年末に「ドコモとiPhone」というエントリで、ドコモがiPhoneを扱いたくても扱えない理由を3点挙げて「当面ドコモのiPhone取り扱いはない」と結論付けて1ヶ月もたたぬうちに恐縮ですが、ここ数日の報道を見るに今年中のドコモのiPhone取り扱いが俄然現実味を帯びてきたと感じさせられています。
◆「ドコモとiPhone」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/54c0a996b1b290728ee9cc884cdb39c0
当面、次のモデルチェンジぐらいまでは磐石ではないかと思えていたiPhone、iPadの販売における急速な減速感がその理由のすべてです。日経新聞16日の記事、「アップル、市場期待冷める」によれば、「アップル向け液晶パネル大手が1~3月の生産量を当初計画の半分程度の減らすことが明らかになり、14日の米株式市場でアップルの株価が急落」したと。株価は昨年秋の700ドルから一時500ドルを割り込むところまで下げたというのだから、投資家の同社の成長性に対する評価はかなり急降下したと言っていいと思います。
◆ 日経新聞「アップル、市場期待冷める」
http://www.nikkei.com/article/DGXDASGM1507H_V10C13A1FF2000/
むしろ衝撃性でこのニュースを上回ったのは、その前日15日の同じ日経新聞の記事、「タブレット商戦、米グーグルがアップル逆転」でしょう。この記事によれば、「年末商戦の国内タブレット市場で、米グーグル「ネクサス」のシェアが米アップル「iPad」を初めて上回った」と。販売台数シェアで、台湾エイスースが44.4%、アップルは40.1%とのことで、iPadは発売以来初めて首位の座を明け渡したというのです。
◆ 日経新聞「タブレット商戦 米グーグルがアップル逆転」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC1600T_W3A110C1TJ0000/
これで即座にアップルが一気の劣勢に転じるとは思いませんが、市場の潮目が確実に変わってきていることだけは確かなようです。恐らくそれを一番敏感にかつ危機感をもって受け止めているのはアップル自身でしょう。次のモデルチェンジが大きな節目になる可能性もあり、製品開発だけでなくあらゆる点で戦略の転換を検討しリスクの極小化に動き始めているのではないかと思われます。
こと販売という点に関して言うなら、日本市場におけるアップルの販売戦略にも変化があってもおかしくありません。すなわち、対ドコモ戦略です。従来は総販売台数の50%近いシェアをノルマとして要求してきたと言われる強気一辺倒のアップルの姿勢でしたが、勢いの低下は事実であり商品差別化力に陰りを感じるならシェアにこだわらずともまず膨大なドコモの顧客の一部取り込みからスタートするという戦術に転換をしてくることも、大いに考えられるのではないかと思うのです。
ドコモ側の考えうるiPhone取り扱いに向けたネックは、年末に私が書いたとおり、①既存のコンテンツサービス維持、②アップル製品に市場を席巻される電波行政面での懸念、③ドコモと二人三脚でガラケービジネスモデルを支えてきた大手家電各社の擁護、です。しかしこのいずれもが、アップル側が提示する高い販売シェアノルマにかかわるものであり、そのシェアが交渉によって引き下げる余地が生まれるのなら、俄然ドコモのiPhone取り扱いは現実味を帯びてくるでしょう。
では、どのくらいの販売シェアノルマまで下がるならドコモは取り扱いにGOを出すのかです。ランチェスター戦略にけるシェアの考え方から探ってみます。有名な目安数値に42%というのがあります。これは特定の市場において「独走」を決定付ける数値であり、アップルはこれまで戦略的に考えてこの42%を上回る販売シェアノルマを提示し、ドコモの携帯販売においても独走を実現しようと目論んでいたに違いありません。ドコモ側(および大株主の日本政府側)とするなら、この42%は最低でも下回らなくては話にならないわけで、これまでの交渉がたびたび決裂してきた理由はここにあります。
42%の次にある目安数値は、26%。これは市場争いをする際に言われる「強者」を決定付ける数値です。すなわちiPhoneが販売ノルマで26%以上のシェアを持つなら、ドコモの全製品内で「強者」に位置づけられることは確実であり、ドコモや日本政府の思惑からすればこの数値も上回ることは好ましくないはずなのです。
さらにその次は、19%と11%です。19%は市場における上位グループの目安、11%は市場に影響を与える存在の目安数値です。すなわち、少しアバウトに言うなら10~20%あたりが「存在感がありながらも強い存在にはあと一歩」といった市場シェアになります。ここらあたりがドコモや日本政府的には、どうにか納得でアップルと握手できる限界点ではないのかと考えられるところです。問題はアップルがこの数値をどう考えるかです。現実的には恐らく20~25%ぐらいが両者の攻防ラインになるのではないかと考えます。
ドコモがアップルとの交渉を継続していることは確実であり、これまでは隔たりが大きかった両者の主張ですが、シェアの面でアップル側からの歩み寄りが見られるなら、一気に交渉成立ということもありうる展開だろうと思います。ドコモもiPhoneの勢いが落ちているとはいえ、今年度の業績下方修正を受けて迎える加藤体制にとって2年目の来年度は正念場。販売台数、ナンバーポータブル大幅増加が見込めるiPhoneは製品の勢いは落ちていようとも確実に欲しいアイテムではあります。一方のアップルもジョブズ後の新製品開発力の低下が否めない中での減速で、販売戦略の強化は至上命題でもあります。
両者の思惑の変化による歩み寄りも現実味を帯び、秋のiPhone5S(?)からのドコモ取り扱いの可能性はゼロから五分五分までは高まってきたとみていいでしょう。秋からの取り扱いを前提で考えるなら、来年度入り前の2~3月が交渉のヤマ場になるのではないでしょうか。両社の動向を注目して追いかけたいと思います。
◆「ドコモとiPhone」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/54c0a996b1b290728ee9cc884cdb39c0
当面、次のモデルチェンジぐらいまでは磐石ではないかと思えていたiPhone、iPadの販売における急速な減速感がその理由のすべてです。日経新聞16日の記事、「アップル、市場期待冷める」によれば、「アップル向け液晶パネル大手が1~3月の生産量を当初計画の半分程度の減らすことが明らかになり、14日の米株式市場でアップルの株価が急落」したと。株価は昨年秋の700ドルから一時500ドルを割り込むところまで下げたというのだから、投資家の同社の成長性に対する評価はかなり急降下したと言っていいと思います。
◆ 日経新聞「アップル、市場期待冷める」
http://www.nikkei.com/article/DGXDASGM1507H_V10C13A1FF2000/
むしろ衝撃性でこのニュースを上回ったのは、その前日15日の同じ日経新聞の記事、「タブレット商戦、米グーグルがアップル逆転」でしょう。この記事によれば、「年末商戦の国内タブレット市場で、米グーグル「ネクサス」のシェアが米アップル「iPad」を初めて上回った」と。販売台数シェアで、台湾エイスースが44.4%、アップルは40.1%とのことで、iPadは発売以来初めて首位の座を明け渡したというのです。
◆ 日経新聞「タブレット商戦 米グーグルがアップル逆転」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC1600T_W3A110C1TJ0000/
これで即座にアップルが一気の劣勢に転じるとは思いませんが、市場の潮目が確実に変わってきていることだけは確かなようです。恐らくそれを一番敏感にかつ危機感をもって受け止めているのはアップル自身でしょう。次のモデルチェンジが大きな節目になる可能性もあり、製品開発だけでなくあらゆる点で戦略の転換を検討しリスクの極小化に動き始めているのではないかと思われます。
こと販売という点に関して言うなら、日本市場におけるアップルの販売戦略にも変化があってもおかしくありません。すなわち、対ドコモ戦略です。従来は総販売台数の50%近いシェアをノルマとして要求してきたと言われる強気一辺倒のアップルの姿勢でしたが、勢いの低下は事実であり商品差別化力に陰りを感じるならシェアにこだわらずともまず膨大なドコモの顧客の一部取り込みからスタートするという戦術に転換をしてくることも、大いに考えられるのではないかと思うのです。
ドコモ側の考えうるiPhone取り扱いに向けたネックは、年末に私が書いたとおり、①既存のコンテンツサービス維持、②アップル製品に市場を席巻される電波行政面での懸念、③ドコモと二人三脚でガラケービジネスモデルを支えてきた大手家電各社の擁護、です。しかしこのいずれもが、アップル側が提示する高い販売シェアノルマにかかわるものであり、そのシェアが交渉によって引き下げる余地が生まれるのなら、俄然ドコモのiPhone取り扱いは現実味を帯びてくるでしょう。
では、どのくらいの販売シェアノルマまで下がるならドコモは取り扱いにGOを出すのかです。ランチェスター戦略にけるシェアの考え方から探ってみます。有名な目安数値に42%というのがあります。これは特定の市場において「独走」を決定付ける数値であり、アップルはこれまで戦略的に考えてこの42%を上回る販売シェアノルマを提示し、ドコモの携帯販売においても独走を実現しようと目論んでいたに違いありません。ドコモ側(および大株主の日本政府側)とするなら、この42%は最低でも下回らなくては話にならないわけで、これまでの交渉がたびたび決裂してきた理由はここにあります。
42%の次にある目安数値は、26%。これは市場争いをする際に言われる「強者」を決定付ける数値です。すなわちiPhoneが販売ノルマで26%以上のシェアを持つなら、ドコモの全製品内で「強者」に位置づけられることは確実であり、ドコモや日本政府の思惑からすればこの数値も上回ることは好ましくないはずなのです。
さらにその次は、19%と11%です。19%は市場における上位グループの目安、11%は市場に影響を与える存在の目安数値です。すなわち、少しアバウトに言うなら10~20%あたりが「存在感がありながらも強い存在にはあと一歩」といった市場シェアになります。ここらあたりがドコモや日本政府的には、どうにか納得でアップルと握手できる限界点ではないのかと考えられるところです。問題はアップルがこの数値をどう考えるかです。現実的には恐らく20~25%ぐらいが両者の攻防ラインになるのではないかと考えます。
ドコモがアップルとの交渉を継続していることは確実であり、これまでは隔たりが大きかった両者の主張ですが、シェアの面でアップル側からの歩み寄りが見られるなら、一気に交渉成立ということもありうる展開だろうと思います。ドコモもiPhoneの勢いが落ちているとはいえ、今年度の業績下方修正を受けて迎える加藤体制にとって2年目の来年度は正念場。販売台数、ナンバーポータブル大幅増加が見込めるiPhoneは製品の勢いは落ちていようとも確実に欲しいアイテムではあります。一方のアップルもジョブズ後の新製品開発力の低下が否めない中での減速で、販売戦略の強化は至上命題でもあります。
両者の思惑の変化による歩み寄りも現実味を帯び、秋のiPhone5S(?)からのドコモ取り扱いの可能性はゼロから五分五分までは高まってきたとみていいでしょう。秋からの取り扱いを前提で考えるなら、来年度入り前の2~3月が交渉のヤマ場になるのではないでしょうか。両社の動向を注目して追いかけたいと思います。
アップルは多少市場が冷めたからと言って、条件を引き下げるような会社じゃありません。ねーよ。