日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方20」~パワーポップ3

2010-08-22 | 洋楽
パワーポップ3回目はそのルーツを今一度検証しておきます。

「パワーポップとはどこから来たか?」なのですが、やはりその最大のルーツはポール・マッカートニーにあると思っています。「ポップ=分かりやすいメロディライン」と定義するなら、60年代において彼ほど「分かりやすい=ポップ」な曲を多数世に出したアーティストは他にいないのです。その作風が確立された転換期はビートルズ時代の名作アルバム「サージェント・ペパーズ・・・」にあると思われます。同アルバム収録の「ラブリー・リタ」「ゲッティング・ベター」「ウェン・アイム・シックスティフォー」等は、前作までのビートルズ・ナンバーにはないジョンの匂いがしない実にポールらしい楽曲であり、それまでのジョンとポール2人の相互作用的合作イメージのビートルズ・ナンバーは、ジョンとポールの明確なカラーが打ち出され明らかに2極化の方向に歩き始めたのです。個々の単独創作活動がメインになるにつれ、ジョンはよりロック、ブルーズ寄りの曲作りをするようになり、ポールはそれまで以上に“ポップ”な曲を多数輩出することになります。この時期以降のポールの作風こそが、パワーポップのルーツであると思えるのです。

では“パワーポップの創始者”としてのポールの70年代はどうだったのでしょう。70年の「アナザー・ディ」に始まり、ウイングス結成後の「アイルランドに平和を」「ハイ、ハイ、ハイ」「ジェット」「バンド・オン・ザ・ラン」「ジュニアーズ・ファーム」「あの娘におせっかい」「ヴィーナス&マース~ロック・ショウ」「心のラブ・ソング」「幸せの予感」「ゲッティング・クローサー」・・・思いつくだけでもこんなにたくさんのパワーポップ・ナンバーをシングルとしてリリースしているのです。中でもこれぞと言えるのは、「ジュニアーズ・ファーム」と「ゲッティング・クローサー」(共に完璧なB級感覚たまりません)。本家本元のパワーポップここにありといった感じです。これらが、最も分かりやすいパワーポップ的なナンバーなのですが、「マイ・ラブ」や「死ぬのは奴らだ」といった彼の代表曲も、安っぽさが薄い分一見パワーポップ的ではないのですが、そのメロディラインの分かり易からは十分パワーポップの延長線上にある楽曲であると言っていいでしょう。

ポール・マッカトニー直系で忘れてならないのは、ジェフ・リン率いるエレクトリック・ライト・オーケストラ(通称ELO)でしょう。ジェフ・リンがロイ・ウッドとバンドを結成した当初は、弦楽を3人を含む本格シンフォニック・ロックでのスタートであり、組曲を中心としたプログレ的な色合いも強くおよそパワーポップとは縁遠い存在でした。そんなバンドの歴史もあって、彼らがパワーポップに分類されることはあまりないのですが、ジェフ・リンはこれ以上ないというほどのマッカトニー・フリークであり、76年のアルバム「オーロラの救世主」以降のELOは完璧なパワーポップであると言っていいと思います。特に大ヒットナンバー「テレフォン・ライン」は、売れていた当時は「70年代にビートルズが存在したらこんな曲をやっていたに違いない」と言われていましたし、「ターン・トゥ・ストーン」「ミスター・ブルー・スカイ」「コンフュージョン」などのヒット曲は、まさしくマッカトニー路線の佳曲であります。ジェフ・リンはその後、ジョージ・ハリスンのプロデュースを皮切りにビートルズ・アンソロジー・プロジェクトのアレンジャーに指名され、名実ともにビートルズの“公式フォロワー”となっています。そんなジェフの作品はポール直系正真正銘のパワーポップに相違ないのです。


<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~パワーポップ3>
★パワーポップを正しく知るアルバム★
1.「ウイングスパン/ポール・マッカートニー」
ポールの2枚組ベストアルバム。はやりポールと言えどもパワーポップはベスト盤に限るのです。CDは1枚目が「ヒッツ」2枚目が「ヒストリー」で、大ヒットナンバーと隠れた佳曲がそれぞれ1枚のCDに収められ全編パワーポップ満載の2枚組です。本文で取り上げた「アイルランドに平和を」「ゲッティング・クローサー」は残念ながら未収録ですので、こちらはそれぞれオリジナルアルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ(ボーナス・トラック収録です)」「バック・トゥ・ジ・エッグ」で聞く以外にないようです(後者はituneストアではこの曲のみ単品でダウンロード可です)。

2.「グレイテスト・ヒッツ/ELO」
私自身はどうしてもコンセプトがしっかりしたオリジナル・ベストアルバムにこだわりがあるのでここではそれをあげましたが、これは前期ヒットナンバー11曲の収録なので複数出ている全キャリアを通じてのベスト盤の方が初心者的には楽しめるかもしれません(ドラマ「電車男」の主題歌「トワイライト」も収録されています)。ELOの楽曲はどれも確かに重みには欠けているのですが、このB級感覚路線こそが正統派パワーポップの真骨頂でもある訳です。そのB級っぽさに好き嫌いは別れることろでしょうが、ジェフ・リンの創作能力の高さには感心させられるハズです。

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