日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

NEWS雑感~素人大臣の感情論に流される郵政民営化の不安な行く末

2009-10-20 | ニュース雑感
日本郵政西川善文社長が本日夕刻、社長辞任の会見を開き辞意を表明しました。

郵政民営化の本題とは直接関係ありませんが、ひどい会見でした。やたらに偉ぶった頑固ジジイ丸出し、「写真撮ってたら話ができん」「やめようか」「カメラは出ていけ」…、部下には「君、何とかしろよ!」。EQ重視の今時に“エライ”政治家だってこんな人いやしない、経営者失格ですね。「老害」の一言で片づけていいものでもないでしょう。日本郵政のトップなのですから。いかにご自身が納得のいかない形での辞任であろうとも、昨日もお話をしたように、経営者たるもの「ご自身の感情の管理」ができないようではその時点で論外です。民営化路線の是非問題とは別の次元で、西川氏の実質“更迭”だけを取り出せば正解であったと思わせられてしまうほどお粗末な会見でした。

私の全銀協出向時代に、西川氏が旧住友銀行の専務として同協会の一般委員でおられたのでその当時の西川氏を存じ上げておりますが、一家言あるキレモノといった印象でこそありましたが、今は偉くなりすぎたのでしょうか、あの傍若無人な会見ぶりは実質更迭会見における恥の上塗り以外の何物でもありませんでした。本当に残念です。会見での態度の悪さを国民が支持するハズもなく、会見の印象だけで「西川=民営化=悪モノ」であるとの認識となることが容易に想像できるだけに、もう少し思慮深い対応をされるべきであったと思われます。

さて焦点は西川氏ではなく、郵政民営化の行く末をどうするのかです。今日の閣議決定を聞いていると、4社分割は1社統合へ方向転換し、銀行業務および保険業務もユニバーサル・サービス化へ逆戻りさせるかのようなお話とか。民営化に向けては小泉政権の時代に散々議論を尽くして、郵便を中心として一部国庫負担によるユニバーサル・サービス維持はするものの、戦後復興期にその役割を終え裏予算化してムダの温床と化していた財政投融資の解体と金融サービスの民業圧迫解消を旗頭とした隠れ赤字運営からの脱却を目指し、総選挙を経て国民の支持を得、最終決定したと記憶しております。それをそんなに安易なひっくり返しで本当にいいのでしょうか。私は疑問です。

まず第一に、“小泉憎し”“民営化憎し”の亀井静香氏が郵政改革担当大臣であり、郵政民営化反対で自民党を除名された個人的な恨みつらみも含めての、感情論で動いていることに大きな懸念を感じざるを得ません。実質国営化への再方向転換で「ユニバーサル・サービス堅持」の旗印の下、再び「親方日の丸運営」による赤字垂れ流し体質に陥る危険性、巨大国営金融機関による民業の圧迫の再燃等はかなり強く懸念されるのです。

なによりもその運営コストの規模から見て、将来の国家財政のカギを握る重要課題である訳で、民営化の時以上に様々なシミュレーションを重ねた上で、今後の対応策に関する慎重な議論が必要なのではないでしょうか。このままの状態での実質国営化への逆戻りは、第二のJALを作り出し将来に禍根を残すことになりかねません。財政的な面での長期的立て直し策に関しては現時点では全くの無策状態の民主党政権ですから、経済金融素人の“警察官僚大臣”の感情論に動かされて、安易な決定をすることだけは避けて欲しいものです。