日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ブックレビュー~「『読む・書く・話す』を一瞬でモノにする技術」

2009-10-07 | ブックレビュー
★「『読む・書く・話す』を一瞬でモノにする技術/斎藤孝 大和書房1400円」

売れているようです。最近の売れ筋は「脳モノ本」「書き方本」「思考整理本」「読書法本」などなど。その意味では、タイトルからお分かりのように1冊で今注目のジャンルをけっこう幅広く押さえられる“お得本”かもしれません。ただ構成的にバラバラなモノを寄せ集めた訳ではなく、ステップ1~5として、各章を私なりの言葉に置き換えると、「情報の選択法」「読書法」「記憶法」「道具活用法」「編集力養成法」といったセクション構成で話は進んでいきます。

出だしの「情報の選択法」はすべての作業の基本になる行動の指針であり、なかなかの視点です。タイトルにある「読む・書く・話す」の中で、一番具体的記載がありボリューム感もあるのは、次の「読書法」です。ただ内容的には、よくある「多読のススメ」や「本への書き込み活用」など。私はむしろステップ3の「記憶法」に自分でも効果が思い当たる部分が多くあり、“読む価値あり”と思わされました。「自分の言葉で再生する」とか「信頼できる脳内スタッフを持つ」とか「批判的思考を鍛える」とか、まさに私が試みて自己鍛錬に大いに効果を感じているものと符合しています(特に「批判的思考を鍛える」は、このブログ継続効果そのもの!)。

「道具活用法」と「編集力養成法」は私的には完璧におまけ。特に「道具活用法」は、人によってはやり方を参考にされる方もいるのかもしれませんが、基本的に「三色ペンを使え」とか「手帳は1週間単位のモノを使え」とか、まぁ人それぞれやりやすい方法でいい訳でこれがベストとは思いません。あくまで「著者の場合はこれでうまくいっている」というものとして参考程度に捉えるのが正解と思います。

全体を通して言えることとして、著者は私と同年代なのですが、どうも匂いの違いをそこここで感じます。読み終えて、それは何かと考えてみると、“実業界育ち”と“学会育ち”の違いではないかなと、かなりハッキリと感じることができました。良い悪いの問題では決してないのですが、本書は正論のお話をステップを踏んでしてくれてはいるのですが、日々実業の世界に生きるクライアントを相手している私からするとやや食い足りない、なんとなく“突っ込み不足”を感じさせられる記述が多いように思いました。やはり、ビジネスシーンを想定した書き方や具体的落とし込みがあれば、もっと実践的でよかったかなと…。少々残念。10点満点で7点とさせていただきます。