日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ10 ~ 日ハムに学ぶチーム力向上の鍵

2007-10-25 | 経営
今週末からいよいよプロ野球日本シリーズがスタートします。

シリーズ開幕を前に、以前お約束した、日ハムの強いチームづくりの秘密とその陰の立役者について、組織管理の観点からみてみたいと思います。

日本ハムファイターズの監督は、ご存知アメリカ人のヒルマン氏。彼の卓越した管理&指導力の元確立された鉄壁のチームワークが、2年連続優勝の栄光に導いたと言って間違いないと思います。
現に今年の日ハムは、選手の粒が小さく、スター新庄、大砲小笠原が抜けた穴は誰の目にも致命的に映ったハズです。

「よくこのメンバーで勝てるね。と言われることが一番うれしい」。選手自身がそう語ることに象徴されるように、彼らの自慢はそのチーム力、すなわちチームワークです。昨年の大躍進をみても、もともと地味なチームカラーに、突然現れたスター新庄にかき回されることなく、彼のような抜けたスター性を持つ選手までも浮かせることなく、一層の力にしてしまうのは、ひとえにチーム力あってこそと言えるのではないでしょうか。

チームワーク、チーム力の向上は、選手の力だけでできるものでは決してありません。また、仮にいかに優秀なトップであっても、一人卓越した監督の力だけでできるものでもありません。以前この「経営のトリセツ」でも書きましたが、チーム力=組織力向上の鍵は、トップとは別の、メンバーを代表する指導者の存在なのです。

ヒルマン日ハムにおいて、その役割を果たしたものは白井一幸ヘッドコーチその人でした。
白井氏は、現役時代は地味ながら味のある名二塁手として活躍しました。その後フロント入りして、米ヤンキースに指導者留学し、そこでヒルマン氏と巡り合いました。日本に戻って二軍監督を務め、その後のヘッドコーチ就任要請とチーム指導陣再編の動きに呼応して、次期監督にヒルマン氏を推薦したのが、彼だったのです。

彼はヒルマン氏の指導者としての技量や人柄の素晴らしさを知り尽くし、監督と選手の間に立って、監督の考えをしっかりと全員に伝え、また監督には選手の気持ちを代弁して、事細かにあらゆる情報を吸い上げては監督に進言をしてきたそうです。
一例をあげれば、チームが選手の精神的リラックスを目的として、球場のクラブハウスに卓球台を買った話は有名ですが、これを球団経費でなくヒルマン監督のポケット・マネーで買わせたのは、彼の進言によるものとのことです。

彼はナンバー2としてだけでなく、直接の選手育成者としても素晴らしい理論を持っています。選手の気持ちに立って、ミスを単純に叱責するようなことはせず、いかにして持てる能力を発揮させるかを精神面重視の指導方法として確立しました。
彼の指導理論は、「メンタル・コーチング」として、出版されてもいます。部下育成という難問に、ビジネスの現場で悩む管理職の皆さんにも、大いに役立つ一冊ではないでしょうか。

部下の指導者として、またメンバーの意見を代表できるナンバー2としての白井ヘッドコーチの存在なくして、抜けた存在のスター選手新庄のチームへの融和も、大砲小笠原の移籍をものともしないチームの結束も、そして誰もが予測しえなかった2年連続のリーグ優勝もありえなかったでしょう。

先のロッテとのCSシリーズ優勝決定の瞬間、ヒルマン監督が真っ先に抱き合って優勝の喜びを分かち合ったスタッフは、やはり白井一幸その人でした。

ヒルマン監督の勇退に伴い、白井ヘッドも退任が予定されています。来年以降の日ハムが、今までのようなチーム力を保ち、引き続き強い日ハムの勇姿を見せてくれるのかとても不安です。おそらくチームにとっては、白井ヘッドの退任は新庄や小笠原の脱退とは比べものにならないダメージなのではないでしょうか。

土曜日からの日本シリーズ、残念ながら、我が日本ハムの対戦相手は宿敵巨人ではなく中日ドラゴンズですが、中継でも時折映るであろうベンチの風景に、最高の「番頭さん」白井ヘッドの姿をしっかりとこの目に焼き付けておきたいと思います。


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