から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ディストラクション・ベイビーズ 【感想】

2016-05-28 08:00:00 | 映画


日常は暴力に慣れていない。突然、前触れもなく降りかかる大半の人たちは逃げることを選ぶに違いない。暴力の応酬を期待して無関係な人間に喧嘩を吹っ掛ける話は「ファイトクラブ」を真っ先に想起させるが、それと本作が大きく異なるのは、暴力を持ちだす背景がまったく説明されないことだ。頭を巡るのはブルース・リーの名言「Don't think ! Feel」。映像の力で攻める日本映画を久々に観た感じだが、面白いかどうかは別。なかなか敷居の高い映画だった。

香川県の松山を舞台に、見ず知らずに人間に理由もなく殴りかかって喧嘩を売る男子と、その男子に魅了され、一緒に「喧嘩巡業」の旅に出る男子を描く。理性を吹っ飛ばした世界観。昨今の日本映画にはない挑戦的で興味深いアプローチだ。

主人公の暴力男子は人を選んで殴りかかっているのがミソだ。反撃する可能性の高い不良な人たちをターゲットにしている。どうやら、一方的に相手を傷めつけるのが目的ではなく、自身の肉体的ダメージを前提とした殴り合いを求めているみたいだ。その暴力描写が強烈だ。相手がヤクザで複数相手でもお構いなし。ボコボコに袋叩きにあっても立ち上がり、何度も何度も殴りかかる。立ち上がれないほど、こてんぱんにやられても体力が回復するとムクッと立ち上がり、自分を痛めつけた相手を見つけ次第再び殴りかかる。もちろん顔面は血だらけ。喧嘩のプロたちも驚く「気違いか!」のリアクションに同感する。

主人公はどうして暴力の衝動を抑えられないのかが全くわからない。しかもひたすら寡黙で、発するのは「楽しければ良いけん」のセリフのみだ。とりあえず相手を傷つけ、相手に傷つけられることが楽しいようだ。その動機について描かれないことはあまり重要ではないし、共感を本作に求めることもしないが、問題はその暴力の先に何も見えないことだ。その答えの手助けになると思えた彼を先導する男子や、巻き添えを食ったキャバ嬢の登場も何の意味があったのかわからない。彼らは主人公と出会い、暴力に触れることでそれぞれの変化を遂げるが、その暴力の正体を最後まで掴み取れない。

主人公は傷の回復力が早い。寓話的なキャラとして描こうとするのであれば飲みこめるのだが、主人公を思いやる弟の登場が物語を現実に引き戻し水を差す。早くに親をなくした兄弟の切ない境遇が匂ってくるのに、その問題とは断絶して凶行に及ぶ主人公のギャップに違和感を覚える。「継続」を示した結末も面白くない。

「変態仮面」で消化不良に終わった柳楽優弥が本領をようやく発揮。イってしまっている眼差しに狂気と変態性を湛え、文字通りの「体当たり」演技にて主人公を熱演する。主人公とは正反対に相手を傷つけることだけに魅了され、非力な女子に暴力を振るいまくる最低ヘタレ男を菅田将暉が器用に演じている。ひとりハシャギまくるキャラだけに空回りしやすいキャラクターだが、本作の世界観から浮くことがない。小松菜奈のキャスティングは彼女の修行だろうか。彼女の個性は汎用性があるものではなく、役柄を選ぶと感じる。いろんな役柄で映画の出演がひっきりなしの理由が理解できない。事務所が強いのかな。。。

【60点】
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