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映画「機動部隊」〜”So Long, Emily!" 撃墜される二式大艇

2015-05-09 | 映画




沖縄侵攻を決めたアメリカ軍。
主人公のスコット少佐は「フランクリン」がモデルの「クリッパー」に
参謀として乗り込んでいます。



「わからんな。ジャップは何を待っているんだ」
「防衛に必死なんです」

いやだからもうこのころはほとんど船も残ってなかったんですってば。

しかし、疑心暗鬼というのか、アメリカ側は見えない敵に怯えたまま、4日を過ごします。



敵のいかなる動きも見逃すまいと緊張してレーダーを見張る監視係。

「退屈と恐怖、どちらも体には悪い」
「早く始まってくれ」
「カミカゼがくるぞ。敵機は7000機を上回るそうだ」

いやまあ、日本全国の羽根のついた飛行機の総数はそれくらいにはなったかもしれませんが。
これは買いかぶりというか、とんでもない過大評価で、本土決戦のために
用意されていた航空機は、練習機2200機を合わせてもせいぜい5千機くらいにすぎませんでした。

さて、いずれにせよそのとき緊張が破られます。
レーダーに九州地方から飛来する飛行機の一群が捕らえられたのです。

「九州上空を敵の飛行機が通過中」

どうでもいいけど九州を「カイユウシュウ」はやめてくれるかな。

 

「クリッパー1号」飛行隊に、レーダーからの情報を送られます。
そしてわたしは思わずここで息を飲んでしまったのですが、この日、発見されたのは
あの二式大艇でした。

索敵機が「1機発見」の一報後降下して攻撃を行う様子は、カメラマンによって撮影されていました。

 

実写フィルムで不鮮明ながら、そうと知ってみるとあきらかに機影は二式大艇、エミリーの形です。
このフィルムは3月11日に第二次丹作戦で特攻出撃した二式大艇のうち一機が
ウルシー泊地への航行途中で撃墜されたときのものである可能性があります。

だとすれば、この機には杉田正治中尉以下12名が乗っていたことになります。

 

撃墜され、着水と同時に爆発を起こす二式大艇の最後の姿。
ああ、この瞬間12人の日本人の命が一挙に失われたのだと思うと
胸がきゅっと痛くなる光景です。

この映像が冒頭のユーチューブですが、ナレーションも当時のものらしく、
二式が撃墜されて海に落ち大爆発を起こしたとき、

”So long, Emily!"

などと言っています。 

 


で、映画で「一機撃墜」の報を受けたリーブス提督、フンと鼻で笑うんですよ。
いかに戦争だったとはいえ、そして映画とはいえ、なんだかやりきれない気がします。

日本側の制作であれば、こういう表現は決してしないだろうなとつい思ってしまいました。

 

総員配置に就けの合図が出、ヘルメットを締めながら航空指揮所に出るスコット。

「飛行機は嫌いだ。人類の失敗作だな」

などと意味不明の冗談を言ってみせます。
乾いた洗濯物を仕分けするとき、同じような大量の靴下をペアにするのに嫌気がさして、

 「男物の黒い靴下なんて、この世から撲滅するべきである」

 とわたしなどもよく思うのですが、きっと同じ言い回しに違いありません。


違うかな。

 




さて、沖縄上陸を支援している(という設定の)「フランクリン」、いや「クリッパー」。
我が海軍の二式大艇を撃墜した後、また別の日本機の機影が接近するのを認めます。



作戦司令室からは

「Archduke(大公)、Rebel(反逆者)、Angel(天使)、
こちらはBaldeagle(白頭鷲)。
直ちに出動させよ」


と指令が飛びます。
タックネームですが、どうもここのところの字幕が変です。

「大公は本艦の北25マイル地点に待機」

ここまではいいのですが、そのあと

「Angel's five, Rebel over base, Angel's ten, cupid over base」

を、

「”反逆者”は5機、”天使”は10機、残り25機を出せ」

と訳しているんですねー。
これはいくらなんでも飛行機の数なんかじゃなくて各自の待機地点の指示だろっていう。

DVDで鑑賞していて、こりゃ違うだろう、という間違いをよく見つけるのですが、
映画の翻訳者って、特に昔は結構いい加減な仕事をしているもんだなあと
最近やっと気づくようになりましたよ。

映画館で上映されれば、あとはテレビで放映されるときにも吹き替えだし
検証されないので安心して?いたんだろうと思いますが、
最近はDVDで、しかもバージョンによっては英語字幕も出ますからね。
(こういう古い映画には英語字幕は出ませんが)

 

轟音を立てて発艦していく艦載機。

 

そして空戦シーンも実際のフィルムから。
はっきりと翼に日の丸が認められるおそらく零戦が、
低空を飛行しながら翼から炎を噴き出させて海に墜落します。

フレッチャー提督がモデルのリーブス提督に二式大艇撃墜の時に鼻で笑わせたように、
このときもパイロットにフフンと笑わせたりするのですが、
実際に人一人の命が失われている映像を取り上げてそりゃないだろう、
それとも何かい?日本人の命っていうのはこういうネタにしても別に構わんって考え?
とおもわず詰め寄ってしまいそうなくらい、こういうのを見るとどうしてもムカつきます。

特にこのころは戦後まだ4年で、日本に配慮するよりも戦争で身内を失った遺族の
感情を優先して映画は作られていたとすればこれも無理からぬことと思いますが。



片足のまま着艦してくる・・・ヘルキャット?。
着艦と同時に残った片足を引っ込めるのですが一瞬遅く、
しかし傾いた翼がアレスターフックの役目をしてとりあえずスピードは落ちます。



艦橋から飛び出して逃げようとする人が、自分の方向に機体が向かってきて
慌てて向きを変えて避難している様子がばっちり映っています。
操縦者は無事だった模様。

 

こちらは上半身裸で必死にうちわみたいなものを振る誘導員。

 

着地の瞬間バウンドして砲座の側壁に激突。
激突の瞬間全員が「伏せ」をしています。
ノーズを引っ掛けて飛行機は真っ二つになってしまいました。



しかし幸運にもパイロットは全く無事です。
私事ですが、昔東名でやらかした事故と同じ状況なのを思い出しました(笑)
回転したので外側は大破しても、乗員には何の損傷も与えなかったんですね。



「こちら”白頭鷲”、敵機来襲」



猛烈な対空砲の中、まっすぐ突っ込んでくる特攻機。
これで僚艦の何隻かが爆発炎上を起こします。

リーブス提督は左回頭を命じました。

ここからしばらくは、特攻機が次々と軍艦に激突するシーンが続きます。
リーブス提督が恐れていた「カミカゼ」攻撃が始まったのです。
そしてついに・・・・・、

 

「フランクリン」がやられました。
炎上するハンガーデッキ。
スコット大佐は即座に消火活動を命じます。
パイロットたちも今や一体となって消火活動に加わりました。

 

迎撃されて海に墜落する零戦。

 

左は実写フィルム、右は現代に撮られた映像。
この映画の撮影はアメリカ海軍が全面的に協力して、軍艦を貸し出して行われました。
アーカイブの使用許可も含め、破格のことであったとされます。



最終回に続く。