『爆笑オンエアバトル』第12回チャンピオン大会(26日放送)はどうだったでしょうか。今年度からスタートした新システムの締めということで半信半疑でしたが、システム云々以前に、どうも、普通に、全般に低調でしたな。
どういう流れでそうなったのか、放送された部分はカット編集が入っているので窺い知れないのですけれども、とにかく客席が非常に重かった。こんなに客の重いオンバトは近来見たことがありません。本戦スタート前の出場各組入場や、ディフェンディング・チャンピオン=トータルテンボスのベルト返還などのセレモニー部分はまずまず温まっていたように見えましたが。
レギュラー放送が月一になって、各回の会場審査得点1位計12組(第6戦のみ同点1位2組)と、放送後の視聴者投票1位組の『視聴者投票1位バトル』(2月27日放送)から1組、計13組がディフェンディング・チャンピオンに挑戦する方式になったため、出場各組と観客に“距離感”ができてしまったということはあるかもしれない。一度会場審査で“1位抜け”した組は、以後、年度中はエントリーしません。U字工事(4月第1戦1位)やノンスモーキン(5月第2戦1位)など、もうずいぶん(『オンバト』では)顔を見ていないような気がしましたもん。これが微妙に客席の体温を下げたか。直近の放送回(レギュラー回ではないけど)だった視聴者1位バトル経由のアームストロングがいちばん“ほやほや”で客をツカんでいるように見えましたからね。
結果を公式でチェックするようなヨコシマな手段は使わず、しっかりアタマから録画視聴しましたぞ。13組の挑戦者中、会場審査での上位2組とチャンピオンとの3組による決定戦が行なわれるという2ラウンド制も「ワタシ聞いてない!」(亜樹子@仮面ライダーW)状態でしたがそれはさておき、まず一見速攻、決定戦進出「ないな」と確信したのがノンスモーキン、ハライチ、イワイガワ、こりゃめでてーな、ランチランチ。
ノンスモーキンは敗者コメントで中尾が「言い訳じゃなくトップでは演りたくなかった」と言っていましたが、トップでなくても難しかったでしょうね。2番手のハライチのノリツッコミ押し同様、彼らの指漫才も初見のときからどんどんテンションが落ちてきている。「指漫才かジャンケン大王見たかったなー」と「でも、おもしろかったな」とが観客の中で拮抗するようなネタを考えないと、もうきついでしょう。
ハライチもまったく同様で、せっかく定着したノリツッコミのスタイルが、洗練されて次段階への進化を遂げないうちに、普通に飽きられてきたのが痛い。今回も「干からびた亀」でやっと沸きかかったのに、「玉突きの事故」でみるみる寒くなり、間をあまり空けずに「よぼよぼの鮒」でイメージを戻してしまったのが何とも歯痒い。操縦桿を握っているのが岩井で、澤部のアドリブ頼みで膨らませてこの出来なら、一度澤部から振る形でネタ作ってみたらどうかな。
イワイガワは井川のキョドリキャラが活きる、ネタとしては悪くない着眼、悪くない作りだったのですが、何度も言ってしつこいんだけどとにかく客席が重いんですよ今回。井川の似合わない銀髪ヅラで出オチせず、ジョニ男の拍手を要求する「ワーッ、サッ、ササ、サッ」でも、「手持ちブタさん」でも、クスッとも来ない。それどころか、ジョニ男のお約束「アーーッ!」オイルショックポーズでも、「私が(イッツショーーック!を)やっても(ジングルが)鳴るんですね」でも来ないんですから、今回に限っては彼らの日ではなかったと言うしかないですね。前に3組漫才が続いた(かつ、さっぱり温まらなかった)後ということもあるし、基本的に2人とも持ちキャラ命の芸なので、“1位抜けしたら年度末までご無沙汰”なことが、いちばんマイナスに影響する芸風だったかもしれない。
こりゃめでてーなはいまさらメイド喫茶って、取っ掛かりに使うだけにしても、いくらなんでも古過ぎるし、ランチランチは「2人揃ってキモくせんでも」。匙加減ができていないんですね。同じネタをタカアンドトシかパンクブーブーが演ったらと、そればかり考えていました。
速攻ではないけれどやはり無理だろうなと思ったのはななめ45°、我人祥太、U字工事。単独ライブぐらいならじゅうぶん成立するしウケも取れそうな出来なんだけど、他組と競うオンバトですからねえ。
ななめは終盤ドサクサと下ネタ風味を押し込んで行く流れや、岡安のドヤ顔のリフレインで笑いどころを指示増幅させていく作りはこなれていて悪くなかったのですが、ドヤ顔される側の土谷が素で笑い過ぎだし、司会者役の下池がラクし過ぎで、「初のトリオのチャンピオンになりたい」と戦前意欲的だったわりには“3人いる”ことが活きるネタになっていなかった。いままでの活躍、貢献度的にも、オンバトチャンピオンになっておかしくないポジションにいる組ですが、なるとしたらこのネタでではないだろうと。
我人祥太は何より“両親の実の子でないことより、思っていた血液型と違っていたのをショックに感じている”というズレの根本的な可笑しさが薄かったのに、そこへ血液型引っ掛かりだけを積み重ねて行ったので、つまるところ飽きてしまいましたね。やはりオンバトの持ち時間をもたせるネタを再考する必要がある。
U字工事は可もなく不可もなし。贔屓目に見れば、やはり前順のハライチから続く客席低温注意報をはじき返せなかった。
五分五分かなと思ったのはしんのすけとシャン、THE GEESE、エハラマサヒロ、ハイキングウォーキング。
しんのすけとシャンは「ほわんほわんほわん…」のクチ効果音で過去を振り返る、なにやら先日の『相棒 season8』“右京、風邪をひく”みたいなネタで、ネタ質としては1stラウンド13組の中でも一、二を争う出来だったと思いますが、さすがにオンバト歴の浅さが出たか、若干腕が縮んだというか演じが小さかったのが惜しい。いま少しオンバト“汁”がしみ込んでから決勝戦に進出させてあげるほうが親切でしょう。
「アンジャッシュ以来のコントチャンピオンを」と意気軒昂だったTHE GEESEは、2人ほぼ座ったまま、動きで取る笑いを抑えたコントで彼ららしさを見せましたが、いつになく“世話物”の匂いが強くナンセンスに徹し切らなかった分、玉数が伸びなかった。放送日近辺に大きな航空機事故があったらオンエア厳しいネタだったかも。この点はななめ45°も同じか。
エハラマサヒロは、ドアタマから紙芝居の並びや天地がさかさまだったというハプニングからのリカバリーが見事でしたが、全体に“TVの見すぎ”みたいな芸なんだな。『エンタの神様』や『レッドカーペット』でなら爆笑とっていいけれど、これでオンバトのチャンピオンになられてはちょっと困る。
ハイキングウォーキングは、“ニートの兄に引導渡して家出しようとするも、兄が余命僅かとカムアウト”と、“隣がのび太の野比家”という2つの要素を欲張ったためちょっとごちゃついたし、いいところでドラえもんのBGMが流れる仕掛けに頼った笑いの生み方は若干ずるい気もしましたが、一連の“ヘンな店のヘンな店員に振り回される客”シリーズのように、単なるウザ芸、キモ芸になっていないところにチャンピオン大会に賭ける心意気が感じられました。
いちばん、これは突き抜けた!と思ったのがアームストロングでした。「ハイ先生」と「いま関係ないと思います」のリフレインに挟む強弱起伏のつけ方がいつもながら素晴らしい。2人ともいつものフテ気味キャラを貫いたまま「ごめんなさい」「いいよ」「ありがとう」とお利口さんな言葉も入れ、「やめろよー太ってんだから」のお約束もしっかり入れてある。これで決勝進出できなかった(13組中3位)ということは、オチがきっぱりしなくてフェードアウトで終わった、それくらいしか欠点らしいものは見当たらない。
……というわけで結局エハラマサヒロ1位、ハイキングウォーキング2位でトータルテンボスとの決勝戦になったわけです。演順12番めと、挑戦者ラストの13番め。これひとつ取ってもどれだけ当日の客席が重かったかわかる。観客も終盤に来て“重さ疲れ”したのでしょう。
決勝戦でのエハラは1stラウンドでのそれ同様、やはりオンバトではなくエンタ仕様のネタでした。ナルでウザいやつの「ありがち」ネタと言えば井上マーにも近いけど、エハラの場合どうも“ウザさの丸投げ”で、裏からもうひとひねりして笑うところがない。直球「うっぜー」で終わってしまう笑いなのです。たとえばこのアーティストネタなら、“オーディエンスがいちいち、ナルなアーティストがナルに狙ったのとは違うリアクションをしてくる”みたいなひねりがあったら、笑いの質がだいぶ心地よくなったはず。
そして、今回、チャンピオンを入れて13組16本のネタを見た中で、いちばん素直に爆笑できたのが決勝戦でのハイキングウォーキングでした。徹底的にナンセンスを貫けていたし、何より、“ヘンなトランプの遊び方を教わる側の松田が、覚えて勝ちたい気満々”という地合いを作り出せたのが大きい。これで全体に勢いが出て、飽きさせないネタになった。いつものように松田が振り回され一方でぶりぶり怒るていのネタだったらエハラの下になったかもしれない。「いーち、にさんしー」のフシつけたカウントはだいぶ脳内ループ性がありました
そのハイキングウォーキングを312kb上回る、3年連続のover1000で防衛を果たしたトータルテンボスは、ネタ質・演り出来ともにほぼノーミス、文句なしでしたが、決勝戦のオーラスでやっとチャンピオン登場という出来すぎた演順になり、正直、「もう安心して玉入れたい」という客席の飢餓感に乗っての圧勝という気もします。大村の「やってみたい職業」といい、ブロッコリー、スキマスイッチ、「臭い」のリフレイン、前半で振ったボケの終盤順次回収と、いままでの得意要素を隙間なく固めた鉄板ネタ。唐突ですが先般のバンクーバー五輪におけるキム・ヨナ選手のプログラムを思い出しました。
前人未到の3年連続を達成するために勝ちに来たという、その姿勢は潔いと思うけれど、ディフェンディングでありながら“チャレンジ”でもあったはず、いま少し“攻めて”きてもよかったのではないかな。
戴冠後ベルト巻き直しの際、藤田は美人アシスタントに締めてもらったのに、大村は構われず、後ろの敗退組に「なぜ手伝わん!」と泣き入れたところが、ネタ本編より笑えました。
しかし、せっかく3年連続のチャンピオン防衛を果たしたトタテン、新年度からは『オンバト+(プラス)』という新番組になり、どういう形で挑戦者を迎え撃つのでしょうかね。今年度、週一だった放送が月一になってどうも録画忘れがちになるし、ノリにくいなと思ってはいましたが、未オンエア組限定の『爆笑トライアウト』との併せ技でせっかく定着しかかったシステムですから、あと1年は走ってみてもよかったように思うのですけれどね。