グリーンズ・テイブル

ppのピアニッシモな戯言でござ~い☆

猫を抱いて象と泳ぐ

2011-09-26 10:50:13 | 

「猫を抱いて象と泳ぐ」
小川洋子
文藝春秋

小川洋子といえば「博士の愛した数式」、そして何より、この奇妙な題名の意味を知りたい…で読み始めるも、中心線にチェス有りと分かった途端興味喪失、直ぐに投げ出した。
なにせ将棋や囲碁なら眼にしたことがあっても、チェスは見たこともなければ興味も無し。

なのにまた気になって、栞ヒモから続きを読み始めるものの、主人公の少年の唇に毛が生えているのを忘れるほど間が空いてしまった。。。
けれど、読んで良かった素晴らしい本。
うすうす感じていた価値観をはっきり提示された思い。

ともすれば猛々しい自己顕示欲だらけの世界に潜み、それが鼻につきつつ自分もそうなっていたとしたら、ぞ~っとする。

チェスを指す人間は余分なことを考える必要などないんです。自分のスタイルを築く、自分の人生観を表現する、自分の能力を自慢する、自分を格好よく見せる。そんなことは全部無駄。何の役にも立ちません。自分より、チェスの宇宙のほうがずっと広大なのです。自分などというちっぽけなものにこだわっていては、本当のチェスは指せません。自分自身から解放されて、勝ちたいという気持ちさえも超越して、チェスの宇宙を自由に旅する…。そうできたら、どんなに素晴らしいでしょう

口のある者が口を開けば自分のことばかり。自分、自分、自分。一番大事なのはいつだって自分だ。しかし、チェスに自分など必要ないのだよ。チェス盤に現れ出ることは、人間の言葉では説明不可能。愚かな口で自分について語るなんて、せっかくのチェス盤に落書きするようなものだ

相手を脅かしたり、自分を強く見せかけるための無口ではありません。純粋に自分を消すための静けさです


愛おしいもの達




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