日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

<音楽夜話>再びディラン…

2010-04-04 | 洋楽
いやー連日忙しくて参ってますが、少しだけヒマネタ書いておきます。

ディランの最終日の話はチョコッと、3月28日のコメント欄にアップしました。よかったらご覧ください。

今回のライブでやけに目立った01年の作品「ラブ&セフト」の話ですが、小倉エージ氏の原稿によればこの表題は「ミンストレル・ショウの学術書にちなんだもの」とか。やっぱり。これであの「ローリング・サンダー・レビュー」に確実につながる訳です。納得です。それと「セフト」は「盗む→盗作」をイメージさせるものですが、本作の歌詞には「ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、トゥエイン、シェークスピア、ダン、ウェルギス、ペトラルカ、そして聖書」からの引用がなされていると。深い深いルーツの旅なのですね。

思い起こせば、66年のひん死の重傷を負ったバイク事故から隠遁生活に入り、何かを悟った彼はルーツ探しの旅を始めました。それが「ベースメント・テープス」であり、「ローリング・サンダー・レビュー」であった訳です。そして、80年代に作品に宗教色を色濃く反映させた後に、再びルーツ探しに帰ってオールド・フォークなどのトラディショナルのカバーアルバム2枚を経て、90年代後半からの栄光のアメリカーナ路線に舞い戻って来たわけです。そうやって考えると、今回のライブは当然かなりアメリカーナな、というよりアメリカーナ一色のライブになるわけです。

ステージのディラン後方のアンプの上には、あの「シングス・ハブ・チェンジド」で受賞したアカデミー賞のオスカー像が置かれていました。まさしく“アメリカ人の誇り”なのでしょう。彼は96年からノーベル文学賞にノミネートをされているそうですが、アメリカ人の彼にとってはノーベル賞よりもアカデミー賞受賞の方がよほど価値のあるものなのかもしれません。彼がもしノーベル賞を本気で狙っているのなら、ノミネートされている身で歴史的文学作品をわざと“セフト”するような作品を作るとは思えないですから。一体何を考えているのか?「ディランの頭の中」は深すぎて分かりません。だからおもしろいのです。
(写真はネットで集めた今回の音源用に私が作ったジャケットです)

※余談
「ラブ&セフト」収録の「ポー・ボーイ」(恐らく彼の師ウディ・ガスリーの名作「プア・ボーイ」の“セフト”作ですよね)と「シュガー・ベイビー」は、ディラン・ファンならずとも必聴の名バラードです。私は今回両方とも生で聞けて幸せでした。