から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ハニーランド 永遠の谷 【感想】

2020-07-04 07:44:16 | 映画


舞台となるマケドニアの場所を調べる。ギリシャの上、ブルガリアの左に位置する国だ。おそらくこの映画を見なければ知ることがなかった世界だろう。水も電気も通っていない乾いた山間部で、自然養蜂で生計を立てる女性のドキュメンタリー。主人公の彼女の身に起こることは嘘のような本当の話で、文明から離れた環境で繰り広げられる「蜂」を巡る物語は、ドラマチックな劇映画そのものであり、まるで現代の神話だ。
年老いた母親と2人で静かに暮らす主人公の家の隣に、子だくさんの家族が住み着く。多くの牛たちを引き連れて放牧をするつもりだ(牛たちの扱い方が酷い)。
「半分残して半分いただく」をモットーに、自然と共生してきた主人公の生活に変化が訪れる。隣人の家族と衝突するかと思いきや、彼女は寛容ですぐに家族と仲良くなる。独身で子どもがいなかった彼女にとって子どもたちが可愛かったのかもしれない。養蜂のやり方についても惜しげもなく教えてあげる。最初は順調だったが、子だくさん家族のもとに”拝金”の悪魔が接触し、すっかり毒されてしまい、蜂たちとの約束ゴトを破る。ついには、主人公と蜂たちとの間で築かれた関係をも崩壊させる。
演出なき演出に圧倒される。登場人物たちにカメラは肉薄するも、物心がついてない小さい子どもに至るまで、それを異物として見ていない。まるで、その場に居合わせて傍観する自分が透明人間にでもなっているかのよう。土埃を上げながら、大暴れして、生傷が絶えない子どもたちの生々しさよ。寝たきりの母親の介護をしながら、この場所から出ていけない主人公の複雑な心情もしっかりとらえる。人間だけでなく、意思疎通できないはずの蜂たちの怒りの感情すらも描写する。
被写体との信頼関係を築くというドキュメンタリーの在り方を感じながら、おそらく偶発的であっただろうドラマをカメラに収めることに成功したドキュメンタリー。
主人公の彼女はこの映画の成功で、生活が一変したのかも。
【75点】
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