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ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 【感想】

2016-12-18 09:00:00 | 映画


とても潔いスピンオフ映画。事前情報無しで観たが、なるほど~と、本作を一本の映画として作った必然性を強く感じた。「踏襲」を避けたチャレンジは意図したところだろう。その企画自体は成功と思えた。しかし、それと作品の完成度は別問題。不満要素が多く、オリジナルのSWシリーズに強い思い入れのない自分はハマれなかった。一見、ドラマチック風な絵が目立つものの、キャラクターの動機付けが弱く、感情移入できない。ギャレス・エドワーズはドラマを描くのが苦手なのかと思った。というか、単に脚本の仕上がり不足なのかも。また、主人公演じたフェリシティ・ジョーンズはこうした大作映画には不向きと感じた。期待が外れた。

SWエピソード4「新たなる希望」で、レイア姫がR2-D2に託した「デス・スター」の設計図。SWユニバースの起点ともいえるが、本作では、その設計図がいかにして帝国軍から持ち出されたのか、知られざるもう1つの物語が描かれる。

SWのようでSWでないデザイン。暗く、グレイな色調は本作の作風をよく表しているものの、シンプルに細部が見えづらく、画面に閉塞感が出る。随所に見えるマシーンのアナログ感はこの後に続くエピソード4に合わせて作られたものだろうが、どこか浮いた新しさを感じるのは何でだろう。これまで見ていたシリーズとの一体感は感じられない。SWの続編ではないので全然アリだが、これで大丈夫か?と心配する。

序盤から馴染みのない世界観に少し面喰らうが、同時にキャラクターの行動についても引っかかりを感じる。主人公の幼少期の回想から始まるが、父を連れ戻そうとするだけの長官にいきなり攻撃する母、父が目当てなのに娘(主人公)を探そうとする帝国軍の手下。その後に理由は明らかになるのだが、それでも不可解さが残る。この序盤で感じた人物描写の違和感は、その後もずっと引きずっていく。

キャラクターの背景がよく見えない。背景説明を網羅する必要はないが、絵と言葉だけで片づけ、観客の共感を置き去りにして進める節を感じる。素直に飲み込めないポイントが多いが、大きなところでいうと主人公のジンに、仲間たちが協力するモチベーションの描き方が不十分だ。悪いことばかりしてきた男たちが(悪いことをしているようにも見えないけど)、正義に目覚めてジンと共に戦うことを選ぶ、というのが流れだ。しかし、正義のためというだけでは、彼らが命をかけて闘う理由にはならないと思う。

クライマックスで描かれる、設計図を奪うミッションでは仲間たちの「共闘」を越えて「団結」に至っているようだが、戦いのなかで彼らの絆が形成される課程も見当たらない。しかも、途中から1つの「美学」に向かって突き進んでいくのがバレていく。これもシリーズにはない描き方であるが、エモーショナルに訴えようとする作為が先行しているようで、死を覚悟するほどの壮絶な闘いの中でもドラマを感じられなかった。こちらが「そういうことね」といちいち歩み寄らねばならない窮屈感がある。

個人的にシリーズ最高傑作であった前作「フォースの覚醒」とはドラマの描き方が脚本と演出の両面でまるで違う。キャラクターの想いと、こちらの想いがドライブする感覚が本作には乏しい。脚本部分だけでも、もう少し練る時間が必要だったのではないか。「フォースの覚醒」とは別物、という整理であっても、その残像がある、わずか1年後のリリースでは、前作と比較してしまう当然の意識だ。

その点でいえば、本作の主演フェリシティ・ジョーンズのキャスティングにはどうしても引っかかる。「フォースの覚醒」のデイジー・リドリーと比べると明らかに役不足。大きなスケールで描かれる本作のような映画では、彼女の演技力をもってしても、華奢な体型をカバーしながら迫力を生み出すのは難しいと感じた。犯罪歴があるという設定だが、彼女から感じるのは未熟でクリーンな空気。帝国軍に潜入中、アーミースーツを着る彼女を姿を見て、どこかのゆるキャラかと思ってしまった。仲間たちを引きつけるような魅力も、演じる役柄に用意されていないので見ていてシンドかった。彼女は実力派の女優だが、適正の問題かと。

楽しみにしていた戦闘機の空中アクションは、まあ想定の範囲。南国っぽい場所で繰り広げられる地上戦も予告編で見たイメージの域は越えない。ドラマを抜きにSFアクションとして楽しもうとするも、興奮による高揚感は得られなかった。2Dで見て正解。少なくとも3Dで見る映画ではない。監督の前作「ゴジラ」を見れば、あえてケレン味あるアクションを避けたとも考えられるが、そこは普通に楽しませてほしい。ジンたちの仲間に入る盲目の戦士を演じたドニー・イェンは文句なしにカッコよい。が、彼に訪れる結末は、途中からの雰囲気で見え透いた。「やっぱ、そういうことね」と自分はシラけてしまった。あと、本作のチャーム的な役割を担う、改造ドロイド「K-2SO」が人間的過ぎて逆に面白くない。

「フォースと共に~」と何回も発せられるが、主人公たちの中から、その存在を感じることはない。本作で描こうとするのは、特別ではない名もなき勇者たちの闘いだ。フォースを操る者だけが口にする言葉ではないが、フォースの存在に魅せられている自分にとっては失望感が大きかった。スターウォーズに何を求めているかによっても評価が変わるんだな、きっと。

【60点】
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