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映画「機動部隊」~エンタープライズ乗艦と真珠湾攻撃

2015-05-06 | 映画

というわけでネットで見つけたこの映画日本公開時のパンフレットですが、
う~~~~ん・・・・・・。

これ、どう見ても写真に上から色付けしてあるだけの絵なんですよ。
手抜きもいいとこ。
当時の刊行物らしく、パンフなのに発行人の名前とか住所電話番号まで記載され、
どうやら映画会社ではなく外注の出版社(外国映画社)が製作したものらしいですが、
外注なのにこんないい加減でいいものなのか。

解説もしょっぱなから間違ってるし・・。

でも、当時の広告なども掲載されていたりして非常に面白いので、
このパンフからの画像もご紹介していこうと思います。

 

さて、空母「サラトガ」の艦載機の隊長になった途端負傷し、転勤になったスコット大尉。
いくらなんでもこれは・・。
と思ったのですが、どうも名誉の負傷扱いで、少佐就任と共にハワイに転勤になりました。
(ハネムーンを兼ねての転勤だったそうです。そんなのあり?)

さらに2年後、アナポリスの海軍兵学校の教官に着任。


 

ここでアナポリスの実写映像を出してきたのは、海軍の要望でしょう。
「ファイナル・カウントダウン」と同じく、映像提供のスポンサーである
海軍を宣伝しイメージアップしてくれんと困るよキミ、というところです。

そういえば真珠湾攻撃の1年後、名匠ジョン・フォード監督が海軍の要請で
制作した「真珠湾攻撃」は、海軍があたかもやられるがままの無能に描かれている、
ということで、半分ぐらいがカットされてしまったという件をお話ししたことがありますが、
フォード監督ですら、海軍という大スポンサーの逆鱗に触れたらこうなるのですから、
この映画や「ファイナル・カウントダウン」はじめ、軍の全面協力で作られた映画が、
海軍全面ヨイショに終始したとしても致し方ないことだと思われます。

そういえば昔、高倉健主演の「野性の証明」という映画がありましたが、
(自衛隊が悪の組織で元自衛官の高倉健と薬師丸ひろ子を殺すために全兵力投入して
追いかけてきて高倉健が一人でそれに立ち向かうという内容で薬師丸ひろ子が
お父さん怖いよ何か来るよ大勢でお父さんを殺しに来るよとかいう映画)
この映画は防衛庁の協力は全く得られなかったそうです。


というか、こんなものに協力が得られると思っていたのか角川春樹事務所は。



画像は本物のアナポリスでの課業行進(っていうのかなアメリカでも)。
別のシーンで、生徒たちが隊伍を組んで授業に向かう様子が映されています。



兵学校官舎が暗いと文句を言うメアリ。

「私の腕の見せ所ね。未来の提督の住まいだもの」
「その前に中佐にならないと・・」



アナポリスではしょっちゅう行われている(らしい)合コン、
じゃなくてダンスパーティ。
みなさんこういうところでガールフレンドを見つけられるんでしょうね~。
この映像も本物のアナポリスでのパーティの様子に違いありません。

真ん中の白いドレスはメアリで、生徒とダンスしております。

「ご主人の講義は大人気だそうですね」
「私も聞いてみたいけど、妻で十分ラッキーだわ」

アメリカの社交のおもしろいところですね。
日本でダンスパーティがあっても、学生が教授の妻と踊ることはないでしょう。



「あのパーティの夜を覚えてるかい。日本の大使館員は司令官になり・・」

これは勿論山本五十六のことで、大使館員というか駐在武官ですね。
ちなみに五十六が大使館付き武官に着任したのは1926年。
この映画だとパーティは1923年という設定ですから、ちょっと惜しかったかな。

「ベントリーは今や上院議員だよ」

もしかしたらこれはJ・ウイリアム・フルブライトがモデル?
さっそくベントリーはスコットを見つけて絡みます。

「戦争は起きそうかね、コマンダー」(ゲス顏)

そこに早速メアリが駆けつけ、会話を遮りまくって夫が口喧嘩するのを阻止。
メアリさんなかなか賢妻ではないですか。
正義感はあるが直情でカッとなりやすい夫の性格を熟知してカバーです。



アナポリスの教官として教壇に立つスコット少佐。
大鑑巨砲に時代は終わりを告げ、航空戦の時代がやってくるので、
これから空母が重要になってくる、と授業で熱く語ります。
生徒の一人が授業の最後に

「なぜ戦艦ばかりが重要視されるのですか」

と質問するのですが、

「その質問なら私がしたいくらいだ」

先生それ答えになってません。



しかし海軍上層部的にはこういう考えはアウトなようです。

ていうかそれ本当だったの?

わざわざ校長である提督が授業の後やってきて

「空軍力の限界を生徒に教えるのが君の仕事だ。
我々にはたった三隻の空母しか所持がない。
しかし機雷施設船や掃海艇、水上艦なんかのほうが大事なんだ。
当校の目的はミシップマンをパイロットではなくセイラーにすることだ」

まあ、海軍ですからそれもわからないではありません。
日本でも同じような論争が行われており、つまりこれは過渡期のジレンマというものだったのかと。




悩めるスコット少佐の元に、ある日、組織への不満を口にしてクビになった
元海軍の同僚が、外国に爆撃機を販売している彼の今の会社に
ヘッドハンティングの話を持ちかけてきます。

「給料は天井知らず”cieling unlimited ”だよ」



折しもスコット少佐は昇級試験に落第してしまっていました。
自衛隊だと2佐への一選抜から漏れたというところです。
これで提督の夢は潰えたと心が折れそうなスコットが、
ヘッドハンティングに心を動かされたとしても誰に責められましょうか。

しかし、海軍をやめることに反対したのはメアリでした。

「今まであなたを誇りに思っていたわ」

妻の説得でスコットは海軍を辞めてムッソリーニに飛行機を売る仕事を
思いとどまる決心をしたのです。



アナポリスのクリスマス聖歌隊がキャロルを歌います。(本物)

それからメアリは内助の功を発揮しまくりで、クリスマスパーティには
姪まで総動員して、若い士官たちに航空隊の魅力を宣伝するのでした。

「潜水艦と迷ってるですって?狭くて魚しかみえないわ」

「船は狭いけど夫はラッキーだわ。航空士官室はとっても広いのよ。
朝食にはステーキ、アイスクリームは毎日・・・」


そんな妻に夫は

「マタ・ハリ」

と一言。
伝説の女スパイで、色香を武器に諜報活動をし銃殺になったダンサーですが、
どうやらこれは褒めるつもりで言ったらしく、字幕にはただ

「見事だ」

とだけ翻訳されています。 

写真は、アナポリス学生による聖歌隊がキャロルを歌う様子。
これもどうやら本物。



年が明け、スコット中佐は「エンタープライズ」に配置されました。
もちろん航空隊の隊長です。
そして、再びハワイへの赴任を命じられました。

ハワイ・・・・嫌な予感しかしません。

 

そして1941年12月7日、日曜日の朝がやってきました。
ヒッカム基地では水兵たちがキャッチボールに興じ、礼拝が行われています。



メアリは夫の同僚の妻たちとテニスに興じていました。
右が八千草薫の若い時にそっくりな女優さんで、真ん中の美人はなんと

ジュリー・ロンドン!

ご存知ですかね。ジャズファンなら馴染み深い名前だと思うのですが。


Julie London Cry Me A River Colour TV Show



そこにやってきた帝国海軍機動部隊の艦載機。

これは合成ですが、ここからのフィルムはふんだんに本物が使われます。
ここで零戦を演じているのはカーチスホークP-36。



航空機の爆音に不審がっているうちに猛攻が始まり、
八千草薫に弾が当たって死んでしまいます。



こちら「エンタープライズ」艦上。
このときご存知のように空母は真珠湾におらず、真珠湾を母港にしていた
「エンタープライズ」もウェーキ島に輸送任務で赴いていました。

 

直ちにスコット中佐は航空隊に爆装させて発進させるのですが、
戻ってきたパイロットの答えは

「ゼロ・ゼロ!」(収穫なし)

右の飛行機はヘルキャットですかしら。



わ、ワイルドキャット?



ボタンを押すと三角のパネルがグイーンと立ち上がって、アレスティング・ワイヤが立ちます。
フックが引っ掛けるワイヤの高さって、こうしてみると高いんですね。


それよりスコット中佐は、日本軍が空母艦載機で攻撃してきたことにショックを受けます。

自分が若い時から海軍に母艦の必要性を折あらば提唱してきたのに顧みられず、
今その方法を敵に先に実践されてしまったからです。


ところでここまで書いてあることに気がついたのですが、
奥さんのメアリはスコットのことを「スコッティ」とよんでいるのです。
スコットってファミリーネームじゃなかったんだ、と思っていたら、
真珠湾攻撃の後病院でボランティアをするメアリを看護婦が「スコット夫人」と呼び、
どうやら夫の愛称がこの夫婦は、たとえば「山田」なら「やまちゃん」、
「望月」なら「もっさん」というノリであるらしいのです。

そんなことってアメリカでもあるんですね。ってそこかい。


続く。