、政治でも、商品経済でも、国際関係でも、芸能スポーツゴシップ系でも強く思わされる一年だったと思います。
・・・・ところで、この『今年の漢字』イベント以外では媒体を通じてお顔を見ることのない清水寺の“貫主”さんの“貫”って、改めて見るといい感じの漢字ですね。「初志貫徹」の“貫”、「首尾一貫」の“貫”、「一気通貫」の“貫”。
こういう字こそが『漢字オブ・ジ・イヤー』になるような年になってほしいですね。
いや、“災”も、言うほど悪くないと思いますよ。バッサリ惜しみなく揮毫していただければ、格好の災厄落としになるはずです。
“刺さる”より“貫く”辞もて年新た たびと