日本公開を楽しみにしていた1本。予想の斜め上をゆく壮絶さに言葉を失う。
つい14年前の話。アメリカとタリバンが中東でバチバチにやり合っていた頃。今も昔も世界最強のアメリカだが、本作で描かれるのは、攻撃するタリバンと防戦するアメリカ兵の図であり、主人公らは必死に生き延びようとする。三方、山に囲まれた嘘みたいな立地にある基地。銃撃による攻撃は日常茶飯事で、地理的不利をその戦闘力でカバーする。
敵味方関係なしに、常に人間の生き死にが間近にある。職業として「軍人」を選んだ男たちの職場は、その不安をかき消すように殺伐としていて、口汚い言葉が飛び交い、相手をイジるジョークで笑いをとる。そのなかにある徹底した上下関係は、なるほど、このような戦場では大きな意味を持つ。イラク戦争の教訓から、和平による戦略を優先するも、拭えない脅威に慄き、ついに恐れていた事態が実現化する。リアル「オオカミ少年」に身震いする。
銃弾とロケットの雨あられ。読んで字の如くの「地獄」。後半たっぷり時間をかけて描かれるバトルシーンは、観客を劇内に放り込む。おそらくその場にいなければ感じえなかったであろう恐怖をこれでもかと味わわせる。これまでいろんな映画でPTSDが描かれてきたけど、本作が最も説得力があった。
卓越した撮影、編集、音響、視覚効果のテクニック、そして、キャストたちの熱演。生きるか死ぬか、勇気と恐怖がせめぎ合う男たちの迫真の表情に引き込まれる。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、最高か。自らの危険を顧みず、仲間を救出しようとする姿は、プロパガンダという雑念を消し去るほどに胸を揺さぶる。同時に、この戦争に命をかけるほどの価値がどれだけあるのか、虚しさも突きつける。
最後は、実話映画あるあるの、実際の本人の写真が映し出される。それぞれ、どの勲章が与えられたかという情報は、正直日本人の自分には理解できず興ざめしたけど、形として個人を讃えるのはアメリカらしいと感じた。
【75点】
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