日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ19 ~ 中小企業も注目!「内部統制」の重要性

2008-02-12 | 経営
ご無沙汰してます〈経営のトリセツ〉です。

J-SOX法なる法律をご存知でしょうか?正式名称を「金融商品取引法」といい、ライブドアやカネボウ、西武鉄道などの粉飾や虚偽発表事件を受けて、投資家保護を目的に上場企業の虚偽のない経営情報開示を義務づけるべく定められた法律です。米国の同様の法律「サーベンス=オクスリー法(SOX法)」になぞらえて、一般的にこの名で呼ばれています。

「上場企業対象だから、中小企業には関係ないじゃん」とお思いの方、実はその認識は大きな間違いなのです。この法で目指すところは、「ウソやインチキ、違反、ごまかしなどのない企業経営」であり、その意味ではまさにコンプライアンス経営の実現そのものだからです。

それともうひとつ、上場企業に義務づけられたということは、下請けや取引先にも同様の考え方での企業経営を求められていく流れは避けられないものであり、言わば企業経営の考え方のディフェクト・スタンダードになる可能性が高いと言えるのです。

もちろん、中小企業が上場企業と同じ基準で社内整備をしなくてはいけないということを言っているのではありません。ただ、基本の考え方を理解し、経営者が率先して範を示しつつ社内改革を進めることが肝要であると思われるのです。

では、J-SOX法の基本的な考え方って何でしょうか?一言で言うとそれは「内部統制」の構築です。「内部統制」?英語の「インターナル・コントロール」をそのまま直訳しただけの言葉で、至って抽象的で分かりにくいですね。噛み砕いて言うと、「インチキやズルや、さらには違反や犯罪ができないような社内業務体制づくりをする」ことなのです。

対象は社長、役員を含む全社員の全業務プロセス。「えっ?社長も?」とお思いの方もあるかもしれませんが、社長が一番悪いことができる環境にあるのです。社長はすべての権限を握っている立場であり、社長の行動を監視しなければ、内部統制は成立しないのです。

次に「内部統制」とは、具体的に何をすればいいのかですが…
まずすべきことは、すべての業務プロセスの「見える化」です。すべての仕事を白日の下にさらすことで、悪いことや間違ったことをしたら、すぐに分かるようなシステムを作り上げるのです。

どんな組織でも、仕事が人に貼り付いて長く時間が経過すると、その仕事はその人以外何をどうやっているのか分からなくなり、仮に悪いことをしても全く誰も気がつかない、という事態に陥ってしまうのです。そうならないための対策でもあるのが、「業務の見える化」なのです。

次に業務の見える化ができると、他にどんなメリットがあるのかですが…
まずは、業務の無駄が見えやすくなります。第三者が、見えるようになった業務フローの無駄を指摘したり、他の担当者や他のセクションとのダブりを見つけやすくもなります。そして業務プロセスが見えることで、再鑑などのチェックポイントも明確になりますから、相互牽制も働き「事故」の防止にもつながるのです。

こうして見てくると、内部統制は「コンプライアンス経営」そのものであり、また「見える化」そのものであり、まさに今の企業がその規模の大小を問わず求められていること、やるべきことを凝縮したものであると、お分かりいただけると思います。

中小企業の経営者の方も、J-SOX法の基本的理念と「内部統制」の考え方をぜひかじっていただきたいと思います。「内部統制」につきましては、折を見てまたお話させてもらいます。