日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

本田直之~近刊本3冊

2010-04-23 | ブックレビュー
レバレッジ・シリーズ本田直之氏の近刊本が続々発刊されています。発刊というより“発汗”と言うイメージ?ホント、勝間和代氏とタメを張るようなペースで、まるで「稼げるときに稼げるだけ稼げ!」という感じがします。個人的には現在あまり関心はないのですが、人気沸騰のようなので一応取り上げておきます。採点はしません。


●「たった3つのクセを直せば人生がうまくいく/本田 直之(中経出版1,050円)」

書いていることは、いいことです。噛み砕いて言うと「3つのクセ」は「人のせいにしない」「言い訳の習慣をやめる」「忙しいと言う理由で後回しにしない」です。正論、正論。これまでも氏の著作でたびたび登場している内容であると思います。ベストセラーの「面倒くさがりやの…」「なまけものの…」の法則シリーズの、焦点を絞った焼き直しとも言えます。そこまではよくある話でいいとして、それにしても薄味です。内容に乏しい。1時間かからずに読み終えてしまいます。ところどころ図解でページを割いていることと、後半は「思考改善トレーニング帳」と称して「ここまでページを使ってやります?」と言う感じの“埋め草”とも思えるページが50ページ以上にわたって掲載されているので。書籍や講演、セミナーの類は一過性になりがちなので、まぁこういった継続プログラムををセットすることはそれなりに意味のある事であるとは思います。ただこのページの使い方は、ちょっと読み手をなめているかなと…。

最近の本田氏は、例えて言うなら売れてきた芸人がテレビでの声がかりが増えて、新しいネタを仕込まずに本業そっちのけで(例えば漫才師が“ひな壇番組”にばかり出るというアレです)売れたネタを切り売りして稼げるだけ稼ぐ姿にソックリ。最近の芸人で言うならオードリーのようなという感じです。彼ら一昨年の年末のM1グランプリ準優勝でブレイクして、その後はテレビ番組で安易に稼いで芸はしない。昨年のM1は出場すら辞退ですから、何をかいわんや。芸人がすっかりタレントに成り下がってしまった訳です。本田氏もコンサルタントが、売れっ子エッセイストにでもなった気分なのでしょうか。レバレッジシリーズではけっこう信奉していただけに、今の姿は本当に残念です。


●「できる人間」を目指すなら、迷うのはやめよう 22歳からの人生の法則/本田直之(監修)安達元一(ストーリー原案) (アスコム1,575円)」

これはひどいですね。中身は知りません。立ち読みですから。読む気にならなかったので。読んでないのに何がひどいか、制作の思想です。以前、氏は自身のコンサルティング・エッセンスを盛り込んだ自己啓発小説「走る人を目指しなさい」を書き下ろしました。予想通り大コケでした。今回も全く同じコンセプトですが、やはり“餅は餅屋”と言う訳で原案と監修を本田氏がおこない、実際のストーリー起こしを“プロ”の放送作家である安達元一氏に依頼して小説にしたと言う訳です。ここまで聞いて、「おっ?なんか似たようなのなかった?」とピンと来たあなたはかなりスルドイです。そうです、今話題の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら /岩崎夏海(ダイヤモンド社1680円)」と同じコンセプトじゃないですか。

岩崎氏は元放送作家。高校野球のマネージャーが間違えて買ったドラッカーの経営論の本を参考にチームを甲子園に導いていくというストーリーの小説です。放送作家の巧みなストーリー展開に沿って読みながら経営理論が学べるという目から鱗の企画だった訳で、昨年12月の発刊以来じわじわ売れて現在大ベストセラーです(この本また改めて取り上げます)。経営理論や自己啓発理論を今風のストーリー仕立てで作品にするアイデアは使い古されたものではあるのかもしれませんが、「走る人…」での大コケを受けて「もし高校野球の…」と同じようなプロを使っての“復讐戦”とは、あまりに稚拙な猿マネで開いた口ふさがらずです。理論的背景は片やドラッカー、片や本田直之ですから、ハナから勝負になる話ではないのですが…。それにしても「そこまでやるか?」と言う感じですよね。読んでないので中身は分かりませんから、著作そのものを批判している訳ではありません。企画スタンスが感心しないということです。


●「カラダマネジメント術!/本田 直之(マガジンハウス1,050円)」

近刊本の中ではこれが一番まともじゃないかと思います。薄味の“手抜き芸人系”と自己啓発小説やイラストレーターしりあがり寿氏との共著等“勘違い系”ばかりが続々出版される最近の氏の著作にあって、ビジネス・パーソンにおける健康管理の重要さを実践的に説いている著作としてなかなかの企画ではあると思います。有名になったからこそ可能たらしめた企画なのですが、中年サーファーである氏自身が昨年病に伏して健康への過信を反省したということろが、著作のきっかけになっている点はとても好感を持って読ませてもらえます。ただ難点をいえばかなり“ナルちゃん”なので、トライアスロンをチームでやっている話は良いのですが、けっこうひけらかしというか、カッコつけというか、くどさを感じさせる点がちょっと。若い人たちにはその辺が「自信」と映って、“憧れの中年ビジネスパーソン”なのかもしれません。おまけとして、おススメの都内ジョギング、サイクリングコースも紹介されていますが、これがまたいちいちトレンドスポット的なノリで、「君たちもこのコースを走って本田を気取ってくれ!」と言っているようです。


以上本田氏の近刊本3冊でした。さらに近々「ゆるい生き方 縛られず、ストレスフリーな毎日のヒント(大和書房1050円)」なる本が出るそうです。読まずに決めつけてはいけませんが、何となくタイトルからして“手抜き芸人系”かなと言う感じですね。氏は自身が基本的に「怠け者」であるを前提にすべての著作をしたためていますので、“手抜き芸人系”にしても“勘違い系”にしても、その意味で“アリ”だとすれば批判にはあたらな