イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝48

2013年07月18日 | 預言者伝関連

ハイバルの戦
ヒジュラ暦7年

148.アッラーからの報奨:
  まことに至高偉大なるアッラーは、アル=フダイビーヤにおけるリドワーンの誓いの仲間に吉報を与え給いました。彼らはアッラーとその使徒に従い、またアッラーの決まりごとと命令を、自分たちの好むことや理性が選択することよりも優先した人たちでした。吉報とは、近い勝利と多くの戦利品です。アッラーは仰せになりました:
  「かつてアッラーは信仰者たちに、彼らがおまえと木の下で誓約した時に満足し給うた。それで彼は、彼らの心の中にあるものを知り、彼らの上に静謐(せいひつ)を下し、近い勝利を彼らに報い与え給うた。そして、彼らが手に入れる多くの戦利品をも。アッラーは威力比類なく、英明なる御方であらせられた。」(クルアーン勝利章18~19節)

  この勝利と戦利品獲得は、ハイバルの戦で始まります。「ハイバル」はユダヤ人たちが作った数々の要塞(ようさい)や、ユダヤ人のための軍事基地が備わった、豊かな農地と果樹園に恵まれた町でした。また悪意に満ちた策略や戦への挑発を仕掛けるアラブ半島内に存在する彼らの最後の拠点でもありました。ハイバルのユダヤ人こそが、ムスリムたちを襲った連合軍を過去に生み出し、クライザ族にムスリムたちを裏切るよう仕向けた人たちだったことを忘れてはなりません。そんな彼らは自分たちも襲われるのではないかと心配し、ガタファーン族と共にマディーナを襲撃しようと策謀(さくぼう)しました。クライシュとの決着をようやく付けることの出来たアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は、ハイバルのユダヤ人の策謀(さくぼう)に気を揉むことから遠ざかり、また彼らの害を断つことを目指したことが、ハイバルの戦が起きた理由です。

149.預言者率いる信仰者から成る軍:
  アル=フダイビーヤから帰って来た預言者ムハンマド(祝福と平安あれ)は、ズ・ル・ヒッジャ月とムハッラム月(12月と1月)の数日をマディーナで過ごし、ムハッラム月が終わる前にハイバルに向けて出発しました。ヒジュラ暦7年のことでした。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は1400人の歩兵と200人の騎兵を連れていました。戦に参加したい者だけが募られ、アル=フダイビーヤの際に戦に出なかった者の参加は認められませんでした。また20人の女性の教友達が、病人やけが人の世話、戦時中の水と食物の供給のために一緒に出陣しました。

  マディーナの偽信者たちはユダヤ人の助けとなる行動に出ました。彼らの頭的存在であるアブドゥッラー・イブン・ウバイはハイバルにいるユダヤ人たちに知らせを送りました:ムハンマドが君たちを狙って出発したので気を付けるように。しかし彼を恐れる必要はない。君たちは大勢で、武器も多いので大丈夫。ムハンマドの衆は一握りの集団にすぎない。彼らは少しの武器しか持っていない。ハイバルの民が以上のことを知ると、キナーナ・イブン・アビーアル=ハキークとハウザ・イブン・カイスをガタファーン族に送り、彼らに援助を求めました。当時、ガタファーン族は、ハイバルのユダヤ人と同盟し、ムスリムに対する対抗に協力していたためです。


  軍が「アッ=ラジーゥ」と呼ばれる谷に到着した頃に、ガタファーン族はユダヤ人援助のためにハイバルに向けて出発していました。道中、背後からムスリムたちが彼らの家族や財産を襲ったのではないかとの気配を感じた彼らは、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)とハイバルを放棄して逃げてしまいました。

  アッラーの使徒は軍の道案内をしていた二人の男を呼び、北方つまりシャーム方面からハイバルに入れるもっとも良い道を示すよう依頼しました。そうすることで、ユダヤ人とガタファーン族を遮断するためと、ユダヤ人と彼らのシャームへの逃げ道を遮断するためです。

  道案内人の一人が:アッラーの使徒様、私が案内いたします、と言いました。分かれ道がいくつかあるところまで行ったところで彼は言いました:アッラーの使徒様、これらの道はどれを選んでも、あなた様が目指しているところと繋がっています。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそれらの道ひとつひとつの名前を述べるよう命じました。案内人が、これはフズン(悲しみ)です、と言うと、彼(祝福と平安あれ)はそこを通ることを拒みました。これはシャーシュ(包帯)です、と言うと、それも拒みました。これはハーティブ(薪)です、と言うと、それも拒みました。あと一つしか残っていません、と案内人が言うと、ウマルは言いました:何という名前だ?ムラッハブ(歓迎された)です、と彼は言いました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそこを通ることを選びました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P311~313
②②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P257~259)