日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ40 ~ EQ②「自己管理力」の鍵“ポジティブ・シンキング”

2008-09-12 | 経営
前回はEQマネジメントの「自己マネジメント」を形成する2項目のうち、「自己認識力」について見てみました。今回は、もうひとつの項目「自己管理力」についてです。

「自己管理力」を一言で言うなら、不安や怒りといった感情を抑制し冷静さを保ったり、さらには常に目標に向かって進む前向きな感情を維持していく力のことです。その構成要素として、「セルフコントロール」「信頼性」「誠実性」「適応性」「達成意欲」「イニシアチブ」などからなるものです。

「セルフコントロール」は、不要な感情の上がり下がりや衝動を抑える能力です。これが弱いと、緊張局面で冷静さを失い不本意な判断や行動をとることになりかねません。「信頼性」は、常に自己の価値観に基づき軸がぶれない行動ができる力です。「誠実性」は、確実に約束を守る力です。「適応性」は、変化に順応し、新しいことに果敢に挑戦できる力です。「達成意欲」は、目標達成に強い意欲を持ち続け、常に楽観的姿勢を持って粘り強く突き進む力です。そして「イニシアチブ」は、積極的に行動できる力で、新しいモノにも臆さず率先行動できる能力です。

いろいろややこしい感じがしますが、要は目標に向かって楽観的姿勢で常に積極的に立ち向かっていける能力を持つ人を、「自己管理力」のある人といって良いのではないかと思います。中でも、経営者、ビジネスパーソンに特に大切なのは「達成意欲」です。そして、「常に積極的に立ち向かう」「常に目標に向って前進する」ためのカギとなるのが、「楽観的姿勢」というキーワードなのです。

「楽観的姿勢」とは、英語で「ポジティブ・シンキング」と言います。心理学者のマーチン・セリグマンは「ポジティブ」と「ネガティブ」の思考の違いを、3つの軸で説明しています。ひとつ目は「一時的か永遠かという時間軸」、ふたつ目は「特定的な理由によるものか、全般的な理由によるものかという普遍性の軸」、三つ目は「自分以外か自分かという自他の軸」。

「楽観的姿勢」=「ポジティブ・シンキング」でモノが考えられる人間は、何か問題が起きた時も「これは自分そのものが原因ではなく、一過性の原因によるものだから、またがんばろう!」と前向きに考えることができます。逆に「ポジティブ・シンキング」でモノが考えられない人間は、「私の能力不足でまた失敗した。何をやってもみなダメに違いない」と絶望的な状況に自らを追い込んでしまうのです。

すなわち、困難や失敗に対面したとき、「ポジティブ・シンキング」ができれば「これは試練だ、努力して乗り越えていけば、次なる成功が待っている」と考えられますが、「ポジティブ・シンキング」ができなれば「俺は何をやってもムダだ。もう絶望だ」と自暴自棄になってしまう訳です。

経営者、ビジネス・パーソンに失敗はつきものです。失敗の失意の中で、「原因は経営者としての自分の能力の問題だ。これ以上何度やっても同じことだ」と思うのではなく、常にポジティブに、「経営者として努力が足りなかった。甘く見ていた。次はそこに気をつけてまたがんばろう」と考えられるかどうかが、最終的な成功、失敗の分かれ道なのです。

「自己認識力」を持って他人への責任転嫁を回避しつつ、「自己管理力」として常に「ポジティブ・シンキング」を傍らに、次なるチャレンジに向けた努力を忘れない。これが、成功する経営者、ビジネスパーソンに共通する「EQマネジメント」のあり方のように思います。

最後に一言。「ポジティブ・シンキング」は健康にもいいそうです。ガン発症の原因のひとつにストレスがあげられています。「ネガティブ」はストレスの原因、「ポジティブ」はストレス知らずです。肉体的にも精神的にも健康体であり続けることは、「EQマネジメント」以前の問題として、優れた経営者、ビジネスパーソンの必須要件でもあります。