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全裸監督 【感想】

2019-08-17 14:38:01 | 海外ドラマ


日本が世界に誇る文化、「AV」を忘れてないだろうか。
世界共通のポルノにおいて、独自の進化を遂げてきた日本のAVカルチャーだ。「クールジャパン!」の1つとして、もっと世界にアピールしてほしいと常々思っていたが、ネットフリックスがやってくれた。

今月配信が開始された「全裸監督」を見終わったので感想を残す。
全8話。どこまでもエネルギッシュで、あっという間に終わってしまった。。。
昨年の「火花」に続き、ネトフリ和製ドラマの傑作。

村西とおる__

「ナイスですね~」とテレビタレントが、モノマネする様子を見ていたくらいで、その人物像は全く知らなかった。とにかくAV監督として名を馳せた人だったくらいの認識。自分よりも一回り上の世代がリアルタイムだったようで、AVにはさんざんお世話になってきたものの、「村西とおる」っていう名前は見たことがない。

本ドラマは、村西とおる氏の半生を追いながら、AVの歴史をたどるポルノ”アクション”ドラマだ。近しい映像作品でいうと、1997年作「ブギーナイツ」という大傑作があるけれど、日本でもようやくポルノを真正面から描いた作品が生み出された。本当にうれしい。

もともと、しがない営業マンだった男が、ある男との出会いにより、類まれなる商才を覚醒させる。不運により会社を辞めることになると、儲かる「エロ」に着目。当時、出始めだった「ビニ本」で財をなす。その後、警察からの摘発を受け、新たな「エロ」のフィールドとしてAV業界に進出する。それまで疑似本番オンリーであった日本のポルノにおいて、「本番」を定着させた創始者となる。その意味では、AVの父といっても過言ではないのかもしれない。

そんな男を中心として、同志となったプロダクションの仲間との絆、商売敵となる大手プロダクションとの競合、警察との駆け引き、流通パートナー(ピエール瀧!w)、そして反社会勢力との共存共栄、アメリカンポルノとのコラボ等々、様々なドラマが展開する。

なかでも、本作のもう1人の主人公ともいえるAV女優「黒木香」との出会いは大きな転換点となる。後で調べたら、この女性も実在したAV女優らしく、村西作品のアイコンであり、監督とリアルな愛人関係にあったとのこと。ドラマでは、ナチュラルボーンな性欲女子として描かれる。「令嬢」として育ち、完全に抑制された人生から、村西氏との出会いにより、”淫らで美しい”その才能がイッキに解放される。奇しくも時代はバブルが始まったころであり、あらゆる消費のイニシアティブが男性から女性に移った時代と重なる。セックスにおいても然りで、「女性からセックスを欲して何が悪い?」と、性革命のジャンヌ・ダルクとなる彼女の姿が鮮烈。すかさず、Youtube動画で実際の彼女のアーカイブを見る。非常に知的な人だ。文字通り、彼女を体当たりで演じた森田望智が素晴らしい。



村西氏が追及するのは「本物」である。男たちの股間をアツくさせる理想を追い求める。己の信念のために一切の妥協を許さない姿は滑稽でもあり痛快。バイタリティの塊であるが、時に空回り気味になったりする。そんな村西氏を魅力的に演じるのが、山田孝之だ。希代のカメレオン俳優たる本領が発揮され、目が離せないほどに面白い。素は男気があってリーダー気質。いざ、撮影になると、裸に白ブリーフ、ハ●撮りシーンでは、デカいカメラを背負いながら尻丸出しで腰を振る。そして、あの”実況トーク”を完全にモノにする。これが絶品。

 人類史上初ではないかというほどの、このスケベなお顔をご覧ください。先ほどまでのお人形さんの様なお顔はどこへいったのやら。今では餌に食いつく飢えた獣のような、私のペ〇スにちゅうちゅうちゅうちゅうしゃぶりつく、あなたのお口はオクトパス。

やけに丁寧で、ネバっこく、独特のイントネーション。クセが強いが、耳障りがなぜか良い。相手を褒めながら攻めるスタイルは、第1話で描かれる、英語教材を売りつける営業マン時代に培われたものであることがわかる。当時の村西氏のアーカイブを探すが、全盛期の映像があまりなくて残念だった。ただ、みんなが「ナイスですね~」を連呼したくなる気持ちは十分わかった。

栄光と挫折を何度も繰り返した人でもある。海外で捕まり懲役370年を喰らうなど、脚色が過ぎるのでは?と思ったりしたが、それらが嘘のようなホントの話で驚愕する。単なるキワモノキャラではなく、こうした大河ドラマの主役としてモデル化されるべき人物だったのだ。

勿論、AVの撮影シーンはマストになる。さすがにモザイクで隠すシーンは出てこないものの、TVドラマでは絶対にお目にかかれない、過激なシーンが連発する。くだらなくてシュールなエロ描写が素晴らしい。男が欲情する姿って恥ずかしくもあり愚かしくもあり、いつの時代も変わらない。エロだけではない。治安が不安定な時代にあって、バイオレンス描写も容赦ない。國村隼がヤクザの組長を生々しく演じる。”反社”と付き合うことのリスクを自ら口にするシーンにゾッとする。

1980年代の時代描写も大きな見どころだ。本作に相当な製作予算をつぎ込んだと思われる。普通なら、CGで逃げる場面もミニチュアや、実際のロケで撮影しているのだ。セットの規模、エキストラの数もすごい。今の時代を席捲するネットフリックスだから実現できた。

最初から最後まで、めちゃくちゃ面白かったのだが、このシーズンの8話内で描かれる物語は、村西氏の活躍の序章に過ぎないと思われる。あの狂乱の時代「バブル」に足をかけたばかりで、これからどんどんAVの世界はダイナミックに進化していくに違いない。また、後半、黒木香がメディアでエロ伝道師を演じるようになったモチベーションは、もっと突っ込んで描いてほしかった。ドラマ内では、村西氏への愛が動機になっているようだが、「AV女優はエロい女」という幻想を男に抱かせるプロの立ち位置を確立した人でもあったはず。

いずれにせよ、シーズン2への期待が高まるシーズン1であった。次のシーズンでは、プロダクション側だけでなく、女優、男優といった演者たちの視点をしっかり盛り込んでほしい。きっとそこにはドラマがあり、この製作陣なら素晴らしい映像作品に仕上げてくれるに違いない。

【70点】




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