
「ビリオンズ」のシーズン2に続き、そのままシーズン3に突入していたが、途中、「アンという名の少女」のシーズン2に寄り道したら、止まらなくなってしまった。2日に分けてイッキ見したので感想を残す。
素晴らしい。心地よい感動の余韻に浸る。
傑作のドラマシリーズがまた1つ増えた。
原作から大きな脚色を加わっているが、素晴らしい脚本の出来栄えでシーズン1よりも心を強く揺さぶられた。
家族愛や友情、人間の善意を肯定するストーリーは「ダウントン・アビー」と似ている。
シーズン1の最終話で持ち越しとなった、悪党の2人組を巡る騒動にはじまり、アンの学校生活と新たな出会いを通じて、彼女の成長が描かれる。
前シーズンは全7話だったが、おそらく作品の評価が高かったことで、本シーズンでは全10話に拡大したと思われる。製作予算も増えたようで、舞台セットがスケールアップし、随所に眼福感たっぷりの美術が挿し込まれる。個人的には、アボンリー村の「舞台劇」の美術がツボだった。
シーズン1との大きな違いは、原作からのアレンジだろう。
冒頭からドラマは2つの舞台に分かれて描かれる。アンが住むアボンリーと、見聞を広めるために航海に出たギルバートの旅だ。後者は原作にはなかったプロットだ。なかなか大胆な脚色だが、当時の時代状況を知るうえで、また、ギルバートをアンの「相方」としてだけではなく、自立したキャラクターとして描くうえで有効だったと思う。航海の旅で、ギルバートは広い世界を知り、成長を遂げていく。そして、航海中にギルバートの友人となった、アフリカ系青年「バッシュ」との友情や、バッシュを通してみる、差別や偏見の愚かしさ、それを突破する良心の美しさに何度も胸を打たれる。アメリカではなく、カナダが舞台であったことも人種差別に対する寛容さに繋がっていると思われた。

一方、アンの物語は、シーズン1の様々な事件を通して、アボンリーの住人として受け入れられている前提から始まる。1年後の撮影とあってか、アンを演じるエイミーベス・マクナルティは身長がグンと伸びたようだ。ガリガリでデコっぱちで、目が大きい、感情豊かな演技力を含め、映像化されてきた数多くの「赤毛のアン」史上、最も「アン」に近いキャスティングだったと改めて感じる。

「あなたは私の一生の友達」と、面と向かって恥ずかしい言葉も臆さない、アンとダイアナの揺るがぬ友情がとにかく愛おしい。シーズン1でもアンの想像力は留まることを知らない。自身の想像力に支配され、お留守番を怖がるアンが可愛い。何かと暴走気味のアンの想像力であるが、前半の悪党2人組を巡る騒動で、想像力が推理力に変わり、思わぬ活躍をみせる。この騒動も原作にはないアレンジだが、原作にはないスリルが加わった。2人の悪党も完全な悪人として描かず、改心に向かうキャラクターと描き、その顛末には切ない余韻が残る。
カスバート家で下働きする男子、ジェリーが相変わらず可愛い。彼はフランスからの移民の子どもであり、学校に通うことはもちろん、勉強する機会もない。そんな彼を気遣い、勉強のサポートをするアンと、心優しいマシューの姿が胸を打つ。彼だけでなく、ユダヤ人の行商が差別されるシーンが描かれるなど、「移民」に対する扱いは時代性を感じる。その行商とアンの関わりで描かれるのが、原作でも有名な赤毛の変色事件だ。笑ってしまう事件だが、アンにとっては笑いゴトではすまされず、世界が終わるほどのダメージを喰らう。そこで、緑色に変わった髪をばっさり切り、アンのショートカット姿が初披露される。これが思いのほか非常に可愛かった。
アンやギルバートのほかに、シーズン2で着目したキャラクターは、新たに登場する「コール」の存在だ。アンの学校の同級生であり、絵が上手で、中性的な美少年。そのキャラクターから同級生の男子からいじめられるも、彼をかばう正義感の強いアンだ。インクを画用紙にぶちまけられたのち、沁みた画用紙のインクの点を、アンのそばかすに見立て、アンの似顔絵が描きだすシーンが素敵。コールとアンの関係は新たなロマンスか、それとも、友情か、この2人の距離感が見どころだ。コールと、ダイアナの叔母さんを通して、LGBTという多様性の問題にも迫る。やや欲張り過ぎた感もあるが、当時にも確かに存在したであろう価値観を、この現代だからこそ描けたと必然的に感じられた。

終盤、アンの将来を左右するステイシー先生がいよいよ登場。先進的で、エネルギッシュに教育に打ち込む女性だ。その魅力と迫力に、画面がさらに活気付く。(それまで、アンたちを指導していた男子教師がクズだった。。。)当時では珍しく社会的に自立した女性であり、広い視野を持つ指導者だ。アンが影響を受けるのは必至。保守的な村人たちとの対立と和解を経て、次のシーズンではさらに存在感を増していきそうだ。シーズン1に続き、アンと家族の絆を育む、マリラとマシュー、それぞれの人生にも丁寧に追っていく。家族のために生きてきた2人の、「アンには豊かな人生を送ってほしい」という願いに涙してしまう。
「あなたの想像力は才能よ」とダイアナがアンを褒めるように、想像力に振り回される描写がシーズン2でも多いが、後半につれて、空想よりも現実を直視していくアンの姿が目立っていく。1人の世界から、他社との繋がりの世界に飛び出た彼女は、「成長」という確かな変化を捉える。
このドラマ、今後もファンを増やしていくと思われる。
次のシーズン3が楽しみだ。
【80点】
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