日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

問題はベネッセよりもジャストシステムにあり、と思われる件

2014-07-11 | 経営
ベネッセコーポレーションから顧客情報760万件が流失した一件、利用者の立場からはベネッセの情報管理はどうなっているのかという怒りの言葉が出るのは当然であり、ベネッセは被害者でありながらもこの点から責めを負うべき立場にあるのは論を待たないところです。

しかしこの事件の概要を知るにつけ、私がもっとも大きな問題ありと感じているのは、被害者であるベネッセよりもむしろその漏えい情報を購入してDMを打っていたジャストシステムの方です。ジャストシステムは、「スマイルゼミの拡販DMに利用する小中学生のリストが欲しい」と武蔵野市の名簿業者に依頼しこの漏えい情報230万件を入手し、実際にDMを実施します。そのことがベネッセの利用者の不審を買い、今回の事件発覚の大きなきっかけになったと言います。

ジャストシステムと言えば、ワープロソフト「一太郎」やかな漢字変換ソフト「ATOK」で知られる東証1部上場企業です。「一太郎」は90年代に一世を風靡したものの、その後はマイクロソフトの「Word」に押される形で苦境に陥り、キーエンスの傘下に入ることで近年は教育分野に事業を広げ業績は急回復していました。その教育分野で特に目覚ましい伸びをみせていたのが、小学生向けタブレット通信教育システム「スマイルゼミ」であり、今回の漏えい個人情報もこの商品の拡販に利用されたのです。

もちろん、法的には「違法に流失した個人情報とは知らずに購入した」のであるなら、ジャストシステム側に違法性はないことにはなりますし、同社はそのようにHP上で公言してもいます。しかし、230万件もの大量の小中学生情報が名簿業者から提示された際に、「この情報に違法性はないのか」と思うのは企業としての常識的な判断であり、少なくとも名簿情報の出所についての合法性の確認をとった上で購入を決めるのは当然のこと。一部上場企業が、もしもそんなコンプライアンス意識もなく行動していたとしたら呆れる他ありません。

もちろん、個人的にはジャストシステムは違法性のある名簿情報と分かった上で購入していたと思っています。もっと言えば、ベネッセの利用者の顧客情報であるという情報を得ていたからこそ、この230万件もの名簿情報を多額のコストを払ってでも購入したのではないかという確信犯ですらないのかと思えています。だいたいが、仮に合法的なやり方であったとしても、個人情報保護法下で名簿業者から大量の個人情報を購入してそれを元にDMをうつなどというのは上場企業のあるべき経営モラルから見ていかがなものか、と思えてしまうのですが、いかがでしょう。

いずれにしましても、ジャストシステムは早急に記者会見を開いて、疑惑に対してそのいきさつの詳細等を明らかにする説明責任があると考えます。仮に本当に情報の出所について知らなかったとしても、ライバル企業の個人情報御使ってDMを実施していたことは曲げようのない事実であり、HP上でひと言のお詫びもなく「うちへの疑惑はお門違い」的なコメントだけで済まそうと言うのは、危機管理広報としても完全に間違った判断であると断言できます。

ジャストシステムは、株価が昨日ストップ安を付けたと言う市場の反応を重く受け止めて、この一件は真摯な対応をとらなければ企業の存続すら危うくする事態であると一刻も早く気がつくべきでしょう。

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1 コメント

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そうなのか? (ゆきちゃん)
2014-07-12 21:43:47
この問題には、大きく3つの問題があると思います。
1.ベネッセの個人情報の管理体制
2.個人情報が売買されるという仕組み
3.買い手の事前確認はどうだったのか

明らかに問題になっているのは1と2。
3はまだ見えないため、説明責任はあると思う。ただ、3つの問題はそれぞれ土俵が違いどっちが悪いと比較できるものではない。
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