から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

マッドマックス 怒りのデス・ロード 【感想!!!!】

2015-06-18 09:00:00 | 映画


熱狂、熱狂、熱狂。アドレナリンで血潮が沸騰する。
最上級の賛辞として贈りたい言葉は「この映画、狂ってるッ!!!」

フラフラになった。観終わって1ヶ月ほど経って、「あの体験は何だったのか」と未だに余韻が反芻する。
アクション映画、ここに極まる。凄まじい没入感とライブ感。本作によってその可能性と限界がまた1つ引き伸ばされた。映像の力だけではない。映画の完成度という点においても、突き抜けている。先に公開された北米での未曾有の絶賛ぶりの理由がよくわかった。本作において、おそらくこれ以上の映画は作り出せないはずだからだ。

あらゆる意味で規格外だ。この映画は2015年の事件であり、アクション映画史は、本作を境に前と後で分かれるのではないか。

「汚い?醜い?観たくない奴は観なきゃ良い」、そんなメッセージが画面からほとばしるようだ。生理的嫌悪もなんのその。観客に媚びることはしない。映画はあくまで嗜好品だ。映画ビジネスという観点においては、その嗜好の最大公約数を取ることが「ヒット」という成功に結びつく。それは、一人でも多くの人に受け入れられる作品作り。日本で現在大ヒット中の「シンデレラ」はまさにその典型といえるだろう。美しいもので散りばめた眼福感は観客を夢の世界へと誘い、善意、希望といったテーマを掲げ、「感動した♪」と観客の共感をさらう。「シンデレラ」も自分は傑作だと思うが、観客へのアプローチは容易だ。

その対極にあるのが本作。希望なき世界には狂気が渦巻いている。自身が生き延びるために限られた資源を奪い合う。思いやり、助け合いといった善意は過去の遺物だ。そこに生きる人たちは、皮膚病を患ったり、何かしら四肢がなかったり、健常者なみの外形を維持している者は少ない。残酷な描写も含め、「気持ち悪い」と思う人も少なくないだろう。しかし、その荒廃の世界には、核によって全てが奪われた現実が確かに息づいている。監督のジョージ・ミラーは、その世界観の臭気を画面の隅々までに行き渡らせる。とても強烈。そしてマッドな世界に飲み込まれる。

狂気の世界で人間たちが拠り所にするものがある。本作のそれは、神のように崇拝される狂信的なリーダーだ。その男は民に施しを与える救済者の顔を持つが、その実像は紛れもない支配者。自由を求め、支配者から逃れようとする愛人(妻?)の女たち、彼女たちを連れ戻そうと追いかける支配者と、その男のためなら命を投げ出すことも厭わない配下たち。そして、その抗争に巻き込まれる主人公のマックス。追いかけ、追いかけられ、衝突する。極端にいうとストーリーはそれだけだ。しかし、文句なしに面白い。

そのバトルの主戦場は広大な砂漠と乾いた岸壁だ。大地のイエローと空のブルーのコントラストが眩しい。そこに放たれるのは玩具のように改造された大小の戦車たち。形状は歪で、1つとして同じものがない。共通するのは、ジェットエンジンを積んだようなスピード仕様であること。巨大なタンク車から、小さいミニカーまでありえないスピードで爆走する。しかもブレーキ知らず。激突は必至 。 重金属のクラッシュと、立ち上る爆炎は、荒涼の地で舞い上がる花火だろうか。徹底した実物主義によってもたらされる映像の力に圧倒される。それは、ワイスピを初めとする、これまでの同系アクション映画とは別次元のレベルにある。

カーアクションだけではない。猛スピードで走る車上で、壮絶な肉弾バトルが繰り広げられる。誰がどのタイミングで逝ってしまうのかわからない。生と死が表裏にある緊張感が持続する。そして、多彩なカメラワークと演出により、アクションが縦横無尽に変化し続ける。この波状攻撃が凄い。ガチンコなアクションの中にも多くのファンタジーが挟まれる。とりわけ音楽の使い方が秀逸。劇中鳴り止まない大音量のヘビメタはBGMだけでなく、劇中の演奏パフォーマンスからも発せられる。アクションと音楽のオーケストラだ。

ジョージ・ミラーは溢れ出るイマジネーションを抑えることができなかったか。もはや芸術。映画というキャンパスにミラーの狂気が炸裂する。

主人公のマックスを演じるトム・ハーディは勿論カッコいい。 ニコラス・ホルトのキレっぷりと哀愁も素晴らしい。しかし、何といってもシャーリーズ・セロンの存在感が光る。カリスマ性を放つ隻腕の女戦士「フュリオサ」を演じる。幼少期に遡る過去の闇、かつての主君であった支配者への怒りと復讐心、望郷と絶望。クライマックスのシーンがカッコ良すぎて鳥肌が立った。彼女の肉体改造と体当たりなアクションに留まらない、確かな演技力がキャラクターに一層の深みを与えた。公開時期が早いので難しいと思うが、オスカーの助演女優賞に是非とも候補入りしてもらいたい。マックスとフュリオサの絆の描き方も素晴らしく、完全にヤラれた。

本作は30年前の同作シリーズのリメイクだ。自分はオリジナルのファンではない。世界観はそのまま踏襲しているものの 、オリジナルで感じたチープさはなく、全く新たな映画として再誕した印象だ。しかし、結末を見届けて「おぉ~やっぱり『マッドマックス』なんだー」と思った。それは主人公マックスの位置づけにあり、感動の結末を迎える。

ジョージ・ミラーに万歳。映画に万歳。
これだから映画はやめらんない。

【120点】

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