から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

グッド・タイム 【感想】

2017-11-25 09:00:00 | 映画


警察に追われる男の行き当たりばったりな一夜を描く。ロッテンで評価が高かったので急遽見ることにしたが、かなり面白かった。何で「グッド・タイム(良い時間)」なんだろw。
ちょっと男前だが粗雑な兄と知能障害をもつ弟の2人兄弟。銀行強盗に入った兄弟はいとも簡単に現金を奪うことに成功するが、世の中そんなに甘くなく、あっという間に足がついて公開捜査のもと警察から追われることになる。まるで警察24時のドキュメンタリーを犯人の目線で見ている感覚に近く臨場感あり。主人公の兄は、すぐに捕まってしまった弟を救出するべく、町中を奔走することになる。無計画な主人公には、何度も予期せぬ事態が降りかかる。自らが招いた事態を切り抜け、状況に懲りずにそれでも攻め続ける男の様子が、展開を予想する観客を置き去りするように疾走感して描かれる。善良な市民にも迷惑をかけ、その場しのぎの行動を続ける主人公に感情移入ができないものの、不思議なほど引き付けられる。それは危機に直面した人間が発する火事場のクソ力にも似た強烈なエネルギーによるもの。渦中の人間にしか見えないゾーンがあって迷走に迷走を重ねてしまう。本人は常に最善の道を探そうとするも、外部から冷静にみる第三者(この映画でいえが観客)からすれば、「もっと考えろよ」と普通に愚かしく見えたりする。その構図がなんともオツだ。監督のサフディ兄弟の前作をまだ見ていないが、かなり自分のツボに入りそうだ。
主人公演じたロバート・パティンソンが素晴らしい。まだ若いが、間違いなく彼のキャリアベストといえ、演技派として本作で見事に開眼した模様。主人公のお財布役でもある年増のガールフレンド演じたジェニファー・ジェイソン・リーも「こういう人いるな。。」と思わせるイイ仕事ぶりだった。エンドロールの教室の風景は余分だったかな。
【70点】
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ノクターナル・アニマルズ 【感想】

2017-11-25 08:00:00 | 映画


「シングルマン」から8年、トム・フォードの新作を心待ちにしていた。遅すぎる日本公開もパッケージスルーにならなかっただけ良しとしたい。できるだけ事前情報をシャットアウトして観たが、前作と全く異なるアプローチの映画で驚かされた。

画廊を営むセレブ女子が、元夫から送られた小説を読み、心をかき乱されるという話。

美しいものを美しいと言う、トム・フォードの人生観に彩られた前作から一転、本作では血なまぐさいスリラーが展開する。冒頭からいきなり異様。脂肪の固まりのような病的に太った女性が全裸で踊る。どう反応していいかわからず、トム・フォード本人にどんな意味があったのか聞いてみたい。オープニングの衝撃度でいえば私的映画歴代屈指。

主人公の実生活と平行して描かれるのは暴力的な小説の中の復讐劇だ。主人公にとって全く共感性のないものに思われたが、読者として小説の中の復讐劇を追いかけるうちに、自身の秘められた感情が露わになっていく。

本作で印象づけられるのは「赤」だ。主人公の美しい赤色の髪、室内の壁紙の赤、そして、小説世界で幾度も登場する血の赤。思い返せば、本編が始まる前の配給会社「FOCUS」のクレジットもいつもの青色ではなく赤色だった(その赤色がとても美しい)。それは情熱の色であり、警戒の色でもあり、本作を象徴するような色だ。1ショット1ショットのフレーミングが1つの絵画のように見えるなど、ファッションデザイナーであるトム・フォードのヴィジュアルは本作でもスクリーンに映える。クラシカルな音楽の旋律も相変わらず美しい。

2つ物語に共通するのは、人生の選択に誤った人間の末路。主人公は元夫を捨て、新しい結婚生活を得たが、結果、夫は不倫に走り、満たされない日々を送る。小説のなかの主人公は、家族でドライブ中、タチの悪い輩にからまれ、悪夢のような悲劇に見舞われる。洗練された主人公の現実世界と、土埃と血でまみれる小説世界。この2つの異世界をつなげたトム・フォードに、語り手としてのセンスを感じる。

実力派キャストによるアンサンブルも大いに見モノだ。主人公演じるのはエイミー・アダムスだが、いい意味で人間くさいイメージが強かったので、トム・フォードとの相性にピンと来てなかったが、さすがだった。若き旬を過ぎた女の枯れた色気が立っていて強い存在感を放っていた。その脇を固める俳優陣はヨダレもののラインナップで、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、それぞれが生身の人間を体現した熱演を魅せる。個人的にはアーミー・ハマーもかなり好きなので、もうちょっと見せ場があっても良かった。彼の新作「Call Me by Your Name」に期待。

綺麗に転結した前作と比べると、ラストのあまりの「気配」のなさに物足りなさを感じたが、トム・フォードの映画はやっぱり素晴らしかった。2本じゃ足りない。これからもまだまだ観たい。

【70点】
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