から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

冷たい熱帯魚 【感想】

2011-04-02 11:21:28 | 映画
この映画は事件だ。

もし凶悪犯罪事件とか起きた時に、
その犯人の自宅にこの映画のDVDとかあったら、
真っ先に販売中止とかになるのかな。。。

こんな映画を作った監督の園子温、
世に出した日活に拍手だ。

エロとグロの極み。もちろん18禁。
絶望をトコトン突き詰めた果ての世界を描く。
2時間半という上映時間は、あっという間に過ぎた。

園子温の前作「愛のむきだし」がツボであったため、
今年の注目作として位置づけていた本作。
単館系映画のため、なかなか観にいけず、
公開終了日の前日にテアトル新宿に観にいく。

観客のほとんどが自分含め1人。
きっと皆、園子温ファンなのだろう。

本作は、1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースとした話だ。
細々と熱帯魚店を営む家族(社本一家)が、同じく熱帯魚店を営む夫婦(村田)と
交流していく中で、起こるサスペンス(?)だ。

主人公の社本(吹越満)は、典型的な小市民タイプ。
再婚したであろう妻の妙子(神楽坂恵)は、社本と不釣合いなほど若く巨乳。
地味な日常のシーンでもやたら胸を強調するカットが続き、絵の中の空気が歪む。
社本の娘の万引きをきっかけに、同業の村田(でんでん)と知り合うのだが、
村田の妻、愛子(黒沢あすか)もやたら若くてエロい雰囲気を醸し出す。
強引だが、どこか憎めず人懐っこく明るい村田のトークは、
胡散臭い新興宗教の説法のよう。

冒頭から感じる歪み、早々に発揮される村田の異常性と、
各キャラクターに伝播する負の連鎖が圧倒的エネルギーとなって映画から放たれていく。

村田演じるでんでんが最高だ。
映画やドラマの脇役で、温厚、情に厚いオヤジ役のイメージが強かったが、
本作では結構ヤバイことになっている(笑)

「人間を透明にできる奴が最強なんだよ!」

復習するは~の榎津、羊たちの~のレクター、ノーカントリーのシガー、
ダークナイトのジョーカーとかと並び称されてしかるべきほどの鬼畜っぷりだが、
独特なリズムとユーモアを持ち合わせている部分で、
イングロリアス~のユダヤハンター、ハンスを観たときのインパクトに近いかも。
観終わった後、でんでんを起用した監督のコメントで
「凄みのある役者はいるけれど、どこか軽くユーモアを持った人(でんでん)でないと
キャラクターの幅は出なかった」とあった。大納得。

主役の社本演じる吹越も非常によい。
序盤からひたすら村田に圧倒され、ブルブルと怯える小市民っぷりもよいが、
後半から狂気に目覚め、変貌する姿が鮮やかで、ラストに向かって一気に畳み掛ける。

画期的な補助つきセックス(笑)、生おっぱいの激もみ、
血海の中の泥レスなど、映画史に刻まれる名(迷)シーンの数々。

狂気を単純に恐怖としてみせるだけでなく
笑いをとるためのエッセンスとした脚本のセンスも非常によい。
下手なコメディ映画みるより、よっぽど笑える。

この映画について「人間の業を描いた作品。」とか「人生は厳しいものって言いたいの?」とか、
この映画にメッセージ性を求めるのは無意味だ。
作り手の意図もそこにはないと思われる。

終始一貫、救いのない絶望の世界を、
魅力的なキャラクターたちを通して覗いてみるテイでよい。
それがエンターテイメントとして、楽しかったか、つまらなかったか、
それだけの話。

私は普通に楽しめた。
そして不思議と観た後、晴れやかな気持ちになった。

昨今、ドラマのスペシャル版を映画で見る哀しき邦画の時代。
そのほとんどが映画としての完成度に欠ける。

隣の韓国に映画の質で圧倒的に負けてる中、
これほどチャレンジングでニュータイプの邦画が生まれたことは実に有難く、
邦画の未来を多少なりとも楽観することができた。

【90点】