イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

土俵上に女性 ~これが本当の塩対応~

2018-04-06 16:15:10 | スポーツ

 報道を聞けば聞くほど、“想定外”どころか、いままで何十年もこういう事態が一度も起きたことがないということのほうが信じられないんですけど。

 舞鶴市民文化公園体育館というハコモノ、どれくらいのキャパなのかわかりませんが、動画で見る限りかなり埋まっているし、そもそも巡業とは言え大相撲です。体の大きな大人の男同士がぶつかったり投げ合ったり、土俵下に転がり落ちてきたりを見世物にするんですから、怪我人、それも一般人の怪我人が発生する事態はいくらでも想定できる。

 今回は地元の市長さん六十七歳が、挨拶のスピーチ中に急に倒れられたのですが、力士の皆さんも若いとはいえ三十代もいるし、まして随伴の親方衆ともなれば立派な中高年で、脳血管・心疾患予備軍、大袈裟に言えば“いつ発作を起こしてもおかしくない”レベルの人も相当おられるはずです。観客だって若く健康な人ばかりとは限りません。相撲ファンの平均年齢は高いし、日頃から薬を常用していて、当日は体調があまり良くなかったが楽しみにしていた相撲観戦だからと、無理して身支度して出てきたお爺ちゃんお婆ちゃんもおられるでしょう。

 素人が考えたって、突発体調急変リスクの高そうなオケージョンなのに、何故、医師か看護師か救急救命士が同行して、会場内に待機していなかったのでしょうか。

 緊急救命措置とはいえ女人禁制の土俵上に女性が上がったとか、「降りて下さい」のアナウンスを若手行司がしてしまったとか、いや客席から先に「女が上がっていいのか」の声がかかって行司が動転しちゃったんだとか、そもそも土俵が女禁な根拠は奈辺にあるのかとかよりも、こちらのほうがよほど喫緊の問題意識持つべきイシューじゃないかと思うんですが。

 明らかに病変をきたした人が衆人環視のど真ん中にぶっ倒れてまさに痙攣しているのに、医療従事者が誰も駆け上がって来ないまま刻々と時間が経過し、観客の中に偶然居合わせた看護師さんが見かねて飛び込んで心臓マッサージを試みた。土俵が女禁で、看護師さんが女性だったからこんなに二日も三日も続けてマス媒体で再生され蒸し返される話題になってしまいましたが、本来、飛び込んできたのが男性看護師や男性医師だったとしても、“当日の出しもの=相撲を、入場料を払って観にきたお客さんに心配をかけ介入させた”時点で主催者はアウトです。管理不行き届きです。

 これもいろんな媒体ですでに言われていることですが、倒れた市長さんが処置の甲斐あってか一命をとりとめ、術後の体調は安定と伝えられたからまだしも最低限の不幸中の幸いでしたが、これで取り返しのつかないことになっていたらどう管理者責任をとるつもりなんでしょう。くも膜下出血という報道通りなら、手術が成功しても後遺症が残る場合もあります。

 これだけの会場にこれだけの客を集め、血気盛んな相撲レスラーを大勢率いて興行するのに、急病人が出たときに間髪入れず対応できる医療プロの一人も同行させていない。コレ、もう、女人禁制がどうこう、人命救助の際の優先順位どうこうを論じてる場合じゃないですよ。そんなユニバーサルな、モダンな問題に触れられるレベルに達してないですよ。その遥か手前で、危機管理意識があまりに低すぎる。こんな組織が、土俵上における女人禁制のしきたりの意義や、存続の可否なんぞ語るのは十世紀ぐらい早いです。

 たぶん相撲協会という所は、現状や状況変化に対する「こうしたらこうなるだろう」「こうならなくても、ああなる可能性もある」という想像力がまったく無く、いままで何十年も、何百年も同じ事をやって何事も起きなかったんだから、これからも同じ事をやっていれば何事も起きないだろうと思っている人間しか居ないんでしょう。力士間の暴力問題や貴乃花親方の処分問題、問題が起きて、事情説明して対処して公表してと、一歩動くたびにツッコまれたり叩かれたりする原因の根っこは一つなんです。想像力が無いから、あらかじめ手を打っておく、セーフティネットを張っておくということができない。問題が起きてしまってからバタバタするから、すべてが後手後手です。

 これは、月河だけの勝手な想像力活動ですが、実は、地方巡業で今回のケースの小型版みたいな事態は、一度二度ならず既に起きていたんじゃないかなと。そのたびに実は女性も混じったり混じらなかったりで、有耶無耶ムヤムヤ・・とその場をしのいでいたのが、昨今のような携帯撮影投稿動画がまだ普及していなかったから、協会関係者以外は会場に来合わせた地元民以外の知るところとはならず、全国媒体でも採り上げられず、従って問題視されることもなくここまで来てしまったのではないかと。今回のような、いくらでも起こり得る、いままでも起こり得たレベルの出来事に、爆弾でも落ちたように大騒ぎする傾向を見るにつけても、大相撲に関してはその報道を生業とする人たちも恐ろしくぬるくて、ナアナアで、緩いです。それが常態化しています。

 まだしもの救いは、先に書いた、市長さんがとりあえず命をとりとめたということが一つ。もう一つは搬送が終わった後“大量の塩が撒かれた”という所ですかね。これも、「女性が一時上がったことを“不浄”と見なしてか?」と好意的には受け止められていないようですが、あまりにもスイートな危機管理意識を、まる裸にひん剥いて塩をすり込むという意味では効果があるかもしれません(ないか)。

コメント
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