ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

カフカ「城」

2008年03月15日 | 芸術


スノッブではないもう一人のMが、久しぶりに顔を見
せた。
となると、話は当然カフカの「城」である。
というのも、前回、彼が村上春樹の「海辺ののカフカ」
を読んでいて、それなら本家のカフカを読んでみない
と、ということになったのだ。
そして「城」を薦めたのだった。
その時、村上春樹とは全然違うから、ひょっとしたらと
いうか多分読み通すことは出来ないよ、と展開を予測
して言った。
本人は、意地でも読むと威勢良く答えたのだが。
それから、一ヶ月以上は経っている。

「で、どうなってる、カフカは」(私)
「ちゃんと、あの後直ぐに買いました」(m、M氏と
区別するためにこれからは小文字のmにする)
「買ったのは良いけど、読んだの?」(私)
「三分の一くらいは読みました」(m)
「三分の一?結構経ってるのに」(私)
「まだ、読んでる途中です」(m)
「要するに、進まないんでしょ」(私)
「まあ、そうなんですけど」(m)
「つまり、面白いとは思えないんでしょ」(私)
「まあ、そうなんですけど」(m)
「面白いと思えないんだったら、読んでも意味無いよ」
(私)
「だって、話が展開しないもんだから、次にどうなる
んだろうというワクワク感が持てないんですよ」(m)
「だから、そういう話の展開で読ませる、所謂一般的
な小説とは対極のものって最初に言ったでしょ」(私)
「そうなんですけど、あまりに村上春樹とは違って」
(m)
「村上春樹とカフカの共通点って、あるとは思えない
けど、タイトルに使ったくらいだから本人は好きなの
かね」(私)
「そうらしいですよ、しかし、全然違っていました」(m)
「登場人物も殆どいないし、同じようなところをぐる
ぐる回ってるだけでしかもゴールも無い、って感じで
しょ」(私)
「あれって、本人の職業が関係あるんですか」(m)
「役人ってことが?」(私)
「そうです」(m)
「確かに、意味が無いところに意味があるかのような
体系を作り、勝手に増殖していく官僚機構を表わして
いると見えないことも無い」(私)
「そうですよね」(m)
「しかし、そういう何か一つの主題に収斂するような
小説ではないところにカフカの良さがあるわけだから、
変に解釈するのは面白さを半減させるね」(私)
「そういうもんですか」(m)
「と、個人的には思うということで、それぞれが好き
なように読めば良いわけだし、面白いと思えないんだ
ったら読むな、ということ」(私)
「でも、電車の中でカヴァーをつけずにカフカの<城>
なんて読んでいたら、ちょっと格好良いですよね」(m)
「<海辺のカフカ>よりは断然格好良いと思うけど、
一般的にはどうなんだろう、それに、電車の中じゃあ
なかなかカフカの世界に集中できないよ」(私)
「良いんですよ、そういう状況じゃないと読むモチベー
ションが上がらないんですから、私の場合」(m)
「見栄がないと読めないと、それって読んでるんじゃ
なくて眺めてるってことだろう」(私)
「それでも、良いんです」(m)

まあ、先は長そうだ。
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