ビリオンズ シーズン2 【感想】

Netflixの海外ドラマがゴールドラッシュを迎えようとしている。
先週末から「オレンジ・イズ・ニューブラック」のシーズン6が始まり、今月からは待望の「ベター・コール・ソウル」のシーズン4がはじまる。先月から配信が開始されている「アンという名の少女」のシーズン2もまだ見れていない。そんななか、現在は「ビリオンズ」のシーズン3を視聴中。シーズン2の感想がまだだったので残しておく。

シーズン1に引き続き、ヘッジファンドの社長「ボビー」ＶＳニューヨーク州の検事「チャック」の戦いを描く。が、彼らの直接対決は終盤のエピソードからで、前半はそれぞれが別の敵と戦うことになる。2本の独立したエピソードが平行する形だ。シーズン1は、2人が攻防するのに費やされたため、この展開は新鮮で良かった。

前作でチャックに追い込まれて危ない目にあったボビーは、徹底してクリーンな事業展開を目指そうとする。コンプライアンスチームを新たに作るが、あくまで社外向けであり、社員へのパワハラは相変わらず変わらないｗ。ボビーは能力のないものに対しては容赦しないのだ。



ボビーが本シーズンで取り組む最大のプロジェクトは「カジノ」建設（予定）地への投資。日本でもカジノ実施法が成立したばかりなので、タイムリーなネタだった。建設地の決定が公表される前に、投資をすることが目的であるため、投資先（場所）を誤らないことが絶対条件だ。あらゆる情報と分析を重ね、ボビーが決断するも、思わぬ伏兵の出現によって妨害される。その伏兵は財界の大物であり、ボビーにとっての新たな天敵となる。演じるのは、映画界でも活躍するデヴィッド・ストラザーン。ボビーのようにひたすら強いキャラに、さらなる強敵をあてる展開が大好きだ。



そんなボビーのもとに、新たな主要キャラが加わる。ボビーのファンド会社にインターンとして働く女子「テイラー」だ。どこかで見たことがあると思ったら、「オレンジ・イズ・ニューブラック」でネオナチの囚人を演じていた女優だ。丸坊主の風貌は変わらないが、本作ではインテリで抜群の頭脳を持つスーパーキャラとして活躍する。彼女の登場がシーズン2の見どころの1つといえ、様々な局面でボビーを助け、その能力が評価され、あっちゅう間に昇進していくのだ。その過程が痛快。当初、稼ぐことに対して距離をとっていた彼女が、マネーの魔力に魅せられ、変化していく様子も捉えられており興味深い。まーそうなるよね。。。



一方のチャックは、本シーズンで前半で、ひたすら防戦にまわる。チャックの弱みを突いたボビーの復讐によるものだ。チャックがあの手この手で、攻撃を交わし、新たな経済犯を捕まえることで、ピンチにチャンスに変える。そして「ニューヨーク州知事立候補」という新たなステージに向かう。出世に関しては、どこまでも上を目指すというのがアメリカのドラマのセオリーだが、本作も同様。上昇こそが成功というアメリカの価値観を強く感じる。チャックが自分の子どもと仲良く写真に写る姿をみて「これが出馬して成功する男の姿だ！」と、興奮するチャックの父親の反応がアメリカっぽい。



後半では、チャックにとって、ビッグマネーを手にするチャンスが到来する。ただし、ここでボビーが当然のごとく妨害工作に出る。前シーズンの後半と逆の構図だ。誰よりも真実を見通す力を持つ、チャックの妻、ウェンディの心配をよそに、転落に突き進むチャック、果たしてどうなるか。。。その結末がとても秀逸で、まんまとヤラれてしまった。シーズン3がさらに楽しみになる。

本シーズンも見事な脚本であり、ファンド、検察の両面で、綿密なリサーチと、有能な監修者がついていると感じる。ボビーとチャックの攻防だけでなく、2人のそれぞれの家庭、特に夫婦の問題が丁寧に描かれており、ホームドラマとしても充実した出来栄え。本シーズンも計12話で、1話あたりほぼ60分の大容量だ。イッキ見しづらい容量のため、見終わった頃には、前半のことを忘れてしまう。



そのなかでも前半で強く印象に残っているのは、ボビーの右腕、ワグスの日本食へのリスペクトぶり。ゲスで横柄な男が「Sushi Nakazawa」なるニューヨークの寿司屋で食事をしている最中、態度の悪い客にブチ切れる。調べてみたら、実在するお店らしく、日本人が経営する超有名店らしい。誰に対しても敬意を払わないワグスが、大将を「アーティスト」といい、「コノマグロハ、スバラシイデス」と日本語で大将を前にして賞賛する。「卵焼き、1つを焼くのにも彼（大将）は10年も修行している」と語り、日本食について造詣が深いようだ。まったく接点のないドラマだが、日本食を理解するアメリカ人を見て日本が誇らしく思えた。

【70点】