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13th -憲法修正第13条- 【感想】

2016-11-30 08:00:00 | 映画


Netflixにて。
次のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門で候補入りが有力視されている1本。
アメリカの人種差別の病巣が、ここまで根深いとは。。。

タイトルの「13th」は修正されたアメリカ憲法の条項を指す。「あらゆる人種の隷属を禁止する『但し犯罪者には適用されない』」という内容で、犯罪者として捕まえれば、人権は無視されるという法の抜け穴だ。

アメリカの全人口のうち、黒人の成人男性が占める割合はわずか6.5%だという。それに対して、犯罪者として収監されている囚人に占める黒人男性の割合は40.2%とのこと。驚きのデータだ。「黒人男性の犯罪率が高い」という理由だけでは片づけられず、本作ではこの異常事態のカラクリを多角的に紐解いていく。
アメリカの奴隷制度から始まった有色人種への人種差別は、南北戦争による奴隷解放以降も変わらず続いている。奴隷という労働力を失った南部の経済は急激に疲弊したが、それを解消するため、憲法第13条の「効力」を活かし、黒人たちを牢屋に入れて奴隷に復活させるという新たな潮流が誕生する。黒人は「犯罪者」というイメージは、白人至上主義者によるプロパンガンダ映画によって形成された。奴隷という概念がなくなった現代においても、囚人の存在は、強固な資本主義を背景に経済と政治に密着している。犯罪者が「増える」のではなく、犯罪者を「増やす」、アメリカ社会の知られざる闇が露わになる。その標的になるのは、アフリカ系を中心とする有色人種の人たちだ。

本作の監督は「グローリー/明日への行進」でもメガホンをとったエバ・デュバーネイだ(読みづらい・・・)。彼女自身もアフリカ系ということもあり、本作で扱うテーマについては強い思い入れがあったと想像する。登場する人たちが、ほとんど問題を肯定する側の人間ばかりのため、真偽については見極める必要があるかもしれない。その一方で、反論する側の人たちは自身の保身のために、出演することを断ったとも考えられた。

本作の訴求力もさることながら、注目したのはドキュメンタリー映画として非常に良く出来ているという点だ。数多くの有識者、事件の関係者のインタビューをベースに、実際の映像とつなぎ合わせた構成であるが、自在に素材を組み合わせ、途切れることのないテンションを保っている。普通のドラマ映画も巧みに撮れる監督らしい手腕かもしれない。

印象に残ったのは、やはり人種迫害の実際の映像である。初めて見る映像も多く、どれも衝撃的だった。無抵抗な人たちを否応なく殴りつける白人至上主義者たちに激しい怒りを覚える。その映像にトランプの人種差別演説をシンクロさせてみせる演出が痛烈だ。トランプはアフリカ系ではなく、ラテン、イスラム系の人たちを指して演説していたが、その本質はまったく変わらないと思った。

【70点】
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