陸海軍けんか列伝

日本帝国陸海軍軍人のけんか人物伝。

651.山本権兵衛海軍大将(31)西洋の文明国と言われる、これらの国々だが、本性はこのようなものだった

2018年09月14日 | 山本権兵衛海軍大将
 思うような展開になったので、山本少将は率直に、次の様に打ち明けた。

 「それは、私が反対したのでございます。『吉野』は我が国の最も大切な軍艦で、たとえわずかな期間でも、日本から離す訳にはいかないのでございます」。

 これに対して、有栖川宮少将は、「『吉野』が外国に行っている間、東洋に事が起こりそうだというのかね」と、応じた。

 山本少将は「そのような形勢ではないにしても、最も大切な軍艦を、日本から離すことは、よろしくないと思うのです」と、重ねて主張した。

 それで、有栖川宮少将は、ようやく山本少将の真意を知り、「判った。海軍省が選んだフネでゆくことにしよう」と答えた。これ以後、有栖川宮少将は、誰よりも山本少将を信頼するようになった。

 明治三十年十一月十四日、突如、ドイツ艦隊三隻の海兵隊六百人が、清国山東省の膠州湾に上陸し、青島付近一帯を占領した。

 ドイツ人宣教師二名が何者かに殺害されたというだけの口実によってである。

 十二月十五日、これまた突如、ロシア艦隊六隻が遼東半島の旅順港に侵入し、同港を占領したのである。

 ドイツが膠州湾を占領したから、ロシアはこちらを頂くという、不逞のものだった。

 中国人たちは、味方のはずのロシアが、赤頭巾を脱ぎ、狼に一変したのに仰天した。

 さらに四か月後の、明治三十一年三月六日、ドイツは占領中の膠州湾(青島)を、清国から正式に租借することに成功した。

 清国宰相・李鴻章がロシアから莫大な賄賂を受け取った弱みをつかみ、脅迫した結果だった。

 四月二十六日、それを知ったロシアは、李鴻章に、遼東半島の租借と、ハルピンから大連までの東清鉄道支線の敷設権を、強要してまるまる手に入れた。

 三年前、遼東半島は、「極東永久の平和に障害になる」と、ロシア、ドイツ、フランスが、日本に威しをかけ、清国に返還させたばかりだった。

 それにもかかわらず、武力と、李鴻章への新たな賄賂、五〇万ルーブルで、強奪したのである。

 ドイツとロシアが、このような、強奪、脅迫、賄賂の手段で手に入れると、イギリスも黙っていず、明治三十一年七月、山東半島北岸の軍港、威海衛を清国から租借した。

 イギリス海軍の力を背景にしたもので、イギリスはドイツとロシアの間に、楔(くさび)を打ち込み、両国の、これ以上の中国侵略を牽制しようとした。

 その四か月後の、十一月、フランスも仏印(仏領インドシナ=現ベトナム)に近い南支那(清国)の広州湾を、むしり取るようにして租借した。

 このようにして、ドイツ、ロシア、イギリス、フランスは、地域の租借ばかりではなく、鉄道敷設権、鉱山開発権なども、清国からもぎ取った。西洋の文明国と言われる、これらの国々だが、本性はこのようなものだった。

 だが、日本も英国と利用し合い、それ相応の利益を得ようとした。

 明治三十一年四月のある日、山本権兵衛軍務局長は、伊藤博文首相に招かれて、首相官邸を訪れた。

 相官邸には、陸軍大臣・桂太郎(かつら・たろう)中将(山口・長州藩士・戊辰戦争・維新後ドイツ留学・陸軍大尉・歩兵少佐・在ドイツ公使館附武官・歩兵中佐・参謀本部管西局長心得・歩兵大佐・参謀本部管西局長・少将・陸軍次官・中将・第三師団長・台湾総督・陸軍大臣・大将・内閣総理大臣・軍事参議官・内閣総理大臣・内大臣兼侍従長・公爵・従一位・大勲位菊花章頸飾・フランス共和国レジオンドヌール勲章グラントフィシェ等)も同席していた。