日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「事業仕分け」を官僚・公務員の「躾(しつけ)」の場にせよ

2010-04-21 | ニュース雑感
「事業仕分け」の第二弾が23日からいよいよスタートするそうで、連日マスメディアをにぎわせています。今回は独立行政法人がその対象とか。“仕分け人”として一躍注目の人となった枝野大臣、蓮舫議員らは、下調べで各独立行政法人を視察・ヒアリングで回っているようです。

この「事業仕分け」とは何であるかと考えるに、これは我々の業界で言われるところの「ムダの見える化」な訳です。これまで誰も気に留めることなくやってきた国家機関のムダ遣いを、しっかりと見える化して“要らないモノは捨てる”を徹底的におこない、財政再建の足がかりにしようということです。ちょうど民間で言うところの「5S」の入口にあたっていると思います。蛇足ですが「5S」とは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」のことで、そもそも製造現場で導入されてきた“改善サイクル運動”のひとつで、最近では管理部門や事務部門にもその考え方を取り入れる企業が増え、広く企業活動でムダや非効率の削減に役立っているのです。

国家機関における現時点での“改善サイクル”を「5S」の段階で見るに、まずはじめに“捨てる”を徹底しようと言う事でこの「事業仕分け」が始まったと捉える事ができそうです。この手順は悪くはなくて、“捨てる”の徹底で「整理」や「清掃」ができれば、その状態で扱いやすい環境を整える「整頓」やきれいな状態を保つ「清潔」に移れる訳です。「事業仕分け」は「5S」で言うことろの「整理」や「清掃」にあたっている訳で、まずこれがスタートラインであるのです。もちろんこの先、「仕分け」を「仕分け」で終わらせないことこそ大変重要で、言ってみればどんなに“捨てる”を徹底したとしてもその後再びムダが生まれてきたのでは“思いつきの大掃除”と変わらない訳ですから、「ムダ」と「仕分け」のイタチごっこが続くだけになってしまうのです。政権政党は定期的に「仕分け」をすることが行革パフォーマンスになるかもしれませんが、本来の目的からすればそれは何の意味も持たないのです。前回も含め「仕分け作業」のその後の「整頓」「清潔」進行状況についても、しっかりとフォローして国民に報告をして欲しいと思う訳です。

もう一点、「5S」の観点では実は重要なのは「躾(しつけ)」であるということを言っておきたいと思います。民間企業でもそうなのですが、結局一斉に“捨てる”(=「整理」「清掃」)にとっかかったところで、その行動の真意が構成員に理解されていなければ、それに続く「整頓」や「清潔」など実現のしようもなく、結局“捨てる”は一過性の“大掃除”に終わり何の意味も持たない訳です。この点に関し大きく懸念を感じさせる報道がありました。今回事業仕分けの対象となっている47の独立行政法人にある番組が緊急アンケート実施したそうです。回答は38通であったそうですが、「自身の独立法人に仕分け対象となるムダはあると思うか?」という質問に対して「あると思う」との回答はなんと「0件」。天下りトップに年間2000万円もの報酬を支払っているという独立行政法人も存在するというのにです。

民主党政権にぜひお願いしたいことは、この「事業仕分け」が一過性に終わることなく有効に機能し先々の「官僚文化の変革」につなげるために、官僚、公務員の「躾(しつけ)」をまずして欲しいということです。「ムダの定義」や「税金を使う立場の人間にとって、ムダは悪であるという意識」を身を持って知らしめるような、継続的かつ洗脳的な教育が一刻も早く必要であると思います。場合によっては理解を示さない者に対して懲戒等の“体罰”を制度化することも必要でしょう(「躾(しつけ」とはそういうものです)。日本企業が海外に生産拠点を設ける際に、地元労働力を有効に機能させるためには、「5S」の中でまず第一に「躾(しつけ)」の徹底をはかっているのです。例え海外で安価な労働力が得られても、それが国内並の十分な働きが得られないなら海外進出は全く意味をなさない訳ですから。国家機関も民間並みに「ムダの削減」をはかるためには、何を置いても「躾(しつけ)」の徹底をしなくてはいけないと思うのです。

今回の「事業仕分け」ではマスメディアにおいても、おもしろおかしくやりとりを中心とした議論の現場を報道するのではなく、ぜひ「躾(しつけ)」の観点から鋭い論評をぶつけてもらい、「事業仕分け」を“思いつきの大掃除”に終わらせず「官僚文化の変革」につなげる支援をして欲しいと思います。