そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

オイルトライアングル

2008-02-25 23:31:19 | Economics

今日の日経新聞朝刊「経済教室」杉原薫・京都大学教授の記事から以下引用。

 日本の対中東諸国赤字は、2002-06年にドルベースで三倍以上に急拡大した。06年の日本の対欧米黒字は約1123億ドル、対中東赤字が約897億ドルと、欧米から稼いだ黒字の八割を中東への赤字の決済に回したことになる。07年速報でもこの傾向は変わらない。実際の決済形態はより複雑だが、日本が作り出す巨額の貿易収支の地域的な不均衡がなんらかの国際決済メカ二ズムによって処理されなければならないことは事実である。その大部分が東京ではなく欧米の国際金融市場を経由していることも間違いない。
 第一次石油危機でも同じことが起きた。1974-85年に、日本は中東に対する年平均170億ドルの赤字を欧米に対する同166億ドルの黒字で相殺していた(当年価格の単純平均、下図<略>)。日本の工業製品が欧米市場を席巻して欧米の製造業を脅かし、欧米が日本と競争がない軍需などに注力した結果、日本が工業品輸出で稼いだ外貨が産油国に還流し、このオイルマネーめがけて中東へ武器輸出に走る動きも見られた。筆者はこれをオイルトライアングルとかつて呼び、中東情勢の背後にある日本の役割に注意を喚起した。もちろんその当時も、武器輸出より中東から欧米の金融市場へのオイルダラーの流入のほうが重要で、決済も多角的だった。トライアングルという表現を用いたのは、欧米市場での複雑な資金の動きの背後に日本の貿易収支の地域不均衡があるとの事実を指摘するためである。

筆者はその後の日本社会におけるエネルギー効率向上等の努力による原油輸入量の抑制を認めつつも、その構造が基本的に変わっていないことを指摘した上で、日本の進むべき方向性として「自由貿易体制の尊重」「地球全体の資源・エネルギーの管理にかかわる制度設計への積極的関与」と合わせて「日本は、資源・エネルギー節約的な技術の世界的普及に貢献すべきである」と主張します。

「オイルトライアングル」という視点がとても興味深かったわりには、結論はあまり目新しいものではないなという気もしますが、どう頑張ったって資源大国になれるはずもなく、製造業はますます利益が出にくい構造になっていくだろうし、かといって金融立国も日本人には向いてなさそうだし、環境技術を磨きに磨いていかに省資源で生きていけるようになるか、そこにしか日本の進む道はないのかもしれません…


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