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ザ・ホワイトタイガー 【感想】

2021-02-13 16:23:32 | 映画


年明け早々の緊急事態宣言。映画館がさらに遠のく。。。今年に入ってまだ映画館に行けていない。結果、自宅視聴の動画配信が多くなるわけだが、年明けの新作(配信)映画で一番面白かった映画の感想を残す。

ネトフリの「ザ・ホワイトタイガー 」だ。インド映画のようだが、アメリカの資本も入っており、脚本が滑らかで癖がない。監督は「ドリーム ホーム~」のラミン・バーラニ。納得だ。

富める人生の成功を収めた一人の青年が、己の半生を振り返るという話。いわゆるサクセスストーリーものだが、華やかさとは一線を画す物語だ。舞台はインド。

「お国柄」とか「文化の違いとか」とか「貧富の差」とか、その辺にある言葉だけで片づけられない。インドという国の深さ。古来より続くカースト制度がもたらす社会は、下層民のDNAに隷従精神を焼き付ける。「人権?、何それ?」であり、上の人間は当たり前に下の人間を下として使うし、下の人間は当たり前に上の人間に従う。それがノーマルなのだ。どんなに能力の高い人間も、身分制度に支配された世界では大成の機会を潰される。アメリカにおける人種差別の歴史とも重なるが、まるで次元が違う。

頭脳明晰な主人公も、家庭の貧しさから躊躇いなく学校をやめる。そして少しでも給料の高い「使用人」になろうとする。そこに悲壮感はない。明るい未来に続く序章といった具合で、「スラムドッグ・ミリオネア」よろしくな、陽気でアップテンポに話が進行する。主人公のナレーション、インドにおける「民主主義」の考察が鋭く、同時にシニカルで楽しい。

主人公の人生を変えるが、アメリカ帰りの同世代夫婦だ。真の民主主義を知る2人の視点と、我々の視点が重なる。身分の壁を越えて3人は息統合し、仲良しトリオの明るい日々が続く。。。。と、ここまではパッケージのイメージ通りだが、中盤から暗転。ある事件をきっかけにドラマはサスペンスの様相を呈する。今まで当たり前に息づいていた主人公の価値観が揺らぎ、「ホワイトタイガー」へと覚醒していく。

「インドに行くと人生観が変わる」とはよく言うけれど、本作で知った感覚に近いのかもしれない。大きな罪を犯しても、それすらも忘却するインド社会の有様に驚愕する。直近の時代設定ではないし、原作によって脚色された部分も多々あるだろう。しかし、カースト制度の功罪に触れていることは確かだ。今なお続く、富める者と貧しい者、支配する者と支配される者の構図に衝撃を受けた。紛れもない「インド」の映画だ。

主人公の選択は予想を覆すもので、世話になった人への恩を仇で返したともいえる。同時に、支配されたものの反逆として、選ばざる得なかった唯一の道でもあった。ラストは不思議な高揚感に見舞われた。

【80点】



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