日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

米誌「ドコモが近々iPhone導入」報道は、日本を知らない他国民的予測

2013-02-18 | 経営
先週末近くから、拙ブログの過去エントリへのアクセスが急増しました。特にBLOGOSさんへの転載分では、一日で7~8万PVを記録する勢いになっていたようでした。これは、米ウォールストリート・ジャーナル系の雑誌「バロンズ」電子版が、NTTドコモから米アップルのiPhoneが今年6~7月にも発売されるだろうという記事を、ドコモウオッチャー・アナリストのコメントを引用して掲載。これを報じたいろいろな国内記事に、ドコモのiPhone導入障壁説明として拙エントリへのリンクを貼っていただいたことによるもののようです。どうやら拙ブログが、「ドコモは簡単にはiPhoneを導入できない」という言い出しっぺのような扱いを受けているようなので、今回の「バロンズ」の報道に関して一応コメントをしておこうと思います。
◆「“一人負け”ドコモが、それでもiPhoneを導入できない理由」
http://blogos.com/article/50115/
◆ドコモとiPhone(今年の企業総括その1)
http://blogos.com/article/53077/

私も確かに年明けに、iPhoneの生産ピッチのダウンとアップルのタブレット市場における首位陥落記事を受けて、「ドコモがiPhoneを扱う確率が五分五分まで高まった」と書きました。しかし、その後の国内大手家電・IT機器メーカーの決算見通しにおける苦戦ぶりを見るに、やはり今は難しい。「バロンズ」誌の言う「アイフォーン(iPhone)」が今年6~7月にも発売」はないと、現時点では私は再び思っています。状況はまた昨年秋ぐらいにまで戻ったかなという感じです。

何と言っても富士通の業績予想赤字転落はドコモにとっても、いやNTTグループの大株主である政府財務省にとっても、大きな衝撃であったと思います。富士通はドコモにとっては一の同志であり、富士通の協力なくして今のガラパゴス携帯ビジネス構築はなしえなかったわけです。しかも、現在でも富士通は「らくらくホン」の独占製造等ドコモとの固い絆に守られて、国内携帯製造のトップの座を死守しているとも聞いています。

既にひん死のシャープをはじめ、NEC、ソニーとドコモを支える家電・IT機器製造各社の不調に加え、iPhone導入後もなんとか携帯事業存続可能と思われた富士通の赤字転落は想定外の事態であり、これによって“国策会社”NTTグループのドコモは、近い時点でのiPhone導入から大きく後退を余儀なくされたのではないかと思っています。

今国内はようやくデフレ不況の長いトンネルから抜け出せるかもしれないという重要な局面に立っており、さらにNTTグループの大株主財務省には来年春の消費増税実施という至上命題があるわけで、増税実施の可否を決めるこの秋までの間に景気の腰折れ要因となるような事態は、絶対に避けなくてはいけないからです。ドコモのiPhone導入による国内大手家電・IT機器メーカー各社の携帯事業へのマイナス効果は、単に携帯事業のみにとどまるものではありません。本体の決算を大きく左右しそれが日本経済に再び暗い影を落とすことは、回復基調になりつつある景気の腰折れに直結するわけなのですから、大手各社の決算はこの問題に大きな影響力を持っているのです。これは今夏に参院選を控える政府自民党にとってもゆゆしき問題なのです。

ではドコモがiPhoneを扱う可能性が再び上昇するとすればいつなのか。「バロンズ」誌の言う6~7月ではなく、夏の参院選後でかつ我が国が消費増税の実施を決めた後、早くて今秋以降。「バロンズ」誌の言うように6~7月にiPhone5Sが出るというのなら、タイミングはそこではなくその次となるiPhone6が最短なのではないかと思われます。もし景気の回復が遅れ、今秋に消費増税延期が決定するような事態になるのなら、ドコモのiPhone導入はさらに先送りとなる可能性も強くなるでしょう。

さらに言うなら、その間にジョブズ後のアップルが“次の一手”を打てずにiPhoneの市場占有力が弱まるなら、ドコモは永久にiPhoneを扱わずに終わるということも十分考えられるのではないでしょうか。

iPhoneが今年6~7月にも発売されるだろうという記事が「バロンズ」誌に引用されたドコモ・ウオゥッチャーのアナリストは、企業分析においては確かに超一流のプロなのかもしれませんが、知らぬ他国である日本独特の「官僚」組織と“国策企業”の深い関係にはやや疎いのではないかと思っています。

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