日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100枚〉№37 ~ 元祖“B 級”「大衆性≒ダサさ」の真骨頂

2008-08-30 | 洋楽
70年代に登場しその後も世間からは長く愛されながらも、評論家や専門家には間違いなく軽視されているアーティストがいます。その代表格がKISSでしょう。

№37    「ダブル・プラチナム/KISS」

KISSの日本上陸はかなり衝撃的でした。歌舞伎まがいのフルメイクと、後のヘビメタにも影響を与えたであろう独自のコスチューム。後年の評価としてダサイかどうかは別にして、明らかに時代を代表するひとつの象徴であったことは間違いありません。

日本でのデビューは、彼らの3枚目「地獄への接吻」。「ロックンロール・オールナイト」「激しい愛を」が盛んにオンエアされて話題を集めました。ちなみにジャケット写真は、ボブ・グルーエン。やや芸術的な渋いモノクロで、今思うとスーツ姿の4人は“ダサさ”がウリの彼らには妙に不釣り合いでした。そして、この直後リリースされた、初のライブ盤75年の「ALIVE!」が大ヒット。火を噴いたり、血のりを吐いたりするステージの人気とあいまって、その快進撃が始まります。

「ALIVE!」の後、「地獄の軍団」「地獄のロック・ファイヤー」「ラヴ・ガン」と、ダサいジャケットとダサいタイトルのアルバムが次々大ヒット。「デトロイト・ロック・シティ」「ハード・ラック・ウーマン」「ラヴ・ガン」などの全米ヒットを連発しました。と言う訳で、代表作を選ぶとなると「ALIVE!」の迫力は捨てがたいものの、楽曲的にはその後の3枚がそれぞれ充実作で甲乙つけ難し。と言う訳で、彼らはやはりベスト盤で聞くのが一番ということに落ち着きます。

本アルバム「ダブル・プラチナム」は78年リリースのベスト盤で、デビューから77年の「ラヴ・ガン」までの代表曲を2枚組に詰め込んだ当時の決定版だった訳です。タイトルからして、当時の彼らの人気ぶりとその自信のほどがうかがえると思います。それにしてもこのピカピカの銀色ジャケット、「B級」的でかなりダサイです。

個人的には、KISSと言えばC4「デトロイト・ロック・シティ」。高校時代そのストレートなロックっぽさにしびれていたものです。ソフトなボーカルを担当するドラムのピーター・クリスが歌うアコースティックなA3「ハード・ラック・ウーマン」やバラードのD4「ベス」は、彼らの音楽的懐の深さをうかがわせる名曲です。そしてやはり、C6「ロックンロール・オールナイト」は彼らのテーマ曲といった感じですね。他にも佳曲満載。高級感はゼロですがこのベスト盤を聞けば、彼らが意外なほどのメロディ・メーカーであることがお分かりいただけると思います。

彼らの初来日公演を放映したNHK「ヤング・ミュージック・ショー」は、今だに当時のロック小僧たちの伝説。数年前に「NHKアーカイブス」で再放送され、大変な反響になってもいました。KISSって実はロックの「B級」分類を確立し大衆に広めた点で、大変な功労者じゃないのかって思います。

ちなみに、KISSを露骨にマネをしてデビューしたのがあのデーモン閣下率いる「聖飢魔II」。同じようなメイクに身を包み、加えてメンバープロフィールに架空の物語をかぶせるというKISSの上をいくダサさは、KISSが「B級」なら、聖飢魔IIはさしづめ“D級”ってところですかね。さらに言えば、X-JAPANのメイクやコスチュームだって、KISSなくしては存在し得なかったと思います。

ルックスの派手さや音楽の明快さが、かえって評価面ではマイナスに働いていると思しきKISSですが、「B級」化を武器にロックを大衆化した功績ははかり知れません。同じ70年代当時ミーハー的と専門家から揶揄され低く見られていたグラム・ロックでさえ、今や「後世に多大なる影響を残した音楽スタイル」として高く評価されています。音楽評論家はじめ専門家の皆さん、今になってかっこつけて「あの当時、誰も聞いちゃいねーだろ!」的な“玄人好み”なモノばかり取り上げていないで、そろそろKISSあたりもちゃんと再評価した方がいいと思いますよ。

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