日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

Wii Fit購入1か月 ~ 任天堂の“大人だまし”戦略に脱帽

2008-09-10 | マーケティング
実は最近、Wii Fitなど買いまして、デスクワークの多い生活にあって少しでも運動不足の解消になればと、日夜取り組んでおります。

Wii Fitを買うはめになったキッカケのお話を。
それはちょうど一か月ほど前。そう北京オリンピックの直前でした。Wiiは一応、1年ほど前にトレンド研究の観点から試し買いしまして、ソフトは昨年一番売れていた「Wii Sports」をWii購入時にセットで買ったのみでした。

いくら新感覚とはいえ、さすがにゲーム如きに熱くなる歳でもないものですから、「新感覚」体感後はろくに使わずに購入2~3か月で装飾品化することに…。最近では来客時に、(同年代は小さい子供でもいない限りたいていWiiを持っていないらしく)「おっ!Wiiじゃん。おもいろいの?」とか言われると、よしよしとばかりにボーリングやらテニスやらをやって見せたり、やらせてみたり。なぜかほとんどデモ機としてのみ活躍のこの1年だったのでした。任天堂さんにはけっこうPRで貢献してると思います。

Wii Fitですが、以前からおもしろそうだな、とは思っていたんですね。この商品、任天堂のマーケティング戦略からすると、まさにDSの「脳トレ」に代表される対大人戦略商品ですね。家でフィットネスができるって、けっこう魅力的じゃないですか。まぁ、あくまで“大人だまし”の域を出ないもののこれはこれでOK。ごくごく近所にフィットネスクラブがあっても、なかなか通う気にならない、私のような不精者オヤジにはピッタリ。はじめてテレビCMを見た段階から、「いずれ買いそうだ」と思っておりましたです。

でなぜ、8月の北京五輪直前に買ったかなのですが、あの時期CMスポット、急激に増えましたよね。五輪前後にやたらにWii FitのCMを見た気がしたのは私だけ?ちょうどお盆時でもあって、ガソリン高で遠出を控えた人たち向けという狙いもあったんだと思います。私は、五輪効果とお盆在宅効果と、まさにその両方にズバリでした。

五輪効果は、「五輪が始まる」→「運動不足が気になる」→「この機会にWii Fit買ってオリンピック選手と一緒に運動するか!」の流れ。お盆在宅効果は、「ガソリン代も高いし、お盆は家でオリンピック観戦とするか」→「家にいるとなると時間をもてあましそうだ」→「この機会に気になっていたWii Fit買うか!」と言う流れです。いずれにせよ、今回は任天堂のマーケティング戦略ににまんまとやられてしまった私でした。

改めて思いますが、ゲーム機の使い道を大人にも解放した任天堂の発想って冴えてますよね。しかも今回のWii Fitは大人が敏感な「健康」をキーワードとした商品コンセプトですから、やられて当然です(と自分を正当化させてもらいます)。ちなみに、そのWii Fitですが、内容は一見子供だましではなく、けっこうよくできていますよ。私はもっぱらジョギングやら腹筋やらヨガやらをメインに、CMでおなじみのバランスゲームを織り交ぜて楽しく続けています。「一見よくできている」と言ったのは、よーく考えると各種目Wii Fitがなくてもできるものばかりなんですね。その意味でも、任天堂の“大人だまし”戦略に、すっかりはめられていると言っていいと思います。

次第に選べるトレーニング・メニューが増えはするものの、パターンが限られているので本物のスポーツクラブには比べるべくもなく、近いうちWii Fitにも飽きが来るのではいかなとは思います。その辺が、“大人だまし”としての「玩具」の限界なのかもしれません。スポーツクラブと違って、一度買ってさえもらえば、飽きようが飽きまいが継続するしないは任天堂の収益には全く関係ないですからね。Wii Fitに飽きて、我が家のWiiが再びデモ機化するであろう来年のお盆時には、また新しい“大人だまし”商品を任天堂のCMに乗せられて買わされているんじゃないかと思います。

任天堂が大人の取り込み方が上手なのは、もともと「花札」がメインの大人相手の「玩具屋」だったから、って絶対関係あると思います。どんなに売るものが変わっても、長年の企業文化、創業の精神が、しっかり今に生きているという訳ですね。ここが同業他社とは一味違う“成長の源”なのではないでしょうか。すばらしい事です。次はどんな“大人だまし”にだまされるのか、今から楽しみであります。