日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

なんか変??? 「走る男になりなさい/本田直之」

2009-10-23 | ブックレビュー
このところ、本田直之氏関連の書籍が次々と出版されています。ひとつは、洋書の翻訳本「フォーカル・ポイント(ディスカヴァー・トゥエンティワン1500円)」、本人著の「意思決定力(ダイヤモンド社1429円)」。この2冊は近々ブック・レビューいたします。今日の話題は、まさに今日見つけた「走る男になりなさい(サンマーク出版1365円)」です。

★「走る男になりなさい/本田直之(サンマーク出版1365円)」

「先日「意思決定力」が出たばかりなのに、また出たの?」と驚いて手に取ると、その中身はなんか感じが違います。なんと小説なのでした。帯によれば、著者初の「自己啓発小説」とか。ストーリーは、出版社広告営業部に勤める27歳の岸田海(かい)が、ある日突然、新雑誌創刊準備室へ異動を命ぜられます。海を待ち受けていたのは、性格も考え方もバラバラ、“わけあり”な8人の仲間。売上を立てなければ、創刊準備室は解散、そして解雇という状況下で、主人公・海が、さまざまなスキルを身につけ、困難に打ち勝ち勝っていく「成長物語」。 うーん、どんなもんでしょう。

小説形式で読ませながら、自己啓発ネタを散りばめるという発想は悪くはないかもしれませんが、できそこないのトレンディ・ドラマ的スト-リがいかにも陳腐な印象です。なんとなくトレンディな場所や設定を選びながら、散文的な描写の短い章立て場面単位で展開するストーリー。一昔前に売れた片岡義男を思わせる若者向けの小説といった風情です。私あたりの感覚では、「どうしちゃったの?コンサルタントの本田さん」って感じです。昨年の「レバレッジ・マネジメント」あたりまではかなりの高水準で持論を展開していたのに、その後売れた“軽め路線”「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」あたりからちょっと雲行きが怪しくなり、同じ路線の啓発本「なまけもののあなたがうまくいく57の法則」、そして今月刊の「意思決定力」では、中身の軽薄化とともに対象読者層が一気に若くなった感じです。

本田氏は若者に人気なんでしょうか?確かに1年の半分をハワイで過ごすとか、サーフィンを趣味としつつソムリエの資格も持つとか…、なんともミーハー受けしそうな一面が若者に支持される気もします。今日立ち寄った本屋では、本棚に勝間和代とともに本田直之コーナーの“サシ”があって、この二人だけ別格扱い。「なるほど世間では、若者が憧れるトレンディなコンサルタントとして勝間氏同等に扱われる存在な訳だ」と妙に納得したのでした。いや~、それにしても「自己啓発小説」はないでしょう。「夢をかなえるゾウ」ほど練られた中身ではありませんし、いっそ普通に小説処女作だったら許せるかもしれませんが…。最近の本のバカ売れ傾向でなんか勘違いしてますか?

私のレビューでは“軽め路線”は点数も軽めでして、「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」「なまけもののあなたがうまくいく57の法則」は、10点満点でそれぞれ6点、6点でした(ちなみに「レバレッジ・マネジメント」は9点)。そして、今回は遂にダメでしょうの“赤点”4点です。個人的には、この路線の本田氏とは決別です。