日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

<音楽夜話>ビートルズ「モノ・ボックス」を聞く

2009-10-11 | 洋楽
この秋の洋楽界の話題と言えば、ビートルズのリマスターCD発売の話。すでに1カ月がたちましたがけっこうな売れ行きなようで、さすがはビートルズといった感じですね。

今回のリマスター盤は基本はステレオ・ミックスのリマスターで、同時にモノラル・ミックスも限定盤かつセット販売で出てはいるものの、発売当初の一般マス・メディアの取り上げ方をみても、モノはおまけ的扱いの感じが漂っていました。実はその扱いはおよそ素人的でして、間違っちゃいけないのはビートルズが活躍した60年代はまだまだモノラル主流の時代だということ。彼らのアルバムも実は大半はモノラルがオリジナル・ミックスであり、デビューから「ホワイト・アルバム」までプロデューサーのジョージ・マーチンはモノラルを基本ミックスに据えていたのです。なんと言っても彼は「モノラルで聞いてこそ、あなたはサージェント・ペパーを聞いたことになる」と言っているぐらいなのですから。

音楽ファンにはよく知られた話ですが、マーチンはステレオ・ミックスに関与しておらず、そのせいもありビートルズのステレオ・ミックスは実はかなり乱雑で、いい加減なものも多いのです。例えば、ボーカルが右チャンネルのみで、リズムは左チャンネルのみなんていう乱暴なステレオ・ミックスもけっこうあるんです。そんな訳ですから、本来はリマスター盤CDを出すのなら、この機会にマーチンの手によってリミックスを施すべきであり、それをしないでいい加減なステレオ・ミックスのまま今回のようなリマスターをしても、それはあまり意味がないように思うのです。

ということで今回の目玉は、必然的に限定生産かつセット販売のみモノ・ミックス盤を集めた「モノ・ボックス」ということになるのです。個人的には「アビー・ロード」と「レット・イット・ビー」を欠くこの半端なセットにまたまた“散財”していいものかと、買うか買うまいか悩みに悩んでいるうちに予約段階で売り切れてしまいホッと胸をなでおろしたのもつかの間、なんと9月下旬に突如追加生産分がアマゾンで予約受付となり、マニアの悲しい性は瞬時に「予約購入」ボタンを押していたのでした。「あー、またやってしまった」と自己嫌悪になりながらも、送付された商品を開けて→眺めて→聞いて、「やっぱり買ってよかった!」と大感動の結末でありました。

さすがジョージ・マーチン、オリジナルのモノ・ミックスです。まだ全部は聞きとおしていないのですが、ボーカルと各楽器のバランスの素晴らしさは当然のこと、「なるほど、このバランスが本来のマーチンがイメージしていたビートルズであったのか」と再発見させられる曲もけっこうあったりします。もちろん、曲によってはステレオ・ミックスの方がいいものもあります。楽器の分離は当然ステレオの方がいい訳ですから。でも音圧は圧倒的にモノの勝ちでしょう。ステレオ・ミックスを安易に一本化してモノ・ミックスにしたものではなく、もともとのモノ・ミックスな訳で、これはけっこうすごいですよ。今までのCDを持っている人、今回のステレオ・リマスターを買った人も、ビートルズ・ファン必聴と思います。日本製の紙ジャケも美しい!惜しむらくは日本盤帯が欲しかったですが、ジャケットはかなりの出来です。

難を言えばレコード会社のもうけ主義でしょうね。今回のオヤジ連中の財布を狙った商売はちょっと許せんですね。本来なら、1枚のCDにステレオ・ミックスとモノ・ミックスを併せて収録して、かつ全作紙ジャケ仕様で売ってもバチは当たらない訳で、なんでステレオとモノを分けて販売し紙ジャケはモノ・ミックスのみかつセット販売な訳ですか?私は先の理由で今回のステレオ・ミックスは関心が薄く買っていませんが、両方ご購入の“ビートル・オヤジ”もけっこうたくさんいると思います。締めて75600円也って、少々アコギな商売じゃないでしょうか?これでまた、近々「待望のステレオ・リミックス盤登場!」とか言われようものなら怒りますよね。それはさておいても、ビートルズのステレオ・リミックス盤はジョージ・マーチン健在のうちに彼の手によって、なんとしても実現してもらいたいものです。