日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

リーマン破綻と日本経済 ~ 今、黙ったままの政治家はいらない!

2008-09-15 | ニュース雑感
日本は国民の祝日ですが、アメリカで日本にとっても大事件が起こりましたので祝日ながら堅いネタを書き込ませていただきます。

米証券会社第4位のリーマン・ブラザースが経営破たんしました。バンカメリカの救済買収が期待されたものの、不良債権部分の処理を支援する米政府の公的資金注入が不調に終わったことで、バンカメリカはリーマンの買収を見送り本日業界3位のメリルリンチを傘下に収める買収策を発表。リーマンの引き取り手がなくなり破綻のやむなきに至ったのです。創業150年以上のアメリカを代表する大手証券会社の破たんによる影響は、我が国においてもはかり知れないモノがあります。

まず直接的な問題として、リーマン破たん処理に伴う多額の不動産ローン債権が投げ売りされ、それらを組み込んだ国内の金融機関保有ファンドの暴落、不動産市場の価格暴落による一層の投資ファンドの収縮と不動産不況の国内への影響などが、深刻な問題として確実に影を落とすことになるでしょう。さらに間接的には、急激なドル売りと円高の急進行に伴う輸出産業への打撃も懸念されます。そして、ドル安は行き場を失った運用マネーを、再び石油や穀物相場へと追いやる可能性も高く、国内の不況は加速度的に増し、物価の高騰と相まって強烈な「スタグフレーション」を引き起こす可能性さえ否定できないのです。

米国政府は、公的資金の注入を拒んだ理由として、リーマン社および同業他社のモラルハザード懸念を第一にあげています。確かに、モラルハザード問題もあるのでしょうが、古くから自己責任を旨とするアメリカ・ビジネス界の常識からすれば、考えられるのは一民間企業救済目的での公的資金注入に対する国民の大きな反感です。大統領選を間近に控えたブッシュ共和党政権の本音としては、今ここで国民の信任を大きく下げるような策は取りたくないとの判断が強く働いた結果なのではないでしょうか。

ただ、米国経済、ひいては世界経済への多大なる影響を考えたときに、本当に一国の覇権争いを優先する経済金融政策を取ることで、いいのでしょうか…。今回の問題も含め昨年来世界経済に大きな影を落としているそもそもの問題点であるサブプライム問題を引き起こしたことに対し、アメリカ政府はその責任をどう考えているのでしょうか。この一大事が起きた今こそ、これ以上世界経済へのダメージを与えないような責任ある政策をとることこそが求められてしかるべきなのではないでしょうか。

日本国内とて同じことです。この大事件発生に対して、いやこういったアメリカ政府の対応に対して、“茶番的人気回復ごっこ”を展開している自民党総裁選立候補者5名の誰一人として、日本経済を守るためにこうあるべきである、アメリカにこう要請すべきであるといったコメントひとつも出されていないのです。民主党の小沢党首にしても同じこと、共産党も、社民党もどこもみな同じです。

いつ奈落に落されてもおかしくないほど脆弱な我が国経済を、突然襲ったアメリカ発の危機的出来事に対して何のアクションも、コメントすらもできない人たちが、一国の首班を目指しているというのですからお笑い沙汰であると言わざるを得ないのではないでしょうか。官僚や政策参謀の力を借りなくては、重大局面でもとっさのコメントができないような経済オンチの首相候補たちにはお引き取りいただきたいものです。

明日以降の国際経済動向、日本のマーケット動向如何によっては、一刻も早く政治的空白は解消すべきとの問題になるかと思います。さらには解散総選挙も今、このガタガタの世界経済情勢下で行うべきであるのか、今一度議論が必要なのではないでしょうか。むしろ、この重大局面をどう乗り切って国内経済を守るのか、そのためにアメリカに対してもどう日本の主張を突き付けていくべきなのか、各党のその実効性ある施策の有無を見極めた上での総選挙こそが、日本を政権を担う政党を選ぶ選挙にふさわしいのではないかとも思えています。

いずれにしても、有事のときにこそ、どのような判断と行動をみせてくれるのか、日本国のリーダーを目指す方々には、こんな状況下にあってチマチマと票集めをするのではなく、自覚をもって今こそその「政治力」を見せてほしいと思いますし、それができない方々には自主退場をしていただきたく思うのです。