そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「ルポ資源大陸アフリカ」 白戸圭一

2009-11-24 23:21:17 | Books
ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄
白戸 圭一
東洋経済新報社

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この本を読んだら、この豊かな日本で格差社会到来などと騒がれていることが戯言のように感じられてくる。
アフリカの大地における壮絶な現実。

著者は、南アのヨハネスブルク特派員として2004年から4年間を過ごした、毎日新聞社の現役記者。
1970年生まれということで、自分とほぼ同世代です。

南アといえば、来年のFIFAワールドカップ開催国。
先日も日本代表が訪れて、南ア代表とテストマッチを行いましたが、その治安の悪さについては、いろいろと噂に聞くところ。
第一章では、そんな南アの治安について、犯罪者・被害者双方へのインタビュー取材などを通じて生々しく伝えられます。
これだけでも想像を超えた悲惨な現実に驚かされるのですが、まだまだ序の口でした。

第一章と第二章のナイジェリア編で伝えられるのは、まだ「犯罪」のレベルです。
これだって日本じゃ考えられないような現実なんだけれど、第三章のコンゴ、第四章のスーダンになると、もはや「犯罪」を超えて、「内戦」「虐殺」となっていきます。
政府自らが村々への虐殺行為の後ろ盾となったり、隣国の反政府勢力と結んだり、映画「ホテル・ルワンダ」や「ブラッド・ダイヤモンド」で描かれていた世界がまさに現実なんだということを思い知らされます。

そして、第五章の「ソマリア」に至っては、「無政府」。
著者は命を賭してソマリアの首都モガディシオに二度にわたり取材のため訪れるのですが、「無政府」とはどういうことなのか、交通法規も警察もない国家を身をもって体験します。

著者は、この貧しく悲惨なアフリカ諸国の状況と、豊かな先進国の間の関係を、「資源」というキーワードで読み解きます。
ここで紹介される諸国は、ソマリアを除き資源国。
欧米の資源メジャーや中国資本による投資がアフリカ諸国の貧富を拡大させ、資源の盗掘が武装勢力の資金源となる。
一方で、日本に住む我々は、遠いアフリカの地で発生している内戦や虐殺のニュースなど気にも留めない。

それにしても著者がアフリカ特派員生活で繰り返した、決死の取材の数々には驚かされます。
犯罪集団や、武装勢力のリーダーへの命を賭したインタビュー取材。
時には、密入国という手段で国境を超え、内戦の渦中にある地域に潜入する。
大手新聞社の記者といえば、記者クラブでぬくぬくとしているイメージだったけど、そのイメージをよい意味で壊された。
といっても、著者は今は帰国して政治部記者として民主党を担当してるらしいんですが…

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