静聴雨読

歴史文化を読み解く

神奈川県の「受動喫煙防止条例」

2010-05-22 06:51:20 | 社会斜め読み
神奈川県ではこの4月から「受動喫煙防止条例」が施行された。飲食店などの公共施設で、「全面禁煙」か「分煙」が義務付けられた。ただし、猶予の例外があるが、それは後ほど。

居酒屋で、昼間は定食の食堂も営むある店に午後1時半過ぎに入った。11時半から午後1時半までは、この店も禁煙だそうだ。

「こんにちは。アジフライ定食をお願いします。」
「あいよ。」
「うまいね、これは。」
「ありがとうございます。」

「ところで、午後1時半まで禁煙にしているのはなぜですか?」
「昼は、短時間で回転を良くしないと、商売になりません。それで、禁煙をお願いしています。」
「確かに、煙草を吸ってゆったりされたら、商売に差し障りますね。」

「でも、1時半を過ぎるのを待って入ってくるお客さんもいるのですよ。今。5人いるお客さんのうち、2人が煙草を吸っているでしょ。全面禁煙にしたら、この2人のお客さんを失うかもしれないのですよ。」
「なるほど。」
「私も煙草は吸いませんので、できることなら、全面禁煙にしたいのですがね。」

神奈川県の「受動喫煙防止条例」では、適用の例外が設けられた。一定規模(100平方メートルだったろうか)以下の飲食店については、当分の間、適用をしないことになった。

その理由は、現下の経済情勢では、「分煙」を実施するには、設備投資の負担が大きく、とくに零細飲食店では立ち行かない、というものだ。

「分煙」店として承認を受けるためには、「喫煙空間」から「禁煙空間」へタバコの煙が流れない設備を備えるのが要件となる、というのが県の見解だ。この当たりまえに見える要請が飲食店には高い障壁と映る。

これまで、飲食店は受動喫煙防止対策を何一つ講じて来なかった。例えば、店の一角に空気清浄装置をこれまでに取り付けていれば、その一角を「喫煙空間」にするよう間仕切りする設備更新も可能かもしれない。しかし、空気清浄装置もこれから、間仕切りもこれから、というのでは、確かに設備投資の負担は小さくなかろう。

結局、中途半端な妥協を重ねた末、神奈川県の「受動喫煙防止条例」は施行された。
相変わらず、小さな居酒屋は紫煙濛々の状態から抜け出しきれていない。  (2010/5)



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