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人生はローリングストーン 【感想】

2016-02-09 21:00:00 | 映画


毎年、この時期になると海外での評判は良かったものの、日本での興行が難しいと判断され、DVDスルーに流れるタイトルがチラホラと散見されてくる。邦題がまるっと変わっているのでわかりにくいタイトルも多く、本作もその典型的なタイトルだ。「人生はローリング・ストーン」って凄いな(笑)。一周半回って深い意味があるのかもしれないけど。。。
原題は「The End of the Tour」。1996年、Rolling Stone誌の記者が、今は亡き小説家、デヴィッド・フォスター・ウォレスの朗読会ツアーに密着取材した5日間を振り返った物語だ。主人公のライターは小説家志望だったが、泣かず飛ばずで雑誌社のライターに甘んじていた。ある日、口コミで知った小説を読んで彼は衝撃を受ける。その小説を描いた作家がウォレスだ。優れた小説家は優れた書評家でもあるのだろうか。その小説を読んだ主人公はウォレスがヘミングウェイやピンチョンと並ぶ伝説の作家になると確信する。雑誌社に直談判して、ウォレスの代表作である「Infinite Jest」刊行の最後のツアーに同行することになる。
本編の大半を占めるのは主人公とウォレスの2人による会話劇だ。同じモノ書きであり、歳も近い2人はすぐに打ち解ける。記者と取材対象という一定の距離感を保ちながらも、主人公がウォレスのはからいで自宅に泊めてもらうなど、ウォレスのプライベートな領域まで踏み込んでいくことになる。出会って間もないのに、さながら旧友のような関係を築く。2人のとりとめのない会話の中から浮上するのは、ウォレスという特異な人物の才能と、人間が持つ豊かな思考力だ。そして、2人の仲良しこよしの共鳴に終わるのではなく、双方が互いの才能、あるいは個性に対する嫉妬が芽生えていく過程も興味深く描かれる。
主人公演じるジェシー・アイゼンバーグと、ウォレスを演じたジィソン・シーゲルの巧みな演技が素晴らしく、ときに心地よく、ときに辛辣な2人の間に流れる空気を現実感たっぷりに醸成する。アイゼンバーグは元々器用な俳優であることはわかっていたけど、驚くべきはシーゲルのパフォーマンスだ。天才でありながら、心を病を持つ男の陰りを見事に体現してみせる。コメディ映画のイメージが強く、こんなに巧い俳優だとは思わなかった。
ウォレスは2008年に自殺で亡くなっており、映画はその悲報を聞いた主人公の回想記として描かれる。惜しむらくは、たった5日間の付き合いだった主人公が、そこまでウォレスに影響を与えられた経緯、描写が不十分に感じられたこと。リピートで観たら、また違う味わいが出てくるのかもしれない。
【65点】
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