先週末の東芝HD-DVD業務見直し報道で、次世代DVDめぐるブルーレイ対HD-DVDの主導権争いに終止符が打たれました。意外に早い決着の裏事情を探ってみます。
ご存知次世代DVD、ブルーレイ陣営はSONYを盟主とする松下、シャープ連合、一方のHD-DVDは東芝が開発しマイクロソフト、インテルなどPC関連企業が後押ししていました。これは、特許に固執する東芝を各ライバル家電メーカー達は嫌い、ソニー陣営への結集を促した結果のようです。このこと自体が敗北の原因ではないと私は思いますが、IT産業が東芝陣営に結果集まったことは、決してプラスではなかったことは確かなようです。
一般的に今回の勝敗を決めたのは、ハリウッドの映画会社をどれだけ押さえられたかであり、最終的に1月のワーナーブラザースの、HD-DVD陣営からの脱退ブルーレイ支持が、東芝に引導を渡したと言われています。では、ワーナーはなぜHD-DVDを切ったのでしょうか。
どの映画会社も、商品の一本化は製作コスト面から考えてぜひとも望むところだったでしょう。そして、当初は現DVDプレイヤーとの互換性、ソフト制作コストの低価格化が可能である点などから、HD-DVD優位と伝えられていました。
水面下の転機は、ソニーのトップ交代だったと個人的には思っています。両陣営の規格統一折衝が決裂した05年にハワード=ストリンガー氏がソニーCEOに就任し、ブルーレイはストリンガー人脈を使ったハリウッド攻略に打って出たと聞いています。ディスクの記憶容量等性能で勝るブルーレイですが、過去のビデオ対決で画質で勝りサイズでもコンパクトだった「β」を持ってして、敗れた記憶も未だ生々しいソニーのこと、絶対に二の舞は踏むまいと考えたに違いありません。
ソニーが「β」での敗戦から学んだことは、商品の高性能アピールよりもソフトの大量流通経路を押さえろということ。すなわち当時、雨後の竹の子のように増殖を続けていたビデオレンタルをいち早く抑えたVHSが、高性能の「β」を抑えて勝利を手中にしたことを教訓とすることでした。そして今回、ストリンガーCEOは、元CBSテレビ出身の豊富な米国映画界人脈を駆使して、ビデオレンタルよりもさらに川上である米ハリウッドを抑えにまわり、驚異の引き込み作戦を展開したのでした。
一部ではハリウッドの大手映画配給会社がブルーレイを選んだ大きな理由は、IT配信に対する著作権上の懸念があったようにも言われています。すなわち、はじめに書いたようにブルーレイ陣営は家電チーム、対するHD-DVD陣営は結果ITチームとなってしまい、ハリウッドはITで情報を垂れ流さず、家電としての光ディスク主流イメージの家電陣営により好感を持ったのではないか、という推測。この話、なかなか説得力ありますね。
このような状況が水面下で着々と進行する中、ブルーレイ陣営は、昨年後半から機器の早期市場投入で機先を制し、ブルーレイの優位イメージを戦略的に作り上げる戦術を打って出ました。そしてこれが大成功。年末商戦の雌雄が決した年明け1月、ついに映画ソフト配給最大手のワーナーがストリンガー氏のラブコールに応え、ブルーレイ一本化を決めるに至って、決戦の勝敗は意外に早く決したのでした。
余談ですが、東芝の今回の決断は本当に早かった(正式発表はまだですが)。やはり高度成長の時代とは違う現状の経営環境の中、決して順調とは言い難い東芝家電部門において「キズが深くならないうち」の早期撤退を判断したのでしょう。そして株主重視の経営という現代の風潮も、決断を急がせた大きな要因であると思われます。無用なコストが垂れ流し状態になる争いの長期化は、株主代表訴訟の対象になりかねないとの判断があるのは確実です。
さて今回の一件は、ビジネスにおける沢山の鉄則の中から3つのことを印象的に教えてくれました。
ひとつは、「ビジネスは、より源流を抑えたものが勝利に近づく」ということ。
ふたつ目は、「ビジネスは、あらゆるイメージ戦略が大切である」ということ。
三つ目は、「ビジネスは、商品の価格や性能だけでなく人脈の有無が大きくものを言う」ということ。
あらゆるビジネスにおいて源流を探る探究心を持つこと、自分の見せ方も含めどんな場面でもイメージ戦略を忘れないこと、ヒマがあったらコツコツ人脈をつくること。ビジネス・パーソンは、今回改めて学んだこれらの鉄則を肝に銘じてがんばりましょう!
ご存知次世代DVD、ブルーレイ陣営はSONYを盟主とする松下、シャープ連合、一方のHD-DVDは東芝が開発しマイクロソフト、インテルなどPC関連企業が後押ししていました。これは、特許に固執する東芝を各ライバル家電メーカー達は嫌い、ソニー陣営への結集を促した結果のようです。このこと自体が敗北の原因ではないと私は思いますが、IT産業が東芝陣営に結果集まったことは、決してプラスではなかったことは確かなようです。
一般的に今回の勝敗を決めたのは、ハリウッドの映画会社をどれだけ押さえられたかであり、最終的に1月のワーナーブラザースの、HD-DVD陣営からの脱退ブルーレイ支持が、東芝に引導を渡したと言われています。では、ワーナーはなぜHD-DVDを切ったのでしょうか。
どの映画会社も、商品の一本化は製作コスト面から考えてぜひとも望むところだったでしょう。そして、当初は現DVDプレイヤーとの互換性、ソフト制作コストの低価格化が可能である点などから、HD-DVD優位と伝えられていました。
水面下の転機は、ソニーのトップ交代だったと個人的には思っています。両陣営の規格統一折衝が決裂した05年にハワード=ストリンガー氏がソニーCEOに就任し、ブルーレイはストリンガー人脈を使ったハリウッド攻略に打って出たと聞いています。ディスクの記憶容量等性能で勝るブルーレイですが、過去のビデオ対決で画質で勝りサイズでもコンパクトだった「β」を持ってして、敗れた記憶も未だ生々しいソニーのこと、絶対に二の舞は踏むまいと考えたに違いありません。
ソニーが「β」での敗戦から学んだことは、商品の高性能アピールよりもソフトの大量流通経路を押さえろということ。すなわち当時、雨後の竹の子のように増殖を続けていたビデオレンタルをいち早く抑えたVHSが、高性能の「β」を抑えて勝利を手中にしたことを教訓とすることでした。そして今回、ストリンガーCEOは、元CBSテレビ出身の豊富な米国映画界人脈を駆使して、ビデオレンタルよりもさらに川上である米ハリウッドを抑えにまわり、驚異の引き込み作戦を展開したのでした。
一部ではハリウッドの大手映画配給会社がブルーレイを選んだ大きな理由は、IT配信に対する著作権上の懸念があったようにも言われています。すなわち、はじめに書いたようにブルーレイ陣営は家電チーム、対するHD-DVD陣営は結果ITチームとなってしまい、ハリウッドはITで情報を垂れ流さず、家電としての光ディスク主流イメージの家電陣営により好感を持ったのではないか、という推測。この話、なかなか説得力ありますね。
このような状況が水面下で着々と進行する中、ブルーレイ陣営は、昨年後半から機器の早期市場投入で機先を制し、ブルーレイの優位イメージを戦略的に作り上げる戦術を打って出ました。そしてこれが大成功。年末商戦の雌雄が決した年明け1月、ついに映画ソフト配給最大手のワーナーがストリンガー氏のラブコールに応え、ブルーレイ一本化を決めるに至って、決戦の勝敗は意外に早く決したのでした。
余談ですが、東芝の今回の決断は本当に早かった(正式発表はまだですが)。やはり高度成長の時代とは違う現状の経営環境の中、決して順調とは言い難い東芝家電部門において「キズが深くならないうち」の早期撤退を判断したのでしょう。そして株主重視の経営という現代の風潮も、決断を急がせた大きな要因であると思われます。無用なコストが垂れ流し状態になる争いの長期化は、株主代表訴訟の対象になりかねないとの判断があるのは確実です。
さて今回の一件は、ビジネスにおける沢山の鉄則の中から3つのことを印象的に教えてくれました。
ひとつは、「ビジネスは、より源流を抑えたものが勝利に近づく」ということ。
ふたつ目は、「ビジネスは、あらゆるイメージ戦略が大切である」ということ。
三つ目は、「ビジネスは、商品の価格や性能だけでなく人脈の有無が大きくものを言う」ということ。
あらゆるビジネスにおいて源流を探る探究心を持つこと、自分の見せ方も含めどんな場面でもイメージ戦略を忘れないこと、ヒマがあったらコツコツ人脈をつくること。ビジネス・パーソンは、今回改めて学んだこれらの鉄則を肝に銘じてがんばりましょう!